Vol.73-74
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前列左より、久保陽一弁護士(53期)、冨宅 恵弁護士(53期)、吉村洋文弁護士(53期)。後列左より、藤原 誠弁護士(61期)、小寺弘通弁護士(69期)、芝原好恵弁護士(68期)、西村 啓弁護士(62期)

前列左より、久保陽一弁護士(53期)、冨宅 恵弁護士(53期)、吉村洋文弁護士(53期)。後列左より、藤原 誠弁護士(61期)、小寺弘通弁護士(69期)、芝原好恵弁護士(68期)、西村 啓弁護士(62期)

STYLE OF WORK

#137

スター綜合法律事務所

「当たり前のことをまじめにきちんとやる」。この信念を守りとおす個性豊かな弁護士が集結

経営者のための“かかりつけ医”

大阪の西天満に本拠を構えるスター綜合法律事務所。2005年、同期5名で設立し、設立10年目となる節目に、冨宅恵弁護士、吉村洋文弁護士、久保陽一弁護士の3名による共同経営として体制を固め、現在の事務所名に改称した。現在はパートナー4名、アソシエイト3名、事務スタッフ4名の陣容で、次なる成長ステージに向かって突き進んでいる。冨宅弁護士に、業務案件の割合を聞いた。

「一般企業法務や事業承継・再生などの法人案件と、交通事故や一般民事・家事事件などの個人案件の割合が6対4ほど。ただし、法人案件である顧問先企業の、経営陣や従業員まで含めた“周辺の個人案件”も多数取り扱うため、そこを含めると法人関連の業務がほとんどを占めます。経営者と私たちとの距離が近いのか、大阪特有の文化か、いわば“ファミリービジネス”全体を扱うケースが相当数ある。経営者の“かかりつけ医”のような存在だと思います」

最近増加傾向にある案件について、久保弁護士が語る。

「個人の案件は交通事故や債務整理などの取り扱いが多かったのですが、近時はそれに加えて相続関係が増加しています。また、Webマーケティングの成果もあり、個人からの“飛び込み”相談も増えています。その結果、B型肝炎給付金訴訟の相談といった案件も扱うようになりました。一方、法人案件は、使用者側からの労務相談が増えてきたという印象です」

やはり今は新型コロナ対策の影響が大きく、企業からの事業継続困難・事業再生に関する相談、様々な労働問題・労働審判などが増加傾向であるようだ。

「インバウンドの激減による近畿圏の中型ホテル・旅館などビルホルダー、観光客をマッチングさせるサービスを行う企業などと、利用者間の法的トラブルが増え、その対応に追われています。“旅行バブル”といった様相だった昨年までは、中国企業のインバウンド案件にも多く関与していたため、国境をまたいだトラブル対応も新たな業務となっています」(冨宅弁護士)

世情・世相の変化にもしっかり対応し、多様な問題解決に柔軟に対応していく底力があること。それが同事務所の強みだ。

スター綜合法律事務所
パートナーの執務スペースは個室型。デスクや書棚などの内装は各人の好みで決めている。「執務室をきちんと仕切り、かつ自分の趣味で室内を飾るというのは、やや昔気質かもしれませんね(笑)」(冨宅弁護士)

地道な積み重ねが成長を促す

同事務所は経費共同型で、基本的にパートナーは自主独立を貫く。行政事件や大型民事再生案件など必要に応じて協働する案件も過去にはあったが、昨今そのケースは稀だという。各パートナーの得意分野は、冨宅弁護士なら知的財産権・ベンチャー企業支援など。吉村弁護士はМ&A、組織再編、著作権・商標など。久保弁護士は事業再生(会社更生、民事再生、私的整理)、破産・特別清算などだ。冨宅弁護士に、これまでに携わった印象深い案件について聞いた。

「やはり知的財産案件ですね。当事務所の開設翌年に弁理士登録を行い、知財事件は長く扱ってきましたが、近年は“潮目が変わってきた”と感じています。プロパテントの時代が熟成してきたといいますか。裁判所でも従前の基準とは違うかたちで、知的財産ホルダーを強く保護していこうというスタンスをとっていますし、賠償額も高額化してきていますから」

「なかなか勝てないケースが出てきた」と、冨宅弁護士は続ける。例えば、昨年7月に判決が言い渡された「著作権に基づく差止等請求事件」。ニュースなどでも報道された“大和郡山の金魚電話ボックス事件”において、冨宅弁護士は原告側代理人の一人を担当。

「原告である美術家の主張は、慰謝料などの金銭の多寡ではなく、創作的に表現した思想・感情も著作物として認められること、著作権法上の保護の対象であるという判決を得て世間に知らしめること、同様の美術家・芸術家の権利を守ることでした。しかし、奈良地裁が下した判決は、請求棄却。著作者の権利の範囲はどこまであるのか、著作者にとって本当の勝利は何であるかということなどを、改めて自分自身に問い続けた事件で、とても印象に残っています。

