Vol.92
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左から、吉森大輔弁護士、大野徹也弁護士。ともに公認不正検査士、公認AМLスペシャリストの資格も有する

左から、吉森大輔弁護士、大野徹也弁護士。ともに公認不正検査士、公認AМLスペシャリストの資格も有する

STYLE OF WORK

#192

霽月法律事務所

企業の不正対策や金融犯罪対策など社会課題の解決に向けた挑戦を続ける

組織のなかで培った力を生かす

2022年7月に、大野徹也弁護士が開設した霽月(せいげつ)法律事務所。前所属先であるプロアクト法律事務所では、最先端の企業のリスク管理業務に数多く携わった。だが50歳を前に「自分の事務所で挑戦したい」と考え、独立。24年には吉森大輔弁護士(66期)が参画し、新たなスタートを切った。大野弁護士は、事務所の特徴を次のように説明する。

「私たちは、①企業のコンプライアンス・リスク管理を高度化することで不祥事予防や危機管理を支援し、企業価値の維持・向上に貢献する、②組織犯罪・金融犯罪と戦う、③金融・保険業界にフォーカスする――特に、この3点がクロスする領域での業務で高い専門性を発揮できることが大きな強みとなっています」

大野弁護士は、弁護士6年目に外資系生命保険会社であるアフラックのインハウスローヤーに転身し、同社法務を“内側”から支えた経験がある。法律事務所勤務に戻ってからは、不正融資問題で金融庁がスルガ銀行に業務改善命令を発した際に設置された、コンプライアンス体制再構築委員会の委員や社外取締役・監査等委員を務めた。そして独立後は、KADOKAWAの贈賄事件に関する危機管理委員会委員・ガバナンス検証委員会調査担当や、上場子会社の医療機器メーカーによる贈賄事件に関する再発防止特別検討委員会委員を務めるなど有事の危機管理支援事案に数多くかかわってきた。

一方、吉森弁護士は、法律事務所で反社会的勢力対策(反社対策)を中心に経験を積んだ後、財務省や金融庁におけるマネー・ローンダリング対策(マネロン対策)を中心とした金融犯罪対策に従事。さらに日本郵政グループの持株会社では、子会社の不適正保険募集問題発覚後に設置された部署の室長として、グループガバナンスやリスク管理の強化に取り組んだ。“官民”いずれにおいても、コアな立場・業務を経験している。

つまり、それぞれが“当事者としての経験”を有するため、コンプライアンス・リスク管理や金融犯罪対策について、具体的な支援策の提示が行えるのだ。

「危機管理業務では、経営層の方々との関係構築が非常に大切です。弁護士としての知見や経験を踏まえながら、企業をとりまくステークホルダーの視座に立ち、経営層の方々に納得していただけるような説明をすることを心がけています。諒承のうえ、適切な危機管理を選択してくださったおかげで、企業価値の棄損が抑えられたり、早いスピードで信頼回復が図られた時は、やりがいを感じます」(大野弁護士)

霽月法律事務所
「弁護士登録以降、反社対策に取り組んできました。核となる思いは変わりませんが、関心・業務範囲が徐々に広がり、今に至ります」(吉森弁護士)

組織犯罪・金融犯罪を撲滅していく

同事務所の業務分野の中心は、不正調査などを含む有事の危機管理支援、平時のコンプライアンス・リスク管理業務、組織犯罪・金融犯罪対策、そして大野弁護士の経歴を生かした保険関連業務だ。事務所の特徴の一つでもある金融犯罪・マネロン対策については、「吉森弁護士が入所してから、ご依頼のペースが加速しています。金融機関向けの体制整備支援や、研修の業務が増えました」と、大野弁護士は説明する。

「私も吉森弁護士も、東京弁護士会民事介入暴力対策特別委員会に長年所属し、活動しています。私は22年から2年間委員長を務めさせていただき、24年からは日弁連の民暴委員会事務局長を拝命しました。これら委員会のメンバーとして組織犯罪の被害者救済に奔走し、暴力団に対する損害賠償請求などの被害回復活動にも取り組んできましたが、“トクリュウ”などの新たな犯罪組織も生まれてきており、犯罪で得られた収益の行方が分からず、被害回復が困難となるケースも少なくありません。組織犯罪をなくすためには、犯罪収益の流れを止めることが必要不可欠です。そこで、金融犯罪対策に取り組んでくださっている金融機関を全力で支援していきたいと思っているのです」(大野弁護士)

