同事務所では、そうした税理士から紹介を受けた案件が半分以上を占める。実際、どのような仕事を手がけているのか、永吉弁護士に聞いた。
「一例は、税務訴訟です。税務訴訟はすでに課税庁が処分した事案ですし、勝率数パーセントであることはご存知のとおり。しかも民事の事件と異なり、和解による解決はなく、勝つか負けるかの世界です。証拠の調査や訴訟技術など、自分がどこまで徹底してやれたかが問われることは、大変ですが、ある種の裁判実務の面白さが味わえます」
その税務訴訟は、訴訟提起すれば数年がかりというケースも少なくない。
「本当に何年もかかる訴訟を行うべきか――まずは、ある程度の勝訴見込みがあるかの検証を大前提として、さらには長年の裁判対応による人的資源の消耗といったコストの勘案・説明もしたうえで、依頼の可否を検討してもらいます。仮に勝訴しても、依頼者に喜んでいただけなければ、本末転倒ですから。どう戦うかの前段階で、依頼者の視点・経営的視点で事態を見極めて助言できることも、私たちに期待されている能力といえます」(永吉弁護士)
もう一つ、同事務所で多く関与するのが事業承継対策だ。
「事業承継スキームの立案にけっこう関与していますが、多様な税制があるなか、何を選択してどう進めるかといった、税務と法務を融合させた“最適解”をお客さまに提供しています。当該企業の歴史を知ったうえで、経営全体にかかわる部分を経営者とプランニングする仕事は、非常にやりがいがあります。また近年は、少数株主対策や事業承継M&Aに向けた分散株式の集約などが増えてきており、それに伴って紛争化した事案に対応するといったケースも。どのように株式を集約するかで税額も大きく変わるので、そうした面も考えながら相手方と交渉したり、説得したりといった、税務の知見も問われる、やりがいのある仕事ができます」(永吉弁護士)
「当事務所ではそうした事業承継だけでなく、税理士から紹介を受けた遺産分割などの相続案件や取引トラブルや労務問題などの中小企業に関する法務も幅広く取り扱っています。私自身、事務所を設立する前から相続案件を取り扱ってきましたが、永吉弁護士と協働したことによって、相続のみならず様々な案件を処理する際に税法の観点を勘案する――付帯的に税法の知識を民事の問題に取り入れられるため、クライアントに提示できる選択肢が増えることや、よりよいサービスが提供できることを実感しています。当事務所の弁護士全員が、税法を有力な武器にしていけるよう、後進の指導をしていきたいと思っています」(茨木弁護士)