Vol.88
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前列左から、續 栄美弁護士(73期)、大竹澪海弁護士(76期)、渡邊亮太弁護士(76期)、永吉啓一郎弁護士(65期)、櫻井良太弁護士(65期)、藤原尚季弁護士(72期)。後列左から、金山佳史弁護士(75期)、田中健一弁護士(75期)、伊藤竜士弁護士(75期)、藤谷知生弁護士(74期)、茨木拓矢弁護士(64期)、飯岡謙太弁護士(71期)、松本唯史弁護士(72期)

前列左から、續 栄美弁護士(73期)、大竹澪海弁護士(76期)、渡邊亮太弁護士(76期)、永吉啓一郎弁護士(65期)、櫻井良太弁護士(65期)、藤原尚季弁護士(72期)。後列左から、金山佳史弁護士(75期)、田中健一弁護士(75期)、伊藤竜士弁護士(75期)、藤谷知生弁護士(74期)、茨木拓矢弁護士(64期)、飯岡謙太弁護士(71期)、松本唯史弁護士(72期)

STYLE OF WORK

#183

弁護士法人ピクト法律事務所

中小企業経営者の意思決定を法務+税務面からサポートする

起業経験を糧とし、経営者に伴走

中小企業を主とした顧問業務、事業承継対策、紛争対応などを取り扱う弁護士法人ピクト法律事務所。代表を務める永吉啓一郎弁護士と茨木拓矢弁護士が2015年に設立した、60期台から70期台の弁護士が中心となって活躍する事務所である。そんな同事務所の強みは、“法務+税務にまたがる分野”で、高度な知見を有していることだ。
「私たちの理念は、『お客さま(経営者)の意思決定をサポート』すること、つまり付加価値を提供することです。会社経営に必要な法的問題だけを切り出して対応するのではなく、法務と税務のトータルバランスを勘案し、最終的に経営者が全体最適で意思決定できるようにサポートする――これが当事務所の強みであり特色です。例えば紛争対応で、どのように和解するかによって、民事上の最終結果は同じでも、税務への“跳ね返り”が大きく変わることもあります。そこまで考えた助言をします」と語る、永吉弁護士。
永吉弁護士の前所属先は、税務分野で新たな法的ソリューションを数多く開拓してきた鳥飼総合法律事務所。さらにいえば、学生時代には、Webマーケティングを駆使する事業の立ち上げなどを行っていた。その当時、「適法か違法か以前に、ビジネスモデルをすんなり理解してくれる弁護士が少ないのでは」と感じたことから、「経営者・ビジネスに伴走できる弁護士になろう」と、弁護士を志したという。そして「経営者に最も近い士業は税理士である」という実体験から、弁護士としてより多くの経営者をサポートしていくには、税理士との連携が必要なことを実感していたそうだ。
「当初から、『税理士法律相談会』というサービスを立ち上げ、税理士からのメーリングリストを使用した相談や、個別の法律相談サービスの提供などを行い、税理士向けの講演会・セミナーも数多く行ってきました。現在300名超の税理士が会員となっており、その顧問先の法務と税務の問題対応、税理士賠償責任の予防・対応といった税理士自身のリスク対応も行っています」(永吉弁護士)
弁護士法人ピクト法律事務所
若手弁護士は修習期が近いこともあって、風通しの良い風土が自然と出来上がっている。パートナーは個室を持たず、お互いの顔が見え、対話しやすいよう低めのパーティションを設置している

