Vol.87
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前列左から、山﨑 恒弁護士(26期)、菊地裕太郎弁護士(33期)、鈴木大祐弁護士(49期)。後列左から、我妻大輔弁護士(69期)、新保雄一弁護士(61期)、澤田季歩弁護士(74期)、岩田登希子弁護士(63期)、石橋尚子弁護士(59期)

前列左から、山﨑 恒弁護士(26期)、菊地裕太郎弁護士(33期)、鈴木大祐弁護士(49期)。後列左から、我妻大輔弁護士(69期)、新保雄一弁護士(61期)、澤田季歩弁護士(74期)、岩田登希子弁護士(63期)、石橋尚子弁護士(59期)

STYLE OF WORK

#178

菊地綜合法律事務所

新たな領域への挑戦が原動力――。積み上げた実績を次世代がつなぐ

未知の領域に挑戦し続ける

東京弁護士会会長、日本弁護士連合会会長を歴任した菊地裕太郎弁護士が所長を務める、菊地綜合法律事務所。同事務所の最大の特徴は、「誰も手がけたことがない新たな領域に挑む」ことだ。

「例えば、今でこそポピュラーになった、民事信託を絡めた再開発事業の不動産証券化。当時は信託業法で不動産が対象になっていなかったため、クライアントや所内弁護士、関係者全員でアイデアを出し合い、議論しながら、新しいスキームを練り上げていきました。これを起点に、当該開発手法が不動産業界で当たり前になっていった、という経緯です」(菊地弁護士)

また、民事再生法施行後、東京地裁第2号となるゴルフ場民事再生の申し立ても行っている。「誰もやったことがないから面白い。誰もやっていないからやりやすい。そんな新しいチャレンジに燃えるんです」と笑う、菊地弁護士だ。

「開業時の顧問先は金融機関が多く、バブル経済崩壊後の処理で債権回収が多数ありました。しかし、経済環境や社会情勢の変化とともに顧問先が倒産したり、合併するなどして顔ぶれが変わり、新領域に取り組む機会が増えていった。そもそも『他者が手がけたことがない案件に挑戦したい』という気持ちを常に持っていたから、先ほどの不動産証券化や民事再生などにもいち早く取り組んでこられたのだと思います」(菊地弁護士)

新型コロナ禍以前は毎年、事務所旅行へ出かけた。写真は2018年11月に栃木県の那須へ出かけた時の一枚。今後も、所内の意見を聞きつつ再開していく予定

全力で議論し最適解へと導く

債権回収からスタートして、不動産開発、都市再開発、建築紛争などへ軸足を移し、現在は知的財産権をはじめ多岐にわたる分野を取り扱う同事務所。不動産・建設関係においては、2000年前後、弁護士にとって手付かずのような分野だった、都市再開発法が定める市街地再開発(法定再開発)に取り組み、やがて多くの大型案件に関与していった。

菊地弁護士のもと、それらの案件に関与してきた鈴木大祐弁護士は、次のように仕事の醍醐味を語ってくれた。

「いわゆるマンション建替え円滑化法が制定され、建替え事業にかかわることが多くなりました。建替え事業の案件は、法律の解釈が曖昧で判例も乏しいなか、原理原則から考えて、現在も所内の弁護士と議論し、チームで解決策を模索し続けております。議論をして解を見つけることに、やりがいを感じます」

12年、消費者庁に消費者安全調査委員会が発足した際には、事業者側として第1号案件に関与。菊地弁護士とともに「消費者庁に乗り込んだ」のが石橋尚子弁護士だ。

「1号案件は“一定の流れ”をつくることになるため、事業者や業界への影響が大きく、責任重大。この経験ができたのも当事務所ならでは。私が入所した17年前は定型的な事件も多少ありましたが、今は前例がないご相談や事件がほとんどです。昨今話題に上ることの多い、AIが生成したイラスト、マンガ、文章などの著作権に関しても、数年前から当事務所の弁護士がご相談を受けています。そのように社会の変化を踏まえつつ、新たな分野で先陣をきって挑戦できることが、当事務所の魅力だと思います」(石橋弁護士)

続けて石橋弁護士に、思い出に残る事件をうかがった。

「東日本大震災の際に起きた、千葉県浦安市での液状化に伴う訴訟に事業者側で関与しました。時代をまたいで分譲された建築物に関する紛争で、埋め立てられた当時の技術論から今の技術論までを、当該分野の第一人者といわれる学者に学びながら、訴訟に臨みました。事業者側にとっては結果が今後の事業に影響するうえ、業界全体に影響が及ぶような非常に注目された訴訟です。菊地を筆頭に、私と3名の弁護士のチームで取り組み、成果を出せたことは得難い経験になりました」

