弁護士の肖像:2019年3月号 Vol.68

弁護士の肖像

アトーニーズマガジン 弁護士の肖像

日本のリーガルサービスを牽引する、著名な弁護士の素顔や仕事観・人生観をご紹介。

Human History

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TMI総合法律事務所 パートナー弁護士 水戸重之

自分の感覚を大切に、ゆっくり歩を進めた弁護士への道

 約30年前からスポーツ、エンタテインメントを専門に扱ってきた水戸重之は、まさしくパイオニアだ。日本でプロ野球選手の代理人交渉が解禁された2000年には〝代理人第1号〞として先駆けを担い、メジャーリーグに挑戦する多くの選手の代理人も務めてきた。加えて、現在のバスケットプロリーグ「Bリーグ」の前身である「bjリーグ」の立ち上げに関与するなど、取り扱うスポーツ競技は幅広い。また、エンタテインメントの分野でも実績を重ね、水戸は新しい領域に挑戦しながら自らの専門性を高めてきた。信条は「フェアネス」。誰にとっても〝結果よし〞を真摯に求めてきたからこそ、水戸に寄せられる信頼は厚く、第一人者として立ち続けているのである。

 墨田区の業平で生まれた、いわゆる下町っ子。商いが集まるこの地域で実家はネジ工場を営んでおり、僕は商売や地域の人々と触れ合いながら育ちました。地元の誇りはといえば王貞治さん。通っていた業平小学校は彼の母校でもあり、新人の頃、ジャイアンツのユニフォーム姿で学校に来てくれたのを覚えています。王さんの実家である中華料理店「五十番」に食べに行ったのも、昭和の古き良き思い出(笑)。
 子供の頃に好きだったのは、クイズ本やマンガを読むこと。なかでも、当時流行っていた『頭の体操』はシリーズで揃え、石ノ森章太郎の『マンガ家入門』は何度も読み返したものです。何かをつくるとか、物事を広く知る雑学に惹かれていました。僕が欲しがる本はいくらでも買ってくれた親が、「塾に行くか」と言い出したのは小学校5年の時。逆らわず、よくわからないまま浅草の塾に通い始め……要するに、ここから受験生活が始まったのです。開成中学を目指して。抵抗感はなかったけれど、やはり負担だったのでしょう。開成に合格した時は「もう二度と勉強しないぞ」、高校受験もないから「6年間やりたいことだけをする」と子供心に誓いましたから。・・・(中略)

海外留学を経て法律事務所勤務。早々とエンタメ分野へ

 司法修習に入る前、水戸は一拍入れてアメリカ留学に出ている。ベースには、弁護士である叔父からの「修習はいつ受けてもいいんだぞ」という〝入れ知恵〞と、「俺たちがやらなかったことを」という〝期待〞があった。「自分の弁護士像を探す」意味において、そして、もとより英語を学びたいと考えていた水戸にとっては好機。留学先はニューヨーク州立大学ニューポールズ校とニューヨーク大学で、都合2年弱、水戸は〝学生生活〞に戻った。

 法律の勉強とは関係ありません。いわゆるアンダーグラデュエイト、一般の学部生ですよ。英語の勉強と外国人との交流がメインの留学生活でした。2年目からはマンハッタンに出て、日本の雑誌社でバイトもしていたんですけど、これが楽しかった。『NEWYORK View』という日本人向け雑誌のライターの仕事。映画監督の林海象さんや、芥川賞作家の中上健次さんをインタビューしたり、記事を書かせてもらったり。何をしていたんだか(笑)。でも、高校生の頃に憧れていた記者の仕事をかじれたことがうれしかった。現地での様々な出会いに刺激を受け、これも漠然とですが、弁護士資格プラスアルファの視点を持てば、いろんなことができる可能性があると感じましたね。
 それと、先の池田先生から聞いていたように、アメリカでは弁護士が多岐の領域にわたって活躍しているのを見聞きすることができました。特にエンタテインメント業界とか、スポーツ選手のエージェントであるとか。多少なりとも〝実際〞を知ったことは、やはり現在の下地になったと思います。留学はモラトリアム時代の延長ではあったけれど、自分にとって純粋に面白いことを確認できた意味で、財産になったのは確かです。・・・(中略)

■プロフィール

  • TMI総合法律事務所 パートナー弁護士 水戸重之

  • 1957年5月9日東京都墨田区生まれ
    1976年3月開成高等学校卒業
    1982年3月慶應義塾大学 法学部法律学科卒業
    1985年9月ニューヨーク州立大学 ニューポールズ校留学
    1986年9月ニューヨーク大学留学
    1989年3月司法修習修了
    4月弁護士登録(第一東京弁護士会・41期)
    西村眞田法律事務所入所
    1990年10月TMl総合法律事務所入所
    1996年4月中央大学法学部兼任講師(~2007年)
    1997年8月ミネソタ大学 ロースクール客員研究員
    1999年4月TMI総合法律事務所 パートナー就任
    2004年4月慶應義塾大学法科大学院 非常勤講師(~2013年)
    2005年2月慶応義塾大学 デジタルメディア・コンテンツ統合研究機構(DMC)教授(~2007年)
    2006年4月早稲田大学大学院 スポーツ科学研究科 非常勤講師
    2013年12月筑波大学ビジネス科学 研究科(企業法学専攻) 非常勤講師
    2018年4月武蔵野大学法学研究科 客員教授