スター綜合法律事務所
広島で修習同期だった、吉村弁護士と久保弁護士。「大阪府知事の職に就く彼が来所できるのは1カ月に数日程度。不在の間、彼のチームメンバーがクライアントをしっかりサポートしています」(久保弁護士)

事業再生などを得意とする久保弁護士は、一時は年商200億~300億円を稼いだ老舗織物企業の特別清算手続が印象深かったと語る。

「歴史ある老舗企業が、業績不振でリストラを強いられ、事業の一部を譲渡したうえ、最終的には特別清算というかたちで人知れず役目を終えた案件に関与。からになった工場では、多くの従業員の活気に溢れた往時が偲ばれる一方、今となっては不良資産と化した物件の処理に頭を悩ませた。一企業の倒産という以上に時代の流れに取り残された地方の抱える深刻な状況を目の当たりにした、思い出深い案件でした」

なお吉村弁護士は、大阪府知事当選後、弁護士業の遂行が難しくなったため、アソシエイトだった藤原誠弁護士をパートナーに昇格させ、後を引き継いでもらっている。昨今の“吉村知事”の活躍ぶりは言うまでもないが、3名の設立パートナーも変わらず、自主独立の道を迷わず突き進んでいる。

「事務所を設立したのが15年前。顧問先が当初からたくさんあったわけでもないし、耳目を集めるような事件を多数手がけていたわけでもありません。当たり前ですが、『これがやりたい』といったからとて、その仕事の依頼がくるわけもない。私たちは弁護士会に頻繁に顔を出し、全国的に深刻化していた多重債務問題の相談会などのプロボノ活動などを行い、同時に少しずつ企業・経営者とのおつきあいを増やしていきました。やりたい仕事を主張するのではなく、いただいた仕事で成果を出して信頼を得ることの積み重ねで今があると思っています」(冨宅弁護士)

順調に、華やかに、仕事を軌道に乗せているかに見えても、地道に目の前の事件に取り組み、地道に営業活動を継続したからこそここまで来られたということだろう。

個性を生かしつつ、組織も生かす

同事務所のもう一つの強みは、昔ながらの法律事務所の“美点”を守り続けていることかもしれない。アソシエイトは基本的に“徒弟的”な関係性のもと、特定のパートナーに指導を受けて経験を積んでいく。4人目のパートナーである藤原弁護士もその教えを受けた一人だ。藤原弁護士に、他の3名のパートナーの仕事の進め方や印象などを聞いてみた。

「冨宅弁護士は、大胆かつ“馬力”を生かして仕事を進めるタイプで、吉村弁護士は物事に動じず仕事を進めるタイプ。私が弁護士として活動を始めた頃、経験不足ゆえの悩みを吉村弁護士に相談すると、『大丈夫や!』と。その一言で安心して、『次は何をすべきか』と前向きになれたことが何度もあります。また、久保弁護士は丁寧かつ緻密に仕事を進めるタイプで、教育についても熱心です。仕事の進め方も得意分野も三者三様。徒弟制度というと現代では古臭く窮屈に聞こえるかもしれませんが、私は“チーム制”と言い換えてよいと思っています。人材採用も基本的に、各パートナーとそのチームに任されています。自分が望む、仕事のスタイルや取り組みたい分野がぴたりと合うパートナーに出会えることはとても大事です。最適なロールモデルに出会えた私は、本当に幸せだといえますね」

それぞれの個性を生かすチームがあり、そのチームがまとまって強固な組織を形成する。各チームをつなぐのは、「当たり前のことをまじめにきちんとやる」という設立以来変わらぬ信念だ。最後にこの信念を掲げた背景を、冨宅・久保両弁護士にうかがった。

「弁護士業務の基本は、依頼者の話を聞いて、何が法的な問題点かを探り当て、証拠を探し、法律を用いて効果的な解決へと導くこと。司法改革のもとロースクール制度が導入され、修習生や若手弁護士は、より専門的な知識や多様な情報を追い求めるようになりました。一方で、弁護士増員で“競争”が煽られた結果、事件処理の画一化や効率化を好む弁護士が増えたとも感じます。これは依頼者にとってまったく歓迎すべき状況ではありません。依頼者にとって本当に必要な弁護士とは、“聞く、考える、書く、伝える、解決する”という基本、そして“専門家として発言に責任を持つ”という当たり前を意識していける人。私たちはそれこそが“弁護士の強み”と考え、この信念を貫きとおします」

Editor's Focus!

冨宅弁護士の執務室壁面には額装されたワインラベルが飾られていた。「20年前、弁護士になった頃から集め始めたもの。たくさんの優れた先輩方に、食事に連れて行ってもらい、議論したりプライベートな話をしたり。そんな思い出が詰まっています」(冨宅弁護士)

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