Vol.9
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PIONEERS

巨人「マイクロソフト」が、IT業界で果たす責任のために必要とした企業法務のかたち。

伊藤 ゆみ子

マイクロソフト株式会社
執行役 法務・政策企画統括本部長
弁護士(41期)

#11

新時代のWork Front 開拓者たち

企業法務と政策企画を同時に行う組織。その誕生の背景にあったもの

IT産業を代表する企業の一つであるマイクロソフト。その法務部員はどのような仕事にかかわるのか。部門責任者であり執行役も務める伊藤 ゆみ子氏にインタビューした。

「組織の名称は〈法務・政策企画統括本部〉。法務に加えて政策企画(政策渉外)業務を行うことが特長です。政策企画のミッションはIT産業の発展のための政策上の環境整備にビジネスの立場から貢献すること。業界リーダー企業のひとつとして、産業全体の発展に寄与すべきであるという考えのもと、政策も多くは法律に落とし込まれていくことから、法務と政策企画を一体とした組織にしたと理解しています。

社会貢献も重要なミッションで、特に〈ITスキルトレーニング〉を通じての女性の就労支援に注力していますが、一企業にできることには限界があるのでノウハウとネットワークを持ったNPO法人と連携しています。社会貢献に限らず、会社として投下することのできるリソースで最大限の効果を出す戦略の立案と実行が求められています」

法務業務の特徴とは。

「法務業務も社会や技術の変化に伴い新しい分野への対応が求められます。伝統的にはソフトウェアのライセンスに伴う法務が中心だったわけですが、会社としてはクラウドコンピューティング時代を見据えた開発投資やビジネス戦略を推進しており、そういった中で新しい法律問題が出てくるからです。弁護士にとって新しい分野に次々と関われることは刺激的なことだと思います。

法務部員は政策企画業務の一端も担っています。知的財産、競争法など法律家のバリューが出る分野も多いからです。経団連や業界団体の委員会での活動など、当社の弁護士には政策企画業務に関連した社外の活動にもできるだけ積極的に取り組んでもらっています」

内外の仕事でメンバーが経験を積む一方、伊藤氏自身も多忙を極める。

「政策企画に関連した取材対応や社会貢献のプレス発表など、会社のスポークスパーソンとしての仕事が増えていますね。社内的には、経営会議をはじめ部門を代表して出席する会議も多い。全社的コンプライアンスの取り組み、法務業務に関連した部門間の調整、あるいは会社としての女性人材の活用推進プロジェクトといったようなものもあります。部門長として予算策定・管理、目標管理も行います。仕事量は多いですが、プライオリティは『メンバーが成長を実感しながら最大限に力を発揮できる環境づくり』だと捉えていますので、スタッフミーティングや個別面談を通じてのコミュニケーションに努めています」

グローバル企業の一員として本社との連携はどう行っているのか。また世界的に取り組んでいる事案はあるのだろうか。

「ソフトウェアのライセンス条件などグローバルでできるだけ統一的に取り扱われるべき分野はあります。そういった事項は本社主導となりますが、多くは現地法人のやり方を尊重してくれます。マイクロソフトはIT業界では巨人と言われますが、実はまだまだ若い会社で社風はリベラルなのです。グローバルな大きな課題の一つは違法コピー問題です。これには全世界的に取り組んでいます。日本は違法コピー率という点では優等生ですが、マーケットが大きいため違法コピーの絶対額は大きい。外部団体と連携した対策、社会全体の理解を高める活動をしています」

法律家として成長、ビジネスリーダーの素養も磨くインハウスロイヤー

チームメンバーのこれからに何を期待するか。また、自身にはどんな目標があるのか。

「個人的には、グローバルな戦略策定に関与、貢献できる法律家になりたいと思っています。スタッフには、当社だからできることにチャレンジしてほしい、そしてビジネスを学び会社のリーダーの一人となることを目指してほしいと思います。米国ではロイヤーが経営者になる例も多く、日本でも法律のバックグランドを持つビジネスリーダーが出てくることを期待しています」

外資系企業と日本企業のインハウスロイヤーに違いはあるのだろうか。

「これまでは、外資系が弁護士の採用にはより積極的であった。一方、日本企業は資格にとらわれずに優れた人材を多く育ててきていて、そういった方が日本の企業内法務を背負ってきた。それでも日本企業も弁護士の採用を増やしていくでしょう。伝統的な弁護士像にとらわれなければ、弁護士の可能性はアンリミテッドだといっても過言ではない。

インハウスロイヤーを志す方にアドバイスすると、外資系企業ではロイヤーである限りはプロとしての一定以上のレベルを期待する傾向がある、極端な話弁護士としての経験が1年であろうと10年であろうと期待されるものには変わりがないというモデルです。それは、経験の少ない弁護士にとって、やりがいであると同時にプレッシャーにもなると思います。これに対し、日本の企業では入社時点で弁護士であることを特別視しない一方、中でしっかり育てていくというモデルが主流だと思います。それから実感として、外資系であれ日本企業であれ、インハウスロイヤーにとって裁判実務を知っていることは大いに役立ちます。裁判所の立場にたった証拠評価、利益考量をイメージできるとさまざまな局面でのエッジのきいた判断ができるからです。こういったことも知っておいてほしいですね」