Vol.88
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前列左から、中村景子弁護士(72期)、平野 剛弁護士(56期)、向井 蘭弁護士(56期)、岡 正俊弁護士(54期)、岸田鑑彦弁護士(62期)、馮 驊中国律師、梅本茉里子弁護士(71期)。後列左から、釋 英導弁護士(75期)、友永隆太弁護士(69期)、山﨑 駿弁護士(74期)、井山貴裕弁護士(71期)、樋口陽亮弁護士(69期)、佐藤浩樹弁護士(75期)、平澤大樹弁護士(74期)、本田泰平弁護士(73期)。他に、創設者・顧問の狩野祐光弁護士(26期)

前列左から、中村景子弁護士(72期)、平野 剛弁護士(56期)、向井 蘭弁護士(56期)、岡 正俊弁護士(54期)、岸田鑑彦弁護士(62期)、馮 驊中国律師、梅本茉里子弁護士(71期)。後列左から、釋 英導弁護士(75期)、友永隆太弁護士(69期)、山﨑 駿弁護士(74期)、井山貴裕弁護士(71期)、樋口陽亮弁護士(69期)、佐藤浩樹弁護士(75期)、平澤大樹弁護士(74期)、本田泰平弁護士(73期)。他に、創設者・顧問の狩野祐光弁護士(26期)

STYLE OF WORK

#184

杜若経営法律事務所

使用者側の労働問題を解決する専門家集団。弁護士自身の“働き方改革”も推進中

「日本の雇用社会を変える!」を使命に

杜若(かきつばた)経営法律事務所は、1974年に狩野祐光弁護士が前身となる事務所に所属して以来、約50年にわたり一貫して使用者側の労働問題・労使問題を手がけてきた。2017年、現事務所名に改称し、現在は代表の岡正俊弁護士、向井蘭弁護士、岸田鑑彦弁護士の3氏を中心に事務所を運営している。岡弁護士に、事務所の使命を聞いた。
「『企業から日本を元気に! 日本の雇用社会を変える!』を目標に掲げ、経営者を労務問題の悩みから解放し、企業の目的達成のために協力・提案する。それとともに日本社会に向けて、雇用に関する情報・提案を積極的に発信していくことを使命としています」
使用者側に立ち、人事労務管理の諸問題の相談、訴訟、労働審判、任意交渉などの個別労働紛争への対応、団体交渉、不当労働行為救済申立事件といった集団的労働紛争への対応など、労働法分野のあらゆる側面から企業活動のサポートを行う。岡弁護士と向井弁護士のパートナー就任後、11年頃から営業活動を強化し、着実に増やしてきた顧問先は700を超える。顧問先の業種は、製造、運送、介護、飲食・サービス、広告、金融関連などと幅広く、その規模も大手から中小企業まで多様だ。
「所内外での講演会やセミナー・ウェビナーの講師、ニュースレターや書籍などの執筆といった情報発信活動を地道に行ってきました。営業活動を強化し始めた頃は月1回程度の講演回数でしたが、今では年間100回超。22年は事務所全体で約245回、若手弁護士もどんどん登壇しています。こうした手法でネットワークを広げ、顧問先を増やしてきました。また、当事務所は社会保険労務士など隣接士業との連携も強固で、士業の方々の顧問に加え、そうしたつながりで紹介いただいた企業が顧問先になったというケースも非常に多いです」(向井弁護士)
杜若経営法律事務所
フリーアドレス形態だったIT企業のオフィスに居抜きで移転。物理的にも心理的にも風通しの良さが得られる。「リーガルテックの活用で書類や書籍のデジタル化を進めている」(岸田弁護士)

