Vol.41
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左/永野靖弁護士(53期)、右/山下敏雅弁護士(56期)

左/永野靖弁護士(53期)、右/山下敏雅弁護士(56期)

STYLE OF WORK

#73

永野・山下法律事務所

すべての人のリーガル・アクセスを平等に。LGBTの相談窓口として頼れる事務所

LGBT(セクシュアル・マイノリティ)の支援、権利擁護に注力する弁護士事務所

永野・山下法律事務所は、2012年7月、銀行出身(中小企業向け融資)の永野靖弁護士と、公設事務所で経験を積んだ山下敏雅弁護士により設立された。永野弁護士は「町の弁護士」として日常的な法律問題の解決に取り組むとともに、労働事件、消費者事件、医療訴訟など、様々な事件に関与。山下弁護士は、社会福祉法人カリヨン子どもセンターの担当弁護士を務めるなど、少年事件や虐待事件といった子どもの事件をライフワークとする。また、一般民事、家事事件、刑事事件、過労死・過労自殺・労災事件、脱北者支援などにも取り組んできた。

同事務所の最大の特徴は、LGBT(セクシュアル・マイノリティ)の支援、権利擁護に注力していること。両弁護士とも、積極的にこの問題に対応しているのだ。永野弁護士は言う。

「そもそも弁護士を志した原点は、ゲイの権利擁護に取り組みたいと考えたことにあります。1990年、同性愛者の団体が東京都の公共施設利用を拒否されるという『府中青年の家事件』が起きました。これは国家損害賠償請求訴訟に発展。同性愛者の問題が“社会的少数者の人権問題である”という認識が社会一般に広まる契機となったわけです。私は、この事件に背中を押されるように、勤めていた銀行を退職し、弁護士になりました。ですから自分の事務所では、セクシュアル・マイノリティに開かれた法律事務所をと考え、運営しています。例えば『永年連れ添ったパートナーが突然亡くなったが、遺言がなかったので何の相続もできなかった』というのは同性パートナーの法的保障がないからですし、交際が破綻した際、『ゲイであることを周囲にバラすと脅された』など、現象としては当事者間のトラブルであっても、背景には偏見・差別の問題がある。これを解消していかねばならないと、私たちは考えています」

永野・山下法律事務所
仕事はもちろん私生活の出来事も、ランチでよく話すという3人

事務所開設のお披露目会の際には、両弁護士の予想を超える多くの人々、LGBTあるいはHIV関係の支援団体の方々がお祝いに駆けつけてくれた。

「自分たちが考える以上に周囲は期待してくれている。ありがたいことだし、頑張らなくてはと思った」と、永野弁護士。

山下弁護士も、設立から2年を振り返って次のように語る。

「例えばLGBTについては、法律の規定自体が問題になるばかりではなく、その現象が起こった背景、つまりLGBTであることを担当弁護士に告げられないがゆえに、“自分の権利を守るため”の相談すらできないというのが現状です。こうした人々に対し、法律事務所の敷居を下げ、来所しやすくしようと取り組む弁護士が、当事務所設立の頃から、徐々に増えてきたように思います」

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    「私は熟考タイプ。山下先生はてきぱき素早く仕切るタイプ。仕事の仕方が違うからこそ学び合う面が多い」(永野弁護士)
  • 永野・山下法律事務所
    事務スタッフの吉田明日美さんは、山下弁護士の前事務所の同僚。事務所設立を機に、面接を経てこちらに。「両先生のお人柄が素晴らしい。一緒に働きたいと思い転職しました」(吉田さん)

また両弁護士は7年前から「LGBT支援法律家ネットワーク」を組織。その現況を、山下弁護士に聞いた。

「全国の弁護士・行政書士・司法書士・税理士など約60名が参加するネットワークで、法律勉強会や集会を積極的に行っています。LGBTの問題は多岐にわたるので論点も様々あり、勉強会は大変活性化しています。『どのような背景の人もリーガル・アクセスが容易にできること』を目的に、LGBTの問題に取り組む法律家を増やそうと“種まき”をしています」

昨今は基本的人権を脅かす「反LGBT法―同性婚禁止法案」の採択により、ナイジェリアなどからの難民が日本にも来ており、そうした問題への対応も検討課題。国内外の情勢を視野に入れての勉強会となっている。とはいえ、今もLGBTに開かれた法律相談窓口は少ない。ゆえに、両弁護士間での利益相反も生じ得る。永野弁護士と山下弁護士は言う。

「私たちがそれぞれ所属する団体で受けた相談と事務所で受けた相談が、相対する当事者だったというケースもあり、気を遣います。ただ、私たちが断らざるを得なくても、先のネットワークのおかげで別の弁護士に委ねることができています。日本は法整備について遅れているのが現状ですが、法律がないなかでどうやってその人の権利を守っていくのか――まさにそこが私たち法律家の活動領域。法律家が支え、支え合うことの大事さを説きながら、LGBTの人々も当たり前に法律相談ができる社会を築くこと。その担い手でありたいと願います」

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    2013年9月に札幌で開催されたゲイ・パレード「レインボーマーチ札幌」。永野・山下両弁護士も「LGBT支援法律家ネットワーク」メンバーとして参加
  • 永野・山下法律事務所
    書棚には、LGBT関連書籍は元より、永野弁護士の医療訴訟関連、山下弁護士の子どもの人権関連書籍なども並ぶ