同事務所が取り扱う案件は、大型の企業法務案件ばかりではない。鈴木弁護士は個人の相続や、個人地主の事件などの取り扱いも多い。石橋弁護士も、難易度の高い個人の事件に関与している。

「18年末、多くのメディアで報道された、災害公営住宅に飼い猫や荷物を残して不法占拠しているとして、市が明け渡し請求訴訟を起こした“猫屋敷”問題が一例です。明け渡し請求を命じられた人の連帯保証人となった方から相談され、賃貸借契約の解除や連帯保証額の圧縮などの交渉を行政に対して行いました。依頼者は最後の頼みの綱として当事務所に来られ、相談を聞いた菊地が『本当に困っていらっしゃる。請けなさい』と」

同事務所の理念は、「誠実にして正直であれ」。菊地弁護士は言う。「自己の正義を軸として事件に向き合うこと。クライアントの要望と相反しても正直に伝え、納得してもらう。クライアントや筋に流されない、ぶれない、強い気持ちが必要」と。鈴木、石橋両弁護士は「この軸があるから、どんな事件でも必ず根本に立ち返って判断できる」と語る。

自ら働く場を整え、創出し続ける

菊地弁護士が日弁連会長に就任した18年、4名の弁護士がパートナーに就任している。

「一度に複数名がパートナーになり、菊地に頼らず、全員で協議しつつ事務所運営方針を決めていかねばならなくなったのは、大変でした。事件対応についてはもちろん、事務局の労務管理を含めて、事務所経営の厳しさを実感する期間だった」と、鈴木、石橋両弁護士。彼らパートナーの尽力の結果、産休・育休、在宅勤務などの“働きやすい環境”が整備された。

また、菊地弁護士自身の方針である“5年ごとに自分を見直す”ことが全弁護士に浸透しており、各自キャリアプランを中期的に考える習慣ができている。

「ライフイベントと仕事の状況を照らし合わせ、5年ごとにキャリアイメージを柔軟に考えています。“どうありたいか”を自問するなか、18年から慶應義塾大学ロースクールで非常勤講師を務め、22年からは教授職に就きました。さらに23年からは社外取締役を務めるなど、新たな挑戦に挑み続けています」(石橋弁護士)

「これまで携わってきた不動産関係の専門的知見を深めつつ、法律改正などの変化を迅速にキャッチアップしてチャンスに変え、事務所の新たな糧としていきたい。そうした経験を仲間と共有しつつ、若手メンバーに還元し、若手メンバーからも新しい情報を受けて、互いに弁護技術を向上させることによって、事務所の発展・貢献につなげていきたいと思います」(鈴木弁護士)

昨年入所した弁護士は、ファッションローに興味を持ち、弁護士業と並行して、ファッションの専門学校に通うことを決めたという。そんな意欲ある若手弁護士と、中堅弁護士が中心となって支えていく事務所の今後について、菊地弁護士は次のように語る。

「コンプライアンス、ビジネスと人権、証券絡みの大きな事件を扱ってきましたが、会社法に関する領域は意外と手薄なのかもしれません。会社法絡みは伸びしろがありますし、ぜひ積極的に攻めていきたい。この領域は証券会社や経営コンサルタントに浸食されているような気がしているので、弁護士がここを取り戻すといった勢いで挑みたい。また、AIを含めた新技術に関連する分野もこれからは避けて通れないでしょう。私自身、今も新たな案件を開拓していますし、ご相談も多くいただきます。シーズはまだまだ尽きないという感触もある。多くのシーズを、次世代の弁護士がどのように育ててくれるか、とても楽しみにしています」

  • 弁護士は全員、会務に参加している。「多彩な弁護士と協働できる会務活動は、意見調整力を育み、自分を振り返る機会にもなる、刺激的な場です」(石橋弁護士)
  • 多くの蔵書があふれる図書スペース。同事務所では、毎月の事務所会議で情報共有するほか、加除式書籍を執筆するなどしながら随時勉強会などで知見を深めている

Editor's Focus!

「これからの弁護士が“使われてしまう弁護士”で終わらないためには、まずは英語力、加えてAIを含むIT知識の習熟、自己実現に向けたアクションとアピールを意識的に行っていくコマーシャル力が必須。それらがあれば己の能力を生かすビジネスチャンスがきっとつかめる」。新たな挑戦を続けてきた菊地弁護士ならではの教えである。