経営者や人事担当者に寄り添い、企業を守る

各業界・業種特有の労務問題の知見を豊富に蓄積している同事務所。昨今、増加しているのは、問題社員対応やセクハラ・パワハラ事案などへの対応だという。
「解雇事件(能力不足、労働者の規律違反、整理解雇)、損害賠償請求事件(セクハラ・パワハラ)、未払い賃金(残業代)支払請求事件への対応が年々増えています。“昭和の時代の労使紛争”は徐々になくなってきましたが、個々の企業で新たに労働組合が立ち上がったとか、ユニオンが介入してきたといった相談・トラブル対応、団体交渉に関するアドバイスは変わらずあります」(岡・向井弁護士)
労働組合対応について、岸田弁護士は次のように話す。
「私は年間40~50件の団体交渉に立ち会っています。団交といっても最近は、企業外の組合・ユニオンに加入する個人の労働条件に関する交渉も多くなっています。弁護士によって進め方は異なりますが、私はどちらかというと、“切った張った”の激しい交渉ではなく、いい意味で淡々と笑顔で、相手としっかりコミュニケーションを取りながら解決を目指すスタイル。ですから、立場の違う相手とうまくコミュニケーションできて、個人も企業も納得のいく結論を導き出せた時は、やはり満足感が高いです」(岸田弁護士)
また、労働紛争対応については「各弁護士で方針は異なるが、おそらく全員が、紛争を極力回避し、経営・事業を止めないことを心がけている」と、向井弁護士。
「“20年来の問題社員”に、最終的に自主退職してもらうことで解決に至ったケースがありました。当該社員に毎日、上司へ業務報告をしてもらう指導方式=日報の提出を提案。基本を徹底的に実践してみよう、と。企業は早く問題解決を図りたいので、早期の退職を望みがちですが、我々としては、日報を出す習慣が身につき、それで社員の仕事の質が上がればよし、できなければできるまでやってもらうというスタンスでした。結果的には本人が『辞めたい』と。なるべく穏便に、訴訟にせず、なおかつ企業側としても譲らずに納得のいく結果を出す。これを目指して行った、当事務所ならではの工夫の一例です」(向井弁護士)
「問題社員対応では、解決に何年もかかり、その間に人事担当も法務担当も代替わりするというケースもあります。それでも、なるべく紛争にしない方向で対応する。仮に紛争になって勝てたとしても、一人の問題社員対応にかけた時間や労力は、企業にとって大きな負担となりますから」(岡弁護士)
16年入所の樋口陽亮弁護士は、同事務所の仕事の特徴をこう話す。
「“労務問題は感情問題”といわれるように、企業側と従業員間の感情のもつれが労働事件に発展したもので、それをどううまく解きほぐしてあげられるかが解決のポイントです。なかなか結論が見えないという難しさがあると思いますが、同じ事件は一つもなく、従業員や企業が変われば、解決への筋道も変わる。そこに面白さがあります」(樋口弁護士)

働きやすさと効率的な技術習得を両立

「労働問題は“人間相手”なので、労働法に関する実務書や教科書が増えたとはいえ、どんなに優秀な弁護士でも“場数”を踏まないと成長できない」と語る向井弁護士。ゆえに教育には特に力を入れ、キャリアステップも明確に定めている。①準備書面作成・訴訟対応などの基本的業務が行えるようになる、②主任弁護士として訴訟や交渉ができるようになる、③顧問企業の相談に主任弁護士として対応できるようになる、④講演・執筆で個人として営業活動ができるようになり、集客・顧客獲得ができる、⑤新しい分野を開拓し、収益分野に育てる――これが同事務所で一人前の弁護士になるためのステップだ。
「そのために、当事務所ではまず①の段階で、原則1つの事件を弁護士2名以上(先輩弁護士と若手弁護士)で担当します。事件ごとに先輩弁護士がOJTで指導するかたちですね。また、団交の場合は特に弁護士ごとに個性があって、進め方も様々ですから、なるべくいろいろな先輩弁護士と組んで、それぞれのスタイルや労働事件特有のノウハウを学んでもらっています」(岸田弁護士)
そんな事務所の魅力を、樋口弁護士に聞いた。
「第一の魅力は、風通しの良さです。事件を一緒に担当していない先輩弁護士にも、気軽に相談・質問できて、自らの意見も積極的に述べられる環境です。“情報発信”にも寛容で、若手もセミナー講師や原稿執筆など成長の機会がたくさんあります。特に向井弁護士が、『若手でも独力で仕事を獲得できるよう日頃から心がけよう』という考え方なので、そうした風土が醸成されたのだと思います」(樋口弁護士)
もう一つの魅力は、働きやすさ。7年ほど前からタイムカード管理を導入して勤務時間を把握、午後10時以降や休日の勤務は許可制とし、働き過ぎの防止に努める。また、年次有給休暇の取得を積極的に推奨している。こうした環境整備は、「労務問題のアドバイスをするなら、まず自分たちから改善を」といった思いがあるからだ。
最後に、岡・向井・岸田弁護士に今後の取り組みについて聞いた。
「10年以内に弁護士30名規模を目指したいと考えています。規模がすべてではありませんが、弁護士が多くいれば、それだけできることも広がります。実際、現時点で全国の企業から労務問題に関する依頼があるので、より迅速に対応していきたい。また、若手弁護士の持つ“新しい感覚”を、事務所運営に取り入れていきたいという思いもあります。そのように弁護士が増えていくと、自ずと評価の問題も出てきます。毎年、メンバーにアンケートを取っていますので、全員の意見を参考にしつつ、適正に各自の仕事を評価する基準を構築しながら、誰もが働きたいと思える事務所に育てていきたいですね」(岡・向井・岸田弁護士)
杜若経営法律事務所
同事務所では名刺交換した1万人以上の経営者や人事・労務担当、社労士あてに毎月メルマガを配信する。セミナー企画・登壇を、先輩弁護士の指導のもと、若手主体で行うことも多い

Editor's Focus!

狩野祐光法律事務所から狩野・岡・向井法律事務所と改称し、現在の事務所名となったのは2017年から。事務所名にある「杜若(かきつばた)」は、花の名前。「杜若色が青紫の穏やかな色で、紛争を鎮め予防することを目的とする当事務所のイメージに合っていることから事務所名として採用しました」(岡弁護士)

杜若経営法律事務所