Vol.92
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左から、中田直茂弁護士、入江政幸弁護士(67期)

左から、中田直茂弁護士、入江政幸弁護士(67期)

STYLE OF WORK

#191

弁護士法人北星法律事務所

“信託”という専門性を柱とし、金融法務・企業法務を中心に取り扱うブティックファーム

信託の概念と法制度に精通

北星(ほくせい)法律事務所は、金融法務と企業法務を中心に取り扱うブティックファームだ。1984年に、前身となる事務所を髙橋紀勝弁護士が開設して以来、メガバンクグループなどの金融機関を中心に、多様な銀行取引・信託取引を支援してきた。最大の特徴は、信託を柱とした専門性の高さにある。

「信託銀行が取り扱う信託業務は、資産流動化などのファイナンス取引に加え、個人の財産承継プランニング、年金基金向けの資産運用・管理サービスなど多岐にわたります。私たちは、こうした幅広い“信託の仕組み”に精通し、的確に助言できることを強みとしています」

こう語るのは、代表の中田直茂弁護士。信託法の理解は、企業法務や金融法務、財産管理業務などにおいて不可欠だが、法学部生やロースクール生には応用的な学問領域といえる。しかし昨今、超高齢化やデジタル化の進展に伴い、信託業務の必要性はますます高まりつつある。

「少子高齢化や経済環境の変化が加速するなか、信託の活用が拡大しています。例えば、成年後見制度より柔軟な運用が可能な家族信託、オーナー企業の経営権承継を目的とした株式信託、不動産や上場株式を証券化する信託など。DXの進展や規制の変化を受け、さらに信託の役割が拡大していくでしょう」

2007年の信託法改正により、多様な信託の形態が可能になったが、受託者である金融機関は新たな対応を求められている。

「信託銀行、メガバンク、証券会社などの金融機関は、金融庁が掲げる『顧客本位の業務運営に関する原則』や、22年11月に金融商品取引法に導入された『最善利益義務』への対応が必要となっています。これらの規制は従来のルールベースのチェックリスト方式ではなく、プリンシプルベースアプローチを採用しており、金融機関の主体的な対応を促すものです。そのなかで重視されるのが、英米法の“フィデューシャリー・デューティー(受託者責任)”の考え方。信託は、この概念を最も明確に体現する制度であり、金融機関にとって“業務の基盤”ともいえる重要な制度になりつつあります。こうした信託の法概念や信託法の制度の知見をさらに深めていくことは、弁護士として一生をかけるに値する興味深いテーマといえるでしょう」

  • 弁護士法人北星法律事務所
    大手商社法務部勤務経験を有する入江弁護士。「ビジネスが好きで、世の中に価値を生み出す仕事に就きたい」「専門性を身につけたい」と考え入所。「信託をライフワークとして、アカデミックな関心も強い中田弁護士に、“自分に足りない面”を指摘してもらえることがありがたいです」(入江弁護士)
  • 弁護士法人北星法律事務所

信託業務の周辺領域で新しい専門性も獲得

事務所の柱となる信託に関する専門性は、「長年、常にお客さまの近くで法律相談を受けてきたからこそ高まった」と、中田弁護士。

「金融法務・信託法務では、お客さまも高い法的リテラシーを有しています。そうした方々が納得するよう、明確でロジカルな回答を常に心がけています。例えば顧問先の信託銀行と、毎週数時間、出張やウェブ法律相談で、法務部や各事業部門の方々から信託法、銀行法、金商法、労働法、契約法、個人情報保護法などに関する質問を受けて、その場で回答します。いわば“ホームドクター”として、日常的な法律相談はもちろん“先端医療”に相当する高度な法的助言も提供する――それが私たちの仕事です。また、顧問先で培った経験を生かし、金融機関以外の事業会社における会社法務や紛争解決などの取り扱いも増えてきました」

顧客との関係性を、入江政幸弁護士は次のように補足する。

「お客さまとの距離の近さは、当事務所の強みです。法律相談など、日々の密接なコミュニケーションを通じて信頼関係を築くことで、幅広い相談をいただいています。法務に限らず、ビジネスの最前線に立つ部門との対話の機会も多いです。その方々からは案件の初期段階、いわば“柔らかい段階”から相談いただきますし、この段階での“壁打ち議論”を重ねることで、より実効性の高いサポートができていると思います。最近話題のデジタル遺言や、認知症の家族を持つ方のために設計された『代理出金機能付信託』などの提案がその一例です。中田弁護士とよく話すのですが、このようにビジネスの最先端の業務にかかわれること、お客さまのイノベーティブな挑戦に寄与できることも、当事務所の仕事の醍醐味だと思います」

