事務所の柱となる信託に関する専門性は、「長年、常にお客さまの近くで法律相談を受けてきたからこそ高まった」と、中田弁護士。
「金融法務・信託法務では、お客さまも高い法的リテラシーを有しています。そうした方々が納得するよう、明確でロジカルな回答を常に心がけています。例えば顧問先の信託銀行と、毎週数時間、出張やウェブ法律相談で、法務部や各事業部門の方々から信託法、銀行法、金商法、労働法、契約法、個人情報保護法などに関する質問を受けて、その場で回答します。いわば“ホームドクター”として、日常的な法律相談はもちろん“先端医療”に相当する高度な法的助言も提供する――それが私たちの仕事です。また、顧問先で培った経験を生かし、金融機関以外の事業会社における会社法務や紛争解決などの取り扱いも増えてきました」
顧客との関係性を、入江政幸弁護士は次のように補足する。
「お客さまとの距離の近さは、当事務所の強みです。法律相談など、日々の密接なコミュニケーションを通じて信頼関係を築くことで、幅広い相談をいただいています。法務に限らず、ビジネスの最前線に立つ部門との対話の機会も多いです。その方々からは案件の初期段階、いわば“柔らかい段階”から相談いただきますし、この段階での“壁打ち議論”を重ねることで、より実効性の高いサポートができていると思います。最近話題のデジタル遺言や、認知症の家族を持つ方のために設計された『代理出金機能付信託』などの提案がその一例です。中田弁護士とよく話すのですが、このようにビジネスの最先端の業務にかかわれること、お客さまのイノベーティブな挑戦に寄与できることも、当事務所の仕事の醍醐味だと思います」
近年、増加している金融機関以外の事業会社のサポート――特にコーポレートガバナンス関連を牽引するのが、入江弁護士だ。
「上場企業には株主名簿管理人の選任義務があり、信託銀行がその担い手です。そのため信託銀行は、証券代行業務において、コーポレートガバナンスの強化に向けた新たなサービスを次々と提供しています。そうしたなかで担当部門から声をかけていただき、業務に深く入っていくうち、コーポレートガバナンス関連の業務――監査役会設置会社から監査等委員会設置会社への移行、取締役会実効性評価など、仕事の範囲が自然に広がってきました。お客さまのパートナーとして、その時々に必要となる実務に携わり、法的知見を幅広く吸収できることも大きなやりがいです」
つまり同事務所で働く弁護士は、“信託というエクスパティーズを持つ、応用力のあるジェネラリスト”になれる。自分自身の興味・関心、得意が見つかれば、ベースとなるリーガルマインドや人脈を応用し、信託業務の周辺領域で別の専門性を高めていくことも可能だ。なお同事務所では入所後、お客さまの信託銀行に出向するチャンスがあり、入江弁護士も約2年間、信託銀行の証券代行部門に出向した。中田弁護士は言う。
「出向先のビジネス部門の方々とチームで動くことは、かけがえのない経験になります。お客さまは時に、出向した弁護士にとってメンターやロールモデルにもなってくれます。出向は、組織のなかに入り、そうした方々と接点を持って成長できるチャンスになります」