Vol.76-77
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前列左より、島村海利弁護士(68期)、青塚貴広弁護士(71期)、宮川恵実弁護士(69期)、西川研一弁護士(60期)、武本秀範弁護士(34期)、宮澤謙太弁護士(73期)、佐藤直美弁護士(70期)。後列左より、及川知宙弁護士(70期)、有岡佳次朗弁護士(68期)、西原和俊弁護士(69期)、澁谷 望弁護士(69期)、島井伸仁弁護士(72期)、古藤由佳弁護士(70期)、高橋英一弁護士(69期)、山本皓太弁護士(71期)、西島弘起弁護士(72期)、井上智貴弁護士(72期)

前列左より、島村海利弁護士(68期)、青塚貴広弁護士(71期)、宮川恵実弁護士(69期)、西川研一弁護士(60期)、武本秀範弁護士(34期)、宮澤謙太弁護士(73期)、佐藤直美弁護士(70期)。後列左より、及川知宙弁護士(70期)、有岡佳次朗弁護士(68期)、西原和俊弁護士(69期)、澁谷 望弁護士(69期)、島井伸仁弁護士(72期)、古藤由佳弁護士(70期)、高橋英一弁護士(69期)、山本皓太弁護士(71期)、西島弘起弁護士(72期)、井上智貴弁護士(72期)

STYLE OF WORK

#147

弁護士法人・響

志を次世代へつなぐために——。進化する「人権型ロー・ファーム」

様々な社会問題に真摯に取り組む

弁護士21名を含む全190名(2021年4月1日現在)が所属する弁護士法人・響。行政書士法人、税理士法人、社会保険労務士法人、調査会社法人と連携する、響グループの中核組織だ。代表を務める西川研一弁護士が前身の個人事務所を立ち上げたのが2013年。西川弁護士と事務職員の2名でスタートした個人事務所は、翌年の法人化以来、10年弱で着実に“仲間”を増やしてきたことになる。西川弁護士に、同法人が関与する案件について聞いた。

「2021年に動きがあったものでいえば、『同性婚訴訟』。同性婚の婚姻届を受理しないのは憲法24条、13条、14条に違反するとして、全国5カ所で国に対して損害賠償請求を行ったもので、その福岡訴訟に私たちのメンバーが関与しています。3月、札幌地方裁判所において13条、24条の請求は棄却されたものの、法の下の平等を定めた14条に違反するという全国初の判決が下されました。これに関与した弁護士は、ほか4カ所の弁護士と連携し、セミナーや講演も含めて活動の場を広げています」

また、“パワハラが原因”として2007年に焼身自殺をした名古屋市交通局のバス運転手の方の損害賠償請求にも、西川弁護士と数名のメンバーが関与した。

「13年かかりましたが、ようやく昨年末に勝訴判決が下されました。被害者ご遺族の思いはもちろん、第二、第三の被害者を出さないためには訴訟で勝つしかない、勝つことに意味があるという過労死事件でした。この訴訟では、過労死問題のレジェンドともいうべき水野幹男弁護士と協働して学ばせていただき、支援者の方々と関係性を築き、運動として展開していったものでもありました。そうして最後に勝つという成功体験ができたのは、当法人のメンバーにとって非常に貴重な経験になりました」

西川弁護士自身は若手弁護士時代から現在も、普天間基地爆音差止訴訟・嘉手納基地爆音差止訴訟弁護団の一員として活動を続ける。

「沖縄に行くと、いかに住民に負担が強いられているかを実感します。大きな流れに抗えないことへの悔しさが原動力となり、長年取り組み続けている問題です。基地問題も、すでに終了して判決が出た案件でも、解決に時間がかかるものが当法人の場合は少なくありません。しかし、そのように人生をかけて取り組めるテーマ・問題を見つけ、取り組むことが弁護士の本分ではないでしょうか」

弁護士法人・響
写真は、西新宿オフィス執務フロア。新宿御苑、大阪、福岡に支店がある。弁護士21名と従業員169名(2021年4月1日現在)の陣容

働きやすさを試行錯誤する

基幹業務は、交通事故、債務整理、そして顧問先の法律相談などである。交通事故と債務整理は、Webマーケティングでの集客が主となる。西川弁護士は、この背景を、次のように説明する。

「まずWebマーケティングで経済的基盤を堅固にして、そこで得たリソースを様々な社会的活動や憲法的価値を実現する活動に投下し、全員一丸で取り組んでいこうというのが当法人の考え方。社会的活動を続けていくには先立つものがどうしても必要ですから。僭越ですが、これまで多くの憲法訴訟などを担ってこられた諸先輩方の志を若い世代で引き継いでいくための方法を私たちなりに考えた結果、Webマーケティングでの地盤づくりに行きつきました」