近年、増加している金融機関以外の事業会社のサポート――特にコーポレートガバナンス関連を牽引するのが、入江弁護士だ。
「上場企業には株主名簿管理人の選任義務があり、信託銀行がその担い手です。そのため信託銀行は、証券代行業務において、コーポレートガバナンスの強化に向けた新たなサービスを次々と提供しています。そうしたなかで担当部門から声をかけていただき、業務に深く入っていくうち、コーポレートガバナンス関連の業務――監査役会設置会社から監査等委員会設置会社への移行、取締役会実効性評価など、仕事の範囲が自然に広がってきました。お客さまのパートナーとして、その時々に必要となる実務に携わり、法的知見を幅広く吸収できることも大きなやりがいです」

つまり同事務所で働く弁護士は、“信託というエクスパティーズを持つ、応用力のあるジェネラリスト”になれる。自分自身の興味・関心、得意が見つかれば、ベースとなるリーガルマインドや人脈を応用し、信託業務の周辺領域で別の専門性を高めていくことも可能だ。なお同事務所では入所後、お客さまの信託銀行に出向するチャンスがあり、入江弁護士も約2年間、信託銀行の証券代行部門に出向した。中田弁護士は言う。

「出向先のビジネス部門の方々とチームで動くことは、かけがえのない経験になります。お客さまは時に、出向した弁護士にとってメンターやロールモデルにもなってくれます。出向は、組織のなかに入り、そうした方々と接点を持って成長できるチャンスになります」

成長実感が得られる働きがいある環境

現在、中田弁護士と入江弁護士2名体制での事務所運営。「入所する弁護士にとっては、同期や兄・姉弁がたくさんいる状況ではありません。ですが不安にならないよう、1年、3年、5年、10年後に身につけてほしいスキルを“見える化”しています」と、入江弁護士。両弁護士は、外部コンサルタントの協力も得ながら、詳細な「スキル定義シート」を作成。「感覚ではなく、できるだけ客観的にパートナーに必要なスキルを明示し、後進を育成していきたい」という考えがある。

「信託法については、お客さまのほうが弁護士1年目よりもはるかに詳しい。逐条解説を執筆しているようなお客さまから質問を受けて、『自分はまだまだだ』と痛感することもありました。若手弁護士が『スキル定義シート』の項目を一つずつ学び、積み上げていくことで、モチベーションを維持しながら安心して成長できるようにと、中田弁護士と作成したものです」(入江弁護士)

“お客さまから学ぶ”ことは多い。しかし、いずれは「この弁護士に頼りたい、学びたい」と思われる存在にならなければ、信頼関係を深めることはできない。

「お客さまの課題やニーズにつき学ぶことが多く、出向当初は『勉強させてください』という姿勢でした。しかし、自己研鑽しながらできることを増やし、『ここは入江の意見を聞いてみよう』と言ってもらえる機会を増やしてきました。今も、『教えていただいたことを何倍かにしてお返しせねば』という意識を持って、お客さまの思いを汲み取りつつベストを尽くしています」(入江弁護士)

「“ファームであること(強固さ)”と、“カームであること(穏やかであること・威張らないこと)”は両立できる。『自身の外側にある正しい答えを探す』という謙虚さを大事に、お客さまの要求水準を高く設定して、その中長期的な利益を考え抜き、プロとして言うべきことは厳しくても伝える。それが結果的に信頼につながるのだと思います」(中田弁護士)

中田弁護士と入江弁護士は、事務所の将来について、次のように語ってくれた。

「時代のニーズに即したサービス・商品を生み出すお客さまの状況に常にキャッチアップしてこれをサポートし、よいサービスをともに生み出していきたい。そして、『信託といえば北星』と評される事務所に育てていきたい。そのためには後進育成が不可欠ですし、所属する弁護士が確かな成長を実感できる環境づくりが必須です。『信託に関心があり、専門性を高めるための継続的努力ができる』『チームメンバーを尊重し、協働して力を発揮できる』―― 。そうした優れたプロフェッションが集まる場を創り続けたいと考えます」

Editor's Focus!

事務所名は、旅や航海の道しるべを示す“指極星”に由来。「普遍の価値に目を凝らし、お客さまが事業を推進するにあたっての指針となるとともに、正しい方向を見つけるお手伝いをする。お客さまのバリュー(価値観)を体得し、正しい判断をサポートしていくという思いを込めた名前です」(中田弁護士)

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