吉森弁護士も、金融・組織犯罪対策に懸ける思いを語ってくれた。「特殊詐欺やSNS詐欺などの金融・組織犯罪が横行している昨今、被害防止の役割を担う金融機関を支援することは、やりがいの大きい業務であると考えています。私たちが注力する金融犯罪対策は、金融機関におけるコンプライアンス・リスク管理の側面だけではなく、“犯罪被害の撲滅”という社会的要請の実現を目指す側面があります。被害者一人ひとりと接し、被った苦痛や後悔の声を直接うかがってきた私たちだからこその支援策を提供できていると自負しています。これまで、金融犯罪対策の分野は『決められたルールをしっかり守る』ことが取り組みの中心でしたが、今後は、実効性の向上――各金融機関においてリスク分析に基づく創意工夫・主体的な対応が求められます。私たちは、金融庁などにおける経験を生かし、こうした金融行政の流れを踏まえつつも、ルールの一方的な押し付けにならないよう、クライアントである金融機関のリスク状況・リソース・課題認識やご要望などをしっかりと把握し、その金融機関に合った支援を行っていきたいと思っています」

なお同事務所では、組織犯罪対策や不当要求事案への対応実績があるため、カスハラ防止条例の制定などを受けて、企業からのカスハラ対応体制整備、カスハラ事案への対応の相談も増え続けている。

霽月法律事務所
「事務所全体として、“効率性”と“機動力”には大きな自信をもっています。ワークライフバランスも大切にしています」(大野弁護士)

社会の要請を踏まえた、様々な規模の企業の支援

大野弁護士に、企業不祥事や金融犯罪対策の現状についてうかがった。

「企業不祥事は引き続き、後を絶たない状況にあります。従前、第三者委員会などの調査委員会が設置されるのは上場企業や大手金融機関などに限られる傾向でしたが、近時はオーナー企業などの非上場企業、各種団体、地域・中小金融機関などでも調査委員会の設置事例が増加しています。これは上場の有無を問わず、独立性と客観性のある調査により、組織構造まで深掘りした原因分析と、再発防止策の提言が多くのステークホルダーから求められるようになったからだと考えます。実際、当事務所でも、非上場の企業や団体からの危機管理に関するご相談事案が増えてきていると実感しています。また、前述のとおり金融機関による金融犯罪対策の高度化が強く求められる状況のなか、比較的規模が小さな地域・中小金融機関の対策の底上げが喫緊の課題だと感じています。吉森弁護士も話しましたが、金融犯罪対策はリスクベースアプローチによる取り組みが必要で、『何をどこまでしたらよいか』といった正解がない領域。私たちは、金融機関に対し、金融犯罪対策の有効性検証などの“高度化支援業務”を行う一方で、こうした取り組みを、地域・中小金融機関に広げる活動もしています。金融機関の方々には、まずは研修を通じて金融犯罪の手法や被害の最新状況を知っていただき、問題意識・危機意識を持ってもらう、そして、一緒にマネロンリスクを洗い出して低減措置を考え、金融犯罪対策に取り組んでいく――それが金融システムに対する信頼性の向上や、組織犯罪の撲滅の一助になればと思っています」

リモート環境が整ったことで、場所を問わず多くの金融機関に対して、支援や研修を実施することが可能となったが、実際に全国各地に出向くことも多い。大野弁護士は、昨年だけで30件以上の研修を実施、その多くは金融機関だが、事業会社やオープンセミナーでの講演も多い。一方、吉森弁護士は、研修・講演のほか、警視庁などと提携し、小・中学校、高校にも出向く。

「委員会活動の一環ですが、金融犯罪対策にかかわるなかで、金融教育やSNSなどの適切な利用を促す教育の重要性を痛感し、『SNSや闇バイトの危険性について、少しでも生徒の皆さんに浸透し、犯罪にかかわらない、まっとうな人生を歩んでいただきたい』という思いで、可能な限り授業を担当しています」(吉森弁護士)

大野弁護士は、事務所の今後の姿を次のように描いている。「今はまだ規模の拡大は考えていませんが、志を同じくする仲間が自然と増えていくことが理想です。様々な活動や事件処理を通じてご縁をいただいた他事務所の弁護士と協働で対応する事案も多いのですが、やはりある程度の規模の事案に対応する時には、事務所としてのチーム力が必要だと感じています。内外のプロフェッショナルと共同しながら、コンプライアンス・リスク管理や組織犯罪・金融犯罪対策などの“専門家集団”と評価いただけるようなチームを形成していきたいと思います」

Editor's Focus!

「霽月」とは、雨が上がったあとに照る月。転じて、曇りがなくさっぱりとした心境を指す。「クライアントや、そのステークホルダーの方々に、そうした心持ちになっていただけるサービス提供を目指します」(大野弁護士)。なお写真の月のオブジェ『full-moon』は、大野弁護士が事務所シンボルとして、木工作家に創作を依頼した。

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