弁護士の肖像:2019年10月号 Vol.70

弁護士の肖像

アトーニーズマガジン 弁護士の肖像

日本のリーガルサービスを牽引する、著名な弁護士の素顔や仕事観・人生観をご紹介。

※掲載記事の内容は取材当時のものです。

Human History

弁護士の肖像

東京共同法律事務所 山口 広

枠にはまるのを嫌い、上京。 時代の波に身を投じながら 熱い青春時代を過ごす

 長きにわたって「被害者の被害回復」に全力を捧げてきた山口広は、消費者問題における第一人者だ。その方向性を決定づけたのは、1986年に取り組んだ霊感商法の被害者救済で、以来、宗教トラブル、カルト被害問題、消費者被害救済は山口のライフワークとなった。大型詐欺事件被害救済も数多く担当し、山一抵当証券、ジー・オーグループ、近年ではMRIなど、いずれも被害弁護団団長として、被害者救済とともに制度の改善・同種被害の抑止のために力を尽くしている。87年に中心となって結成した「全国霊感商法対策弁護士連絡会」や、日弁連の消費者問題対策委員会を通じて、被害救済を担う若手弁護士の裾野を広げることにも貢献。根っこにあるのは、「社会的弱者やトラブルを抱える人を救済したい」という強く純粋な思いだ。そこに変節はなく、山口は今日も真摯に、被害者に寄り添っている。

 生まれ育ったのは福岡県の久留米。家は田んぼのすぐ隣にあって、カエルやヘビを身近に感じながら駆け回っていました。小さな庭ではニワトリを飼ったり、野菜を植えたりという、そんな田舎暮らし。通った小・中学校は家から歩いて5分の距離で、今の福岡教育大学附属です。近所ゆえ、僕はたまたま入ったんですけど、地元のデキのいい連中が集まっていた学校でね、のちに官僚や医師になって活躍している人がけっこういます。やんちゃだった僕は先生からよく叱られたものですが、勉強もクラブ活動もやりたくて、両立に悩みながら頑張っていました。ちなみに中学校時代、バスケットと走り高跳びは市内大会で優勝しています。
 ただ思春期ともなると、枠にはめられるのがイヤで……田舎ですから進路にしても先が見えてしまう。親父は県立名門の明善高校で教師をしていましたが、そこに入って九州大学に進んで、福岡市内の会社に就職するというのが定番コース。つまらなく思えた僕は、両親に頼み込んで鹿児島ラ・サール高校に進学したんです。最初は反対されたし、お金もないと言われましたが、…(以下略)

霊感商法の被害者救済に 取り組んだのをきっかけに、 決定づけられた弁護士人生

 司法修習生時代は、研修所の風通しをよくしようと仲間と議論を重ねたりもした。また、「資格もないのに検察官の立場で取り調べをするのはおかしい」と考え、取調修習を拒否するなど、山口はここでも気骨をのぞかせている。そして、現在も籍を置く東京共同法律事務所に入所したのは78年。労働事件を中心に扱い、社会的弱者の救済に力を注ぐメンバーがそろう同事務所に惹かれ、山口自身が選んだ先である。

 司法修習生になる時の個人面談でのこと。「法秩序を乱した君のような人物が法曹になるのを、国民が承諾すると思うかね」。当時の研修所所長だった矢口洪一さん(第11代最高裁判所長官)から、そう言われたことはよく覚えています。何も言い返しませんでしたが、権力者の立場からすると、「そんなふうに映るのか」と思ったものです。でも、自分なりに挫折や敗北を知り、警察のお世話にもなった体験は、社会的弱者の心情にきっと共鳴できるはず。あるいは、間違ったことをしてトラブルを抱えた人たちの復活の応援団になれるはずだと。思えば、この時から僕の弁護士活動のスタンスは決まっていて、今日まで変わっていません。
 東京共同法律事務所の諸先輩は、何の咎め立てもなく受け入れてくれた。一応、入所する時に「偏った政治活動をしちゃダメだよ。協調性を持ってできる?」とは確認されましたけどね。もちろんいい返事をしたのですが、折しも入所早々、成田空港管制塔占拠事件があったものだから、僕は知っている連中を励ましにしょっちゅう成田に通っていました。「ちゃんと事務所にいろよ」と叱られた新人弁護士だったわけ(笑)。「早く実務を学びたい」という思いが強く、もう無我夢中で仕事をしました。労働事件だけでなく離婚、相続、交通事故、相隣関係など様々に手がけ、先輩の指導の下で猛烈に働いた。体はしんどかったけれど、走り出しの10年間で貴重な経験をたくさん積むことができました。面白くてこんなにいい仕事はないと、…(以下略)

不屈の精神の下、 消費者問題の第一人者として 数々の事案を手がける

 並行して日弁連でも動きが出ている。当時、消費者問題対策委員会の委員長だった中坊公平氏の指揮の下、同委員会内に霊感商法問題のプロジェクトチームが組織されたのは、やはり80年代後半のこと。山口もそのメンバーとして、「霊感商法被害実態とその将来について」と題した意見書をまとめている。これは日弁連で正式に採択された意見書であり、大きく報道されると同時に、全国の弁護士にとって有効な基本資料となった。しかし、その過程において、山口をはじめとする中心的な弁護士に向けられた攻撃はすさまじかったという。

 自宅への脅迫的な電話など、日に100本、200本ですよ。僕だけでなく、女房や娘が大変だった。音を上げた僕が「電話番号を変えよう」と言っても、「ここで変えたら負けたことになる」と頑張ってくれましたが……。大量の誹謗のビラを全国に撒かれたこともあるし、統一教会の信者による相談会の妨害も度々でした。仲間の弁護士にも迷惑をかけてしまったけれど、当初から「一人でやっちゃダメだよ」と忠告してくれていたのは中坊さん。指導、激励を続けながら一緒に取り組んでくださった中坊さんは、命の恩人だと思っています。何かが一つ違えば、危険な目に遭う可能性は十分にありますからね。
 ただ、攻撃を受けると、僕は逆にやめられなくなる。「何をこのやろう!」という気持ちになるし、「そこまでやるんだったら、こっちもとことん」となってしまう。それと、僕自身は宗教がむしろ好きなのです。かかわるようになってから様々な宗教書を読み、優れた宗教家や研究者と語り合ううちに、…(以下略)

■プロフィール

  • 東京共同法律事務所
  • 弁護士
  • 山口 広
  • 1949年6月26日福岡県久留米市生まれ
    1972年7月東京大学法学部卒業
    1975年9月司法試験合格
    1978年3月司法修習修了
    4月弁護士登録
    ( 第二東京弁護士会・30期)
    東京共同法律事務所入所
    1987年5月全国霊感商法対策弁護士連絡会事務局長
    2005年4月日本弁護士連合会消費者問題対策委員会委員長(~06年度)
    2009年11月内閣府消費者委員会委員(~13年8月)
    2013年5月MRI被害弁護団弁護団長
    2018年3月スルガ銀行・スマートデイズ被害弁護団弁護団長
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