税務訴訟や事業承継対応に数多く関与

同事務所では、そうした税理士から紹介を受けた案件が半分以上を占める。実際、どのような仕事を手がけているのか、永吉弁護士に聞いた。
「一例は、税務訴訟です。税務訴訟はすでに課税庁が処分した事案ですし、勝率数パーセントであることはご存知のとおり。しかも民事の事件と異なり、和解による解決はなく、勝つか負けるかの世界です。証拠の調査や訴訟技術など、自分がどこまで徹底してやれたかが問われることは、大変ですが、ある種の裁判実務の面白さが味わえます」
その税務訴訟は、訴訟提起すれば数年がかりというケースも少なくない。
「本当に何年もかかる訴訟を行うべきか――まずは、ある程度の勝訴見込みがあるかの検証を大前提として、さらには長年の裁判対応による人的資源の消耗といったコストの勘案・説明もしたうえで、依頼の可否を検討してもらいます。仮に勝訴しても、依頼者に喜んでいただけなければ、本末転倒ですから。どう戦うかの前段階で、依頼者の視点・経営的視点で事態を見極めて助言できることも、私たちに期待されている能力といえます」(永吉弁護士)
もう一つ、同事務所で多く関与するのが事業承継対策だ。
「事業承継スキームの立案にけっこう関与していますが、多様な税制があるなか、何を選択してどう進めるかといった、税務と法務を融合させた“最適解”をお客さまに提供しています。当該企業の歴史を知ったうえで、経営全体にかかわる部分を経営者とプランニングする仕事は、非常にやりがいがあります。また近年は、少数株主対策や事業承継M&Aに向けた分散株式の集約などが増えてきており、それに伴って紛争化した事案に対応するといったケースも。どのように株式を集約するかで税額も大きく変わるので、そうした面も考えながら相手方と交渉したり、説得したりといった、税務の知見も問われる、やりがいのある仕事ができます」(永吉弁護士)
「当事務所ではそうした事業承継だけでなく、税理士から紹介を受けた遺産分割などの相続案件や取引トラブルや労務問題などの中小企業に関する法務も幅広く取り扱っています。私自身、事務所を設立する前から相続案件を取り扱ってきましたが、永吉弁護士と協働したことによって、相続のみならず様々な案件を処理する際に税法の観点を勘案する――付帯的に税法の知識を民事の問題に取り入れられるため、クライアントに提示できる選択肢が増えることや、よりよいサービスが提供できることを実感しています。当事務所の弁護士全員が、税法を有力な武器にしていけるよう、後進の指導をしていきたいと思っています」(茨木弁護士)
弁護士法人ピクト法律事務所
同事務所の案件は、すべてデータベースで管理。過去の事件についても担当弁護士が誰かすぐわかるので、知りたいこと・学びたいことを気軽に聞きにいける環境となっている

弁護士の自立を支援していきたい

“案件の入り口は税理士”メインだが、取り扱い分野は幅広い。コーポレート、ファイナンス、不動産取引・紛争、M&A・起業再編、知的財産権、使用者側の労働事件など多岐にわたる。クライアントは中小企業が主で、「経営者と直接やりとりできる」ことを重視。構成メンバーは70期台の弁護士が多いが、どんな教育体制を敷いているのか、茨木弁護士に聞いた。
「当事務所ではパートナー、リードアソシエイト、アソシエイトという3つの役割を置き、一つの案件を2人以上のチームで進める体制を敷いています。アソシエイトは一定の研修後、リードアソシエイトかパートナーが必ずついて、案件を進めます。3年をめどに、一とおり事件処理をできるようになったら、リードアソシエイトとして一つの案件に責任を持って処理できるようになってほしいですね。後輩の指導をしたり、全体のバランスを見ながら仕事を進めるなど、事務所運営・組織運営にかかわる準備をしつつ、自分自身の視野を広げていってもらいたい。また、先述のとおり、税法を全員の武器にしていきたいと考えているので、その勉強会を月1回、テーマを決めて行い、全員で知見を深め、“民事に税法を取り入れて事件処理するための感度を上げていく”取り組みを継続しています。例えば、基本書などの資料の読み合わせを行いつつ、相続税の申告や特例についてなど、税務の各種制度を学んでもらうといった内容です」
永吉弁護士は、これからどのような事務所づくりを目指すのか? 取材の最後に聞いてみた。
「設立当初から、弁護士やスタッフを増やして、事務所を大きくしていきたいと思っていました。そのほうが、弁護士一人で成す仕事よりも、きっと面白い仕事ができるはず。ですが、その目標を追いかける前に、今、ネットワークができている300名超の税理士の方々からの相談に対応していくことや、一人ひとりの税理士と信頼関係を深めていくことが急務となっています。そうした仕事はこれまで、パートナーである私と茨木弁護士個人に依拠していましたが、これからはその属人的な案件・スキルを組織で展開できるよう、後進育成に力を入れていきたいと考えます。仮に、当事務所の弁護士各自が税理士5人ずつと信頼関係を構築してつながっていけたら、これまでより多くの税理士の方々へのサポートを充実させられることになります。しかもそうしたつながりは各自の財産となり、弁護士としての自立への足がかりになっていくはずです。事件処理能力だけではなく、事件を獲得する力も伸ばすことができる。そんな支援体制を組織として整えていきたいと考えています。多くの税理士を通じて、その先にいる経営者をサポートしつつ、弁護士個人の自立力を鍛えていくこと。そんな力を持った弁護士を増やしていける体制を事務所の強みとして確立する――これを当事務所は目指していきます」(永吉弁護士)

Editor's Focus!

「ピクト(PCT)」という事務所名には、①企業・経営者の参謀(Partner)となって付加価値を提供すること、②社会・経済の変化(Change)に強く、法曹界の常識にとらわれない組織として成長し続けること、③所内だけでなく、顧客とも一体的なチーム(Team)関係を構築し、問題解決に臨んでいく――といった意味が込められている。

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