千葉市を主要拠点として、リーガルサービスを提供する佐野総合法律事務所。弁護士20名強を擁する県内最大規模の法律事務所だ。1989年に代表弁護士・所長の佐野善房弁護士が開設して以来、地域に根ざし、社会経済活動の活性化と市民生活の安心を法的な面でサポートしてきた。もう一人の代表弁護士・島田直樹弁護士に事務所拡大の経緯をうかがった。
「私が入所した二十数年前は、自分を含めて所属弁護士3名の小規模事務所でした。しかしながら金融機関の不良債権処理(債権回収)の取り扱いが多く、クライアントも相当数ありました。当時の司法改革も背景に、『これから事務所の永続性をどのように保持していくか』について佐野弁護士と議論を重ねた結果、取り扱い分野の拡大や、クライアントへの継続的なリーガルサービス提供のため、質の高い弁護士の育成と確保が不可欠と考え、60期以降を中心に増員を図ってきた次第です」
現在、銀行などの金融機関、損害保険会社、行政機関、医療機関、社会福祉機関、教育機関、非営利団体などの法律顧問業務・企業法務を中心に、一般民事事件、交通事故、家事事件、労働事件などを取り扱う。各顧問先から紹介された案件、市民生活に目を向けた案件などまで幅広く対応できているのは、採用してきた弁護士が育ってきたからこそ。
「都心の法律事務所と比較すれば、当事務所は専門特化・細分化がしづらく、“総合事務所”の名のとおり、様々な案件を取り扱わねばなりません。しかしその分、所属する弁護士にとっては、多様な案件を経験しながら、自分が面白いと感じる、また得意と思える仕事を見つけていきやすいようです」
実際、同事務所の弁護士はそれぞれが得意分野を有している。島田弁護士は、金融法務や難易度の高い債権回収対応、川崎仁寛弁護士は、労務問題などの一般企業法務と不動産・建築紛争を得意とする。また、同事務所では個人事件の受任、弁護団事件、委員会活動が原則自由で、各自関心を持った分野にまい進できる。金原光俊弁護士であれば、交通事故や労働問題、高齢者が介在する法的問題への対応、村岡旭美弁護士は、一般民事事件や労働事件、山本祐輝弁護士は、国選弁護に注力しつつ、千葉県弁護士会のスポーツPTに所属し、その法律相談も積極的に行う。そのように得意分野も注力分野も異なるが、「依頼者の利益を最優先に」という思いは共通だ。
「拘置所に収監された方が病状悪化のため拘置所内で亡くなり、拘置所を設置・管理する国を相手に、その方の親が損害賠償請求を起こした案件に関与しました。特別公務員暴行陵虐罪でも刑事告訴したほか、一審だけで約5年かかった事件です。一審は敗訴したものの、控訴審では依頼者(親)の理解も得て勝訴的和解となりました。ほかにも様々な裁判を多数経験していますが、私たちは事案をコントロールし、できるだけ訴訟に至らせず解決する方法を探ります。訴訟はそもそもリスクが高いと考えていますし、判決までもっていった場合も、結果がどちらに転ぶかわからないというギリギリの経験も多数してきました。裁判が依頼者にとってゼロサムゲームにならないよう、対話を重ねたうえで“依頼者にとって最適な解決”を常に探っています」(島田弁護士)