Vol.12
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PIONEERS

業界ルール策定や法改正にまで関与。ロビー活動を中心に著作権関連業務を遂行する、リーディングカンパニーの弁護士

榊原 美紀

パナソニック株式会社
著作権渉外チーム・チームリーダー
弁護士(日本/アメリカ・カリフォルニア州)

#14

新時代のWork Front 開拓者たち

ロビイストとして活躍するインハウスロイヤー

90年以上の歴史を誇る国内有数の総合電機メーカーとして、また世界中で使用される家電製品のブランドとして広く知られるパナソニック。その中核を担うAudio &Visualに深く関与する著作権分野で、業界ルール策定や法改正まで幅広く活躍するのが、弁護士の榊原美紀氏だ。

「現在、私の仕事は著作権関連の渉外活動が中心になっています。具体的に言うと、不正競争防止法や著作権法を主として、常に審議される法令について、当社や業界の見解を消費者視点も踏まえて伝えるロビー活動です。官庁・国会議員・審議会などへの説明や、ユーザー団体との意見交換など、さまざまな活動を行っており、パナソニックの立場と業界団体の立場を代表する二つのパターンがあります。近年はDRM(デジタル・ライツ・マネジメント)関連の業務が増えて、映画会社・IT企業・家電メーカーによる自主ルール策定にも関与。また、ダビング10のルールなど、民間のルール策定に行政がかかわった例も記憶に新しいところです。今はこれら渉外活動が業務の80%以上を占めていて、そのほかに社内の法律相談に対するコンサルを行っています」

今年7月に法務本部から渉外本部に異動。その理由とは。

「法務本部には、契約書をはじめとした実務機能を担うLESC(リーガルコンサルソリューションセンター)が置かれ、さらに事業ごとの法務担当もいるため、明確に役割分担されています。組織は総勢約280名の体制で、弁護士も知財部門を含むと9名が在籍。弁護士数は国内企業でトップクラスでしょう。私たちは7月まで法務本部渉外チームという属性で、今担当している業務のほかコンプライアンスなどの社内に向けた啓発や啓蒙活動を行っていました。たとえば『こういう新規事業を始めるが法的に問題ないか』という社内の質問からビジネスニーズをくみ取り、行政に要望や意見を具申。法改正がなされた場合には、社内にその内容を啓発していくことになりますので、コンサル・ロビー活動・社内啓蒙の三つはリンクします。そのため一つのチームでトータルに業務を行うべきと考えていましたが、渉外業務のボリュームが大きくなり、渉外本部に異動したという経緯です。現在のチームは弁護士2名と技術者1名の3名。どうしても技術知識をサポートしてくれるスタッフが欲しかったので社内公募でエンジニアにも参加してもらいました」

パナソニックならではという特徴は、どんな点にあるのだろうか。

「当社ならではのグローバルさがあります。全世界同時に新製品がデビューするケースでは、法検討も世界レベル。YouTube対応テレビの発売にあたっては日米欧各国の法律を比較しましたし、グローバル展開に応じたリーガルスタッフのネットワークも充実しています。10月にヨーロッパで会議を開きますが、その席では日欧露のリーガルスタッフが一堂に会し、各国の法律に照らしながらパナソニックとしての統一的ロビー活動のあり方を検討する予定です。ここまでの活動は当社ならではと思います」

榊原氏がインハウスロイヤーを志しパナソニックに入社した理由は。

「法律事務所時代に顧問として、週1日企業に常駐し、企業内部に入らないと知り得ない業務に触れました。その後、留学したアメリカでは企業法務・法律事務所・議員(政治家)スタッフなど、弁護士に複数のフィールドがあることを知り『日本の未来もこうなるだろう』と感じます。それらの背景からインハウスも選択肢になりました。好きなエンターテインメントの世界に近づきたいと思っていたため、ディズニーなどハリウッドの映画会社も魅力的でしたが、重要な意思決定が日本でなされることから、日本企業を第一条件に。ハード(製品)から法律とエンターテインメントにかかわろうと決めたのです」

インハウスロイヤーの仕事を通じて得られたもの。今後の展望

「ロビイングを通じて法の改正にかかわると、司法の世界は個別事件の解決であったことに対し、その影響の大きさを実感します。私たちは業界のリーディングカンパニーとして『一企業の利益で判断することは許されない』という指針のもとロビー活動を行っています。見識の高いトップに声が届く立場で仕事をし、経営者自らも積極的に『主張すべきは主張する』スタンスでいてくれるので、『経営者自身が問題を理解し、自分の言葉で語れば社会のルールも改善できる』ことが分かりました。世の中全体の利益に寄与しているという思いが、やりがいであると同時に、将来はジェネラルカウンシルのような立場で経営に参画できればと思っています。法律を熟知しているだけでは変革は難しいので、日本にも経営ポストに就く法律の専門家が増えてほしいです」

最後に、若い弁護士のみなさんにメッセージをお願いします。

「法律事務所での勤務を2・3年経験してから、企業法務へ移行するステップが良いと思います。法律事務所とインハウスの両方を経験すれば比較の物差しを持ったうえで、進路を選択することができるようになります。インハウスを続けるなら、外部事務所を上手に使える弁護士として活躍可能だと思いますし、法律事務所に戻っても、クライアントの気持ちが分かる弁護士はニーズが高いはずです。個人的には、企業内弁護士を目指すのであれば、法律英語ができると評価が高いと思います」