各業界・業種特有の労務問題の知見を豊富に蓄積している同事務所。昨今、増加しているのは、問題社員対応やセクハラ・パワハラ事案などへの対応だという。
「解雇事件(能力不足、労働者の規律違反、整理解雇)、損害賠償請求事件(セクハラ・パワハラ)、未払い賃金(残業代)支払請求事件への対応が年々増えています。“昭和の時代の労使紛争”は徐々になくなってきましたが、個々の企業で新たに労働組合が立ち上がったとか、ユニオンが介入してきたといった相談・トラブル対応、団体交渉に関するアドバイスは変わらずあります」(岡・向井弁護士)
労働組合対応について、岸田弁護士は次のように話す。
「私は年間40~50件の団体交渉に立ち会っています。団交といっても最近は、企業外の組合・ユニオンに加入する個人の労働条件に関する交渉も多くなっています。弁護士によって進め方は異なりますが、私はどちらかというと、“切った張った”の激しい交渉ではなく、いい意味で淡々と笑顔で、相手としっかりコミュニケーションを取りながら解決を目指すスタイル。ですから、立場の違う相手とうまくコミュニケーションできて、個人も企業も納得のいく結論を導き出せた時は、やはり満足感が高いです」(岸田弁護士)
また、労働紛争対応については「各弁護士で方針は異なるが、おそらく全員が、紛争を極力回避し、経営・事業を止めないことを心がけている」と、向井弁護士。
「“20年来の問題社員”に、最終的に自主退職してもらうことで解決に至ったケースがありました。当該社員に毎日、上司へ業務報告をしてもらう指導方式=日報の提出を提案。基本を徹底的に実践してみよう、と。企業は早く問題解決を図りたいので、早期の退職を望みがちですが、我々としては、日報を出す習慣が身につき、それで社員の仕事の質が上がればよし、できなければできるまでやってもらうというスタンスでした。結果的には本人が『辞めたい』と。なるべく穏便に、訴訟にせず、なおかつ企業側としても譲らずに納得のいく結果を出す。これを目指して行った、当事務所ならではの工夫の一例です」(向井弁護士)
「問題社員対応では、解決に何年もかかり、その間に人事担当も法務担当も代替わりするというケースもあります。それでも、なるべく紛争にしない方向で対応する。仮に紛争になって勝てたとしても、一人の問題社員対応にかけた時間や労力は、企業にとって大きな負担となりますから」(岡弁護士)
16年入所の樋口陽亮弁護士は、同事務所の仕事の特徴をこう話す。
「“労務問題は感情問題”といわれるように、企業側と従業員間の感情のもつれが労働事件に発展したもので、それをどううまく解きほぐしてあげられるかが解決のポイントです。なかなか結論が見えないという難しさがあると思いますが、同じ事件は一つもなく、従業員や企業が変われば、解決への筋道も変わる。そこに面白さがあります」(樋口弁護士)