「法務部は専門職集団という見られ方もあって、組織文化的に〝閉じた〞状態になりやすい。メンバーが外に開いたマインドを維持できるような制度設計には、常に心を砕いてきました」と、中村豊法務部長が語るとおり、同社法務部はユニークかつ大胆な取り組みを実行している。
一つは、大手法律事務所との「人材交流」。同社の法務部員は総勢38名だが、社員以外に3名の弁護士がいる。うち2名は法律事務所からの出向で、ラインに入って仕事をしているのだ。
「法律事務所の業務は、法律的にどこまで完成度を高めるかという意味での厳しさが違う。そんな意識を持った弁護士と切磋琢磨することで、メンバーにより法的感度を研ぎ澄ましてもらいたいというのが狙いです」
「交換」で、同社からも若手を事務所に送り、経験を積ませる。「法律事務所側からすると、クライアントの意思決定の過程が見えにくい。双方にとってメリットは大きい」取り組みである。
社内ローテーションも活発だ。
「部員の3分の1ほどを、意識的に事業部門から採っています。期待するのは、法務の経験を持ち帰り、それぞれの部門のリーガルマインドを高めるアンカー役となること。『法務部道場論』と名付けているのですが、人材を育て会社全体のリーガルマインドを向上させるのも、我々の重要なミッションなのです」
法務部の組織は、「共通系・法人営業部門」「ネットワーク・金融部門」など、5グループから構成されている。
「実は、人事、総務などにかかわる共通系と法人営業が一緒である必然性は、ほとんどありません。グルーピングのコンセプトは、各ラインの負荷、面白さが常に均等になること。だからグループの枠組みそのものを、結構変えています。わざわざそんなことをするのは、いつも新鮮な気持ちで仕事に向かってほしい、そして全員にゼネラリストになってもらいたいから」