Vol.93
HOME事務所探訪弁護士法人長瀬総合法律事務所
  • ▼弁護士のブランディング支援サービス

    Business Lawyer's Marketing Service
  • ▼弁護士向け求人検索サービス

    想いを仕事にかえていく 弁護士転職.JP
  • ▼弁護士のキャリア形成支援サービス

    弁護士キャリアコンシェルジュ
  • 当社サービス・ビジネス全般に関するお問い合わせ

左から、金子智和弁護士(74期)、斉藤雄祐弁護士(71期)、田中佑樹弁護士(72期)、長瀬佑志弁護士(61期)、鈴木麻文弁護士(75期)、大久保 潤弁護士(66期)、竹内聡弁護士(75期)

左から、金子智和弁護士(74期)、斉藤雄祐弁護士(71期)、田中佑樹弁護士(72期)、長瀬佑志弁護士(61期)、鈴木麻文弁護士(75期)、大久保 潤弁護士(66期)、竹内聡弁護士(75期)

STYLE OF WORK

#196

弁護士法人 長瀬総合法律事務所

課題を抱える人々のよりよい未来のために、地域に根差したリーガルサービスを提供

〝再生司法の実現〟を理念に掲げる 

長瀬総合法律事務所は、茨城県牛久市に本部を構え、県南(守谷)、県北(日立)、県央(水戸)と、県内4拠点を展開する地方都市型の総合法律事務所である。2013年、長瀬佑志弁護士によって設立され、翌14年には持続的な発展を見据えて、弁護士法人へと移行した。現在は11名の弁護士を擁し、全国規模の依頼にも対応している。長瀬弁護士は、事務所設立に至る経緯を、次のように話す。

「私が司法修習後に入所したのは、西村あさひ法律事務所です。〝法の支配の実現〟といった理念に共感し、大手企業を中心とした企業法務に関する業務を経験させていただきました。一方で、司法修習時代に通った大分県にある法律事務所――行政訴訟や、障がい者の賠償問題など、市民側の事件を多く扱っていた事務所での経験が忘れられず、『自分自身が弁護士として仕事をしていくにあたり、本当にやりたいことは何なのか』を突き詰めて考えるようになりました」

そして長瀬弁護士は、布川事件国家賠償請求訴訟で弁護団長を務めるなど、人権活動への尽力で知られる、谷萩陽一弁護士の事務所へ転職することに。

「谷萩先生が所属する水戸市の事務所に、非常識にも一方的に入所希望の手紙を送り、頼み込んで入所させていただきました。ここで4年半ほど勤務したのち、自分の力を試してみたいと考え、独立したという流れです」

大手渉外法律事務所で培った経験と、地方都市の法律事務所で培った個人事件・中小企業法務経験を生かして、「両方を扱える事務所を目指そう」と、地縁・血縁はなかったものの、茨城県に根を下ろした長瀬弁護士。「〝再生司法の実現〟―― すべてのクライアントを〝再生〟すること」を理念に掲げて、同事務所をスタートした。

「法律事務所に相談に来られる方々は、何らかの悩みやトラブルに直面し、〝マイナスの状態〟にあります。そうした方々の気持ちに寄り添って、単なる法的な問題解決にとどまらず、マイナスからプラスの状態になれるようにサポートしていくことを事務所の目標としています」

  • 弁護士法人長瀬総合法律事務所
    オフィスに弁護士の個室は設けず、弁護士・スタッフが会話しやすい環境づくりを行う。金子弁護士は、「私は茨城県出身なので、県内の事務所を探しました。企業法務と個人法務の業務内容のバランスがよいことと、長瀬弁護士の人柄に惹かれて入所しました」と語る。なお、同事務所の弁護士は約半数が茨城県外出身者だ
  • 弁護士法人長瀬総合法律事務所

地域特有の課題に向き合っていく

茨城県の人口は約280万人。県庁所在地である水戸市に人口が一極集中していない点が、ほかの地方都市とは異なる同県の特徴だ。水戸市に加え、つくば市、牛久市、日立市などが多くの人口を抱えている。

このような地域特性を踏まえ、同事務所では設立初期段階から複数拠点の展開を進めてきた。「市民のリーガルアクセスの観点から、早期に複数拠点を設けることは必然でした。一極集中の体制のほうがマネジメント上の負担は少なくて済みますが、将来的な事務所の発展を見据え、早い段階で拠点展開を行い、その体制に慣れることができたのは、茨城県の地域特性の恩恵だったと思います」と、長瀬弁護士は語る。

近年は企業法務分野の成長が著しく、顧問先は170社を超える。業務割合は、契約関連、会社法対応(株主総会・取締役会運営、非上場企業の経営権を巡る争いなど)、事業承継対応、労働問題対応(使用者側)、事業再生・法人破産などの債権整理、債権回収、知的財産関連、スタートアップ支援、顧問などの企業法務分野が約4割。一方で、交通事故、離婚、相続問題、労働災害、刑事事件などの個人法務分野が、約6割となっている。企業法務分野を担当している金子智和弁護士に、案件の特徴や、仕事のやりがいを伺った。

