Vol.22
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@niftyのサービス開発を担当した後、「特許をやりたい」と異動してきたメンバーも在籍。法務部では権利取得の難度が高いビジネスモデル特許を年間数十件申請し、約半数の権利を取得している

@niftyのサービス開発を担当した後、「特許をやりたい」と異動してきたメンバーも在籍。法務部では権利取得の難度が高いビジネスモデル特許を年間数十件申請し、約半数の権利を取得している

THE LEGAL DEPARTMENT

#17

ニフティ株式会社 法務部

インターネットサービス事業の先駆者として、“業界スタンダード”の数々を作り上げてきた法務部

フロンティアとして、法制度策定に関わってきた歴史

今年、創立25周年となるニフティ株式会社は、設立当初のパソコン通信※1サービスから、いち早く事業軸をインターネットに移行した。同社法務部にはどのような歴史と特徴があるのか。丸橋透法務部長に取材した。

「ニフティはパソコン通信の時代からビジネスはもちろん、適用されるべき法律やルールの前例がない環境下で事業を進めてきました。つまり当社法務部は多数の〝日本初の事案〞に対処しています。『ニフティサーブ・現代思想フォーラム事件』※2は〝電子掲示板上の書き込みが名誉毀損(きそん)となるか〞〝管理者に削除すべき管理責任があるか〞を問われた日本初の裁判。二審で勝訴しました。また『ニフティサーブ・本と雑誌フォーラム事件』※3は、〝名誉毀損を受けた〞とする会員から、発言者の住所・氏名の開示を求められた裁判で、一審・二審ともに私たちの主張が受け入れられました。被害者の救済の必要性と被害を与えたとされるユーザーの表現の自由の双方をバランスよく尊重すべきとし、それが認められたのです。これらの判例はIT社会における情報発信の基本ルール『プロバイダ責任制限法』制定に大きな影響を与えています。SPAMメール仮処分、ドメインネームの裁判や仲裁にも早期より関与しています。このようにフロンティア企業として業界内の法的整備に貢献してきたこと、またサイバー刑事事件などで警察からの照会・捜査への協力実績も多数あることから、業界内外から注目され、省庁の審議会はじめOECD(経済協力開発機構)やG8など国際会議にも参加しています。先日、プロバイダ事業者が一斉に実施した『児童ポルノブロッキング』に関しても、3年前の警察庁の総合セキュリティー対策会議での議論の当初から参加。早期実現を希望するユニセフをはじめとした団体との話し合いや、業界内の協議で中心的役割を果たしました」

 

※ 1 世界中のネットワークを結ぶインターネットに対し、特定のサーバーとそのメンバー間だけを対象としている。1980年代後半から1990年代前半までが全盛期で、インターネットの普及にともない衰退。現在はほとんどのサービスが終了しているが、パソコン通信上のネットコミュニティの法的性質は、現在全盛のSNSと同じである。
※ 2 ユーザーによる名誉毀損は一部認められたが、ニフティの管理責任は否定された
※ 3 ユーザーの不法行為は認められず、ニフティには情報開示の責任なしとされた。

日常の法務業務に加え、渉外活動、訴訟までも社内で遂行する法務部

「現在、法務部には9名が在籍しています。ビジネスモデルを中心とした特許関連業務の担当メンバーが3名、その他の業務担当が1名いて法務専任は5名。日常の法務業務では契約・社内ルール・コンプライアンス関連が全体の40〜50%を占めていて、その特徴は約款や社内ルール作りが多いことです。プロバイダはユーザーと契約書を締結するかわりにサービス一つ一つに約款を作成します。同時に社内ルール作りも必要なので、当該業務はかなりのボリュームになるのです。またプロバイダ責任分野の対応も相応にあります。ユーザーがサービスを使って他者の権利を侵害し、被害を受けた人から削除請求があったとき、対応部門が機械的に処理できるのは、半分から三分の二。例えば〝グラビアアイドルのビデオが無断コピーされ投稿されている〞というクレームは、著作権を一件ごとに確認する必要があり、法務部が慎重に対応します。コンプライアンスの社内周知・啓発に関しては、最近、業務を人材開発部門に移管しましたが、同時に責任者を法務部から送り出しました。プロバイダ責任対応を含め紛争・訴訟などが全体の30〜40%、ロビー活動・渉外などが10〜20%というバランスで、渉外分野は部長の私が主に担当しています。プロバイダ責任制限に関する訴訟はインハウスロイヤーを主任弁護人に立てており、幅広い法務業務のほとんどが社内で遂行されています。インハウスロイヤーが訴訟代理人になることで、スピード感ある対応と社内ノウハウの蓄積を意図しています」

ニフティ株式会社 法務部
2009年入社の荒木弁護士(写真左)と丸橋部長。「ニフティはユーザーや省庁との関係において常に先頭を走り、業界内外から頼りにされてきました。業界のモデル約款やガイドラインをつくるとき『ニフティはどうしている?』から議論が始まる。それが私たちの“やりがい”になっています」(丸橋部長)

OJTと、親会社を含めた大きなジョブローテーションで人材を育成

「法務部では法的素養があるキャリア採用者にインターネットや通信に関わる知識も一から勉強してもらいます。中には法務業務を100%遂行しながら他部署でコンテンツ制作に関わるなど社内制度を利用してビジネスに直接関わる者もいます。また、事業の仕組みを熟知したスタッフを社内異動で迎え、OJTと外部研修、さらに富士通(親会社)への出向でスキルアップを図っています。外部研修には知的財産、最先端ソフトウエアの法律セミナーなどがあり、2年間の富士通出向ではM&Aを含むメーカーの法務が経験できます。当社では国内案件が主ですが、メーカーでは国際契約なども担当できるため、より幅広いスキル習得が可能です。また司法修習後すぐ当社に来たインハウスロイヤーについては、2年間、顧問法律事務所への出向を予定しています。法務部の分室的な業務をしながら、法律事務所の仕事を経験し、視野を広げてほしいという狙いです。今年度からニフティ側も親会社法務部からの出向者を受け入れますが、このように送る・受け入れる人材交流をさらに積極的に行い、組織的に法務力の強化を継続していきたいと考えています。そして新しい法律分野の訴訟にチャレンジし、ルール作りや、いち早いプライバシーマーク取得などによって、業界をリードしてきた会社として、これからも内外の指針となり、頼りにされる存在であり続けたいと思います」

インハウスロイヤーの今を紹介

荒木 泉子氏/弁護士(新61期)

入社3年目の現在は契約書の作成・チェック、情報の削除請求・発信者情報開示請求の対応などをしています。プロバイダ責任制限法の分野で訴訟に発展したときは主任弁護人を務めます。そのほかリスク管理委員会の事務局、新入社員研修などの法的レクチャー、商標管理も担当しています。商標は未経験でしたが、新しいことへの挑戦は魅力的。さらに一般的な企業法務では関わる機会が少なくなりがちな憲法上の問題(プライバシー・表現の自由など)について、熟考できる場面も多いのが、当社法務部の魅力だと感じています。