Vol.19
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これまで花王法務部は2回の「要員倍増計画」を実施し、体制を強化してきた。新卒・キャリア・法科大学院卒・司法修習終了者に門戸を開き、その時々のニーズにあった優秀な人材を積極的に採用している。ちなみに法務スタッフが掲げているのはThe Kao Wayという同社の企業理念を表したパネル。この理念のもとに策定された方針(The Kao Group Legal Way)によって、法務部のグローバル戦略も進められている。

これまで花王法務部は2回の「要員倍増計画」を実施し、体制を強化してきた。新卒・キャリア・法科大学院卒・司法修習終了者に門戸を開き、その時々のニーズにあった優秀な人材を積極的に採用している。ちなみに法務スタッフが掲げているのはThe Kao Wayという同社の企業理念を表したパネル。この理念のもとに策定された方針(The Kao Group Legal Way)によって、法務部のグローバル戦略も進められている。

THE LEGAL DEPARTMENT

#14

花王株式会社 法務・コンプライアンス部門 法務部

20年先の社員の成長を見据えた体系的なカリキュラムで人材を育成する、代表的総合消費財メーカーの法務部

二つのグループに分けて行う、グローバル企業の法務業務

国内シェアナンバーワンを誇る洗剤、シャンプー・リンスをはじめとするトイレタリー製品で知られる花王は、化粧品・機能性飲料の開発・販売も行う日本の代表的な総合消費財メーカー、そのほか原料素材を業界向けに供給するケミカルメーカーでもある。その法務部にはどのような特徴があり、いかに業務を行っているのだろうか。部長の杉山忠昭氏に伺った。

「花王は国内・海外の売上比率が7対3で、急成長中の海外市場に開拓の余地が多くあるため、海外進出を積極的に進めています。その一環として、法務部もグローバルワンリーガルを掲げ、海外グループ会社との連携を強化。アメリカ・イギリス・ドイツ・中国・台湾などにも法務部を置き、これらの拠点がヘッドクオーターである日本とより緊密なリレーションを取るようになりました。グローバルに法務スタッフは約50名いて、欧米・中国の部員はほとんど弁護士資格を有しています。日本は花王本社に法務部員20名が在籍し、なかに日本の弁護士資格を持つ者とアメリカの弁護士資格を持つ者が4名在籍。そのほか花王カスタマーマーケティング(販売会社)に5名、6年前に花王グループに加わったカネボウ化粧品に4名の法務部員など、花王グループの国内の法務部員の陣容は総勢31名となっています。花王法務部が行う業務の一部を紹介すると、まず洗剤・せっけん・シャンプーなどのコンシューマープロダクツに関して、原材料の購入契約や販売促進に関する契約などを検討し、また事業活動に関し独禁法などの関連法規に違反していないかの確認があります。当社では植物油脂から製造した原料素材やコピー機用のトナ―なども外販しており、このケミカル事業は海外事業の比率が高いため、外国企業とのグローバルな売買契約や、技術ライセンスなど高度な交渉や検討を多数行っています。これらの業務を事業・SCM※1グループ約10名が遂行。事業部や購買・生産・研究・品質保証の機能部門ごとに担当を決め、連携して業務を進めています。もう一つ機能・情報セキュリティグループと呼ぶチームがあり、6名が株主総会はじめ会社法にかかわる業務、経理・人事などコーポレート機能部門に対する法的支援、内部統制のサポート、機密情報や個人情報の全社的な管理を行っています。そのほかコンプライアンス推進も法務部の所管。さらに内外グループ各社への法的サポートも行っています」

花王株式会社 法務・コンプライアンス部門 法務部
印象的な案件として、花王グループにカネボウ化粧品が加入する際の交渉をあげた杉山氏。それまでにオークション形式による近代的な買収を幾つも経験した集大成が、2006年のM&Aだったという

業務ローテーションを含めた体系立った制度で総合力を高める

「これら広範な業務を遂行するにあたって、部内担当は2・3年でローテーションを行い、広範な仕事を経験させています。また入社した年から20年目までの体系的なカリキュラムによって、法務部員・ビジネスパーソンとしての総合力を高めるようにしています。入社3年目までは若手勉強会。入社1・2年目は基礎を教わり、3年目は指導する側にまわる仕組みです。経営法友会などの外部研修にも積極的に参加してもらいます。その後、5年目くらいまでにできるだけ他部署に異動。会社のビジネスを知り、法務業務を外から見ることが重要だからです。8年目以降、法務と会社の概要をつかんだところで米国留学。留学は2年で、最初の1年はロースクールに通ってもらいますが、後の1年は別のロースクールに行く、法律事務所で実務を経験する、どちらでも構いません。帰国すると入社10年目くらい。そのタイミングで人事主催のリーダー研修コースがあります。13年目には中国などへの短期留学(6カ月)を用意。20年目は上級ビジネスリーダー研修で、会社の幹部養成コースに移行します。これら体系的なカリキュラムのほか定常的に行う研修があり、先輩の実務経験を伝える部長塾(年2回)、部内の各グループが交流する勉強会などを実施しています」

法務部のモットーは、経営と現場をよく知ること

日常業務を行う上で、法務部が指針とするのは、どんな点だろうか。

「経営と現場をよく知ることを部の指針として、常に部員に意識づけています。また3年に1度の社内アンケート(法務部顧客満足度調査)で、指針が仕事に反映されているか検証しています。法務部は、処理した案件をコンピューターの『相談記録システム』で管理していますが、そのなかから400人程度のクライアントを抽出して、アンケートを行います。『みなさんのご要望をよく聞いていたか、アドバイスは適切かつ建設的だったか』などの設問に答えてもらいます。内容を分析した私のコメントを添付し、フィードバック。アンケートは15年以上前から実施しています。また相談記録自体も、部員の知識の共有、サービスのレベルアップに活用されています。そのほか1年間の仕事を振り返り、ベストパーソンを表彰する仕組みもあり、各種の方法で業務の質とモチベーションを向上させ、会社に貢献できるよう努めています」

そんな花王法務部で働く魅力はどんなところにあるのだろうか。

「私たちは一般的なメーカーより、広範な仕事をカバーしていると感じています。M&Aなどでも中心的な役割を担いますから、重要案件をはじめいろいろな仕事を経験できる面白みがあります。また今でも成長期にある企業の勢いも魅力だと思います。会社はBRICs※2など新興国への進出を急いでおり、法務組織もさらに大きなグローバルワンリーガル体制になるでしょう。責任のあるポジションを担える法務人材を国内外に育てることが急務です。当然ながら全体のさらなるボトムアップも必要で、国内外の体制整備を急いで進め、グローバルかつ円滑に法務を果たしていきたいと考えています」

 

※1 事業 SCM(サプライチェーンマネジメント)
※2 BRICs Brazil、Russia、India、Chinaの頭文字。経済発展が著しいブラジル・ロシア・インド・中国の4カ国