2021年に設立された、GRiTPartners法律事務所。事務所を設立した思いを、所長の吉澤尚弁護士にうかがった。
「我々は法律のプロフェッショナルとして、客観的根拠を基に勇気と決断力を持ってお客さまの課題解決を成し遂げねばなりません。案件が複雑化している近年は、法律問題だけにとらわれず、事案解決に必要な関連領域まで目配りできること、時にはお客さまのビジネス構造を根本から変えるような新たな視点で提案が行えることも、弁護士に求められていると思います。そのためには”率先して提案する創造力”が必要ですから、それを強く意識しております」
吉澤弁護士は、「”事実への対応”を得意としてきた弁護士にとって、創造力を身につけることはなかなか難しい。しかし、混沌とした今の時代、法律上、正しい助言を行っただけでは、お客さまの期待に100%応えたとはいえない場合が多い。我々は、単なる助言ではなく、お客さまとともに新たな産業創造に挑戦するといった、新しいかたちの支援を提案していきたい。そんな”挑戦を止めない弁護士”の集まりでありたい」と語る。実際に同事務所では、IT・DX分野、医療ライフサイエンスといった科学技術分野に属する大手、スタートアップ企業の新規事業に関する案件の取り扱いが多い。
「関連士業や海外法律事務所との連携は当然として、そうした新規性と専門性が要求される案件においては、当該分野の研究者とチームを組成してサポートしています」
所外の専門家の一例は、吉澤弁護士が代表を務める別法人、Willsame株式会社に協力しているアドバイザーたちだ。同社には、ライフサイエンス、メディカルサイバーセキュリティ、グローバルビジネス、IPストラテジー、産学連携など、多様な分野の専門家が所属している。また、同社が運営事務局を務める「ライフサイエンスインキュベーション協議会」――健康医療分野のイノベーションやエコシステム構築の加速、研究シーズの産業実装とグローバル事業に成長させるためのサポートなどを行う機関――に参加する、大学研究機関や製薬・医療機器などの事業会社、VC/CVCなどとチームアップすることもあるという。
「例えば我々は、優れた研究シーズを持つ研究者と、その研究シーズを用いて社会課題を解決したいと考えるスタートアップをつなぐ役割を果たしています。単に共同研究契約のひな形を使ってアドバイスするのではなく、産業実装を見据え、共同研究のあるべき方向性を示唆したり、共同研究の範囲を決めるといった、契約業務において重要な”前さばき”の部分で、専門家ネットワークの力を借りています。知的財産・データ戦略を踏まえた研究開発の推進や、M&A・アライアンス戦略などの提供はもちろんですが、新技術による産業創出と、これを進める人たちを応援していきたいという思いが、我々の業務の根底にあります」