「後継者不足に端を発する、中小企業のM&Аの相談や依頼が増えています。また、企業内部の法的な体制――例えば財務管理における契約書の整備、コンプライアンス対応、ガバナンスの確立、リスク管理体制の構築などの整備や、取締役会・株主総会の手続きなど、体制見直しの余地がある部分をお手伝いさせていただく機会も多く、組織の基盤づくりに関与できることに、弁護士としての大きなやりがいを感じています」

続けて、長瀬弁護士が〝エリア特有の問題〟について、次のように教えてくれた。

「〝農業王国〟と称されるように、茨城県は農業が盛んな地域であり、法律相談でも農地に関連する紛争が多く見られます。例えば、遺産の一部が農地に含まれることから、相続時の処分方針を巡って相談を受けるといったケース。こうした事案では農地法の規制が関与しますから、名義変更や譲渡・転用の際、農業委員会の許可や届出が必要となりますし、手続きが煩雑で、膨大な時間を要することも。また、相続件数の増加に加えて、人口減少や高齢化の進行を背景に、農地に限らず地方の不動産が〝負動産〟と化す事例が全国的に広がっています。茨城県内でも、都市部とは異なり、転売や利活用の見込みが乏しい地域の土地・建物については相続人が取得を望まず、相続放棄をする例があります。こうして放置された不動産が空き家化し、地域の安全や衛生などに支障をきたす場合も。そのため最近では、各自治体が相続人調査や対応要請を行うケースが増えており、『相続放棄をしても、何らかの管理責任を残すべき』との議論が生じています。相続放棄した人に、不動産の法的な管理義務は原則ありませんが、相続財産清算人を選任して空き家を処分する必要が生じることもあり、当事務所でも、ここ数年、そのような相談が増加しています」(長瀬弁護士)

弁護士法人長瀬総合法律事務所
写真は、一体感を育むため、職種混成で挑んだチームビルディング・プログラムの一場面。全所員が年初に集い、相互理解と交流を深めている

弁護士として必要な力を見極める 

同事務所では、主に若手弁護士の教育の一環として、他職種の実務を経験し、所内の機能を学ぶ機会を設けている。その一つが、入所1年目の弁護士に一定期間、パラリーガルと同様の業務を経験してもらう取り組みだ。

「将来的に、パラリーガルなどスタッフと連携して業務を進めていくうえで、彼らがどのような業務を担ってくれていて、どのような点で負担を感じるのか、また、どういった指示の出し方が適切かなどを体感的に理解してもらいたいと考え、実施しています。この経験を通じて、実務開始後も円滑な連携ができており、その効果を実感しています」(長瀬弁護士)

また、特定分野別の〝部門制〟を採用し、弁護士・パラリーガルともに特定分野に集中的に取り組むことで、短期間で専門性を高める仕組みも整えている。例えば、企業法務部門に所属する金子弁護士は、会社関係の案件や損害賠償請求事件を主に担当している。

「部門制とはいえ、実際には1人あたり3つ程度の分野を担当しています。担当分野は、月1回のパートナー会議や、半期ごとの個人面談を通じて、各人の希望や適性を把握し、見直しや配転を行っています。部門ごとにノウハウが蓄積されていくため、当該分野の知見が深まり、若手弁護士が早く成長できる体制になっていると思います」(長瀬弁護士)

長瀬弁護士に、「どのような人とともに働きたいか」を伺った。

「実は、金子弁護士は入所からわずか1年半ほどでパートナーになりました。端的に言えば、それだけ彼が優秀だったということです。リサーチ力や分析力、契約書や法的文書の作成力、論理的な構成力といった弁護士として必要な基本能力はもちろん備わっていましたが、彼にはそれ以上のものがありました。責任感の強さ、相手の考えの先を読んで行動できる察知力、優れたコミュニケーション力など、いずれも〝私の想像を超える〟ものでした。また、想定外の問題が生じた際にも、依頼者や相手方、裁判所といった〝他者〟に責任転嫁することなく、〝自らが当事者〟の意識を持って、課題解決に向けた道筋を組み立てていく――彼のそうした力は、まさに私たち弁護士にとって必要不可欠なものといえるでしょう。〝定性的な力〟は見極めが難しいものの、これからも金子弁護士のように、弁護士としての資質が高い人を採用して、一人ひとりをしっかりと育てていきたいと思います」

Editor's Focus!

「設立時、顧客はゼロ。商工会議所などを回って営業活動をした。事務所が順調に回り始める実感が持てたのは2~3年経った頃。立ち上げ間もない頃に入所した大久保潤弁護士には、だいぶ無理を言った」と苦笑する長瀬弁護士。現在、企業法務分野の活動範囲は、東京都、神奈川県、福島県など全国へと広がっている

弁護士法人長瀬総合法律事務所