そんな西川弁護士には、若手の育成においても熱い思いがある。

「せっかくこの業界に希望を抱いて飛び込んできた若手弁護士のために、弁護士としての本分を全うできる環境、いろいろな意味で安心して活躍できる場を提供したい、そんな思いで今の運営形態を選択しています。安定して仕事が回る状態、弁護士が弁護士業に注力できる場を提供したいからです。また、もはや“私の背中を見て学べ”は通用しない時代。ですから一般企業と同じように、教育体制を整え、目標設定や評価方法を明確にし、若手世代も納得して働ける環境を構築しているつもりです」

同法人では、新卒の弁護士の場合、3カ月間の研修期間を設ける。弁護士としての心構え、社会人としての身だしなみ・マナー研修、相談から受任に至るための営業研修・ロールプレイング、案件の進め方に関する業務研修、終了した案件などの記録をもとにした起案や業務に関するロールプレイングも独自のプログラムに則って行う。なお、メンター制も採用しており、研修期間以降も先輩弁護士がサポートするそうだ。

「私たちは“己を正しく自覚し、早く成長していけること”を重視しています。そのために1週間ごとに目標を設定し、到達度と原因分析、翌週からの課題・行動改善を書き出すという振り返りを毎週全員で行っています。そうすることで、短期間で、弁護士としての成長実感を得てもらえるのではないかと考えます」

つまり、何をどこまでやればどう評価されるかが明確なのだ。

「ここまで具体的な評価基準を設けている法律事務所はあまりないと思います。しかし、何をどこまでやればどう給料やポジションが上がるのかが明確であれば、弁護士ももっと働きやすくなるはずです。そこさえしっかりやれていれば、あとは自分のやりたい活動に時間を使ってもらってよいのです」

新卒弁護士が“すべきこと”は、Webマーケティングによって用意されることになる。

「仕事がふんだんにあるため、何をして売り上げを?どこに営業に?といったことで悩む必要もありません。ここ数年、多くの司法修習生と接してきて、弁護士のカルチャー、働き方などに関する考え方が全体的に大きく変わってきているように感じています。それがよいか悪いかの議論ではなく、この業界に入ってくる若い人たちを受け入れる側の私たちも変化し、対応していくことも大事ではないかと思っています」

若手人材をきちんと受け入れ、育成していくために、試行錯誤しながら、新たな手法もいとわず取り入れる。「それが結果的に自分を育ててくれた法曹界への恩返しになるのでは」と西川弁護士は言う。そうして規模の拡大=増員を行うことも、同法人の目標である。

「数だけの問題ではありませんが、それでもたくさんの力・人材が集まれば、それだけ大きな力が出せるし、様々なことを成し遂げられます。私たちは『人権型ロー・ファーム』というコンセプトを掲げ、『世界を変え、歴史を作る』ことを経営目的としています。その価値観を共有していること、その気概を持っている人材が集まっていることが特徴です」

弁護士法人・響
同事務所では、弁護士と共に業務にあたる事務局のメンバーについても毎年一定数を採用し、人材を育成する(2021年4月の新卒入所者は6名/事務局採用)

国内のみならず海外にも支店展開を

同法人が理念としているのは、「すべての人に最高水準のリーガルサービスを提供するとともに、憲法的価値を実現する社会的活動、これを事業として推進していくこと」である。

「人権活動に関心を持つ弁護士の集まりだからこそ、日頃提供するリーガルサービスもヒューマニズムにあふれているものであるべき。最高水準のリーガルサービスとはそういう意味で、提供するサービスの質の高さにおいても自負があります」と、西川弁護士。

さらに、まだまだ大きな目標がある。

「“すべての人に”とは、全国の人にという意味であり、そのために私たちが近くに行くことはとても大事なので、国内の支店展開を加速させていきたい。もう一つ、実現したい夢は、海外展開です。私たちの考える支店展開は、国内外問わず、そこにいる方々を一般民事レベルで救済すること。海外であればその地域の憲法的な問題についてもしっかり取り組み、価値を実現していきたいと考えています。私たちも法人会員となっているヒューマンライツ・ナウや、新外交イニシアティブ(ND)の弁護士などと連携しながら、そうした弁護士の足場となる拠点をつくっていくことも視野に入れています。今はまだ力不足ではありますが、全員一丸となって、将来的にはそうした機能も有する法人に育てていきたいと思います」

※取材に際しては撮影時のみマスクを外していただきました。

Editor's Focus!

西川弁護士が若手の頃に弁護団長を務めたのが「SAVE THE NOON」訴訟。関連してダンス営業規制削除の法改正運動なども行う。飲食店などの顧客も多く、執務室の一角には顧客の店名と同じ“ジラフ”“バンビ”など動物のフィギュアが飾られていた。

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