同社法務部の業務においては、グローバル案件が当たり前にあり、英文契約書にかかわる頻度も高い。
「とはいえ、英文契約書がまず読めて、ある程度書ければ大丈夫です。聞く・話すはプラスアルファ」と、廣田氏。なぜなら同社では、語学力を鍛えるための制度のひとつとして、セブ島語学留学があるからだ。
「セブ島で8週間、マンツーマンで英語力を鍛えるもので、参加メンバーの一人は研修前780点だったTOEICが915点まで上がりました。それなりに効果が認められるので、法務部としても年に2名ずつ継続して参加させる予定です」(廣田氏)
ほか、LL・M・留学も制度として設けている。これまで4名が米国などのロースクールへ留学した。英語については、興味・関心さえあれば、厚く支援される環境であるといえそうだ。
また法務面では、「特に若手にとっては、学びの機会が潤沢に用意されている」と、廣田氏。
「外部セミナーへの自発的な参加を推奨していますし、若手を中心とした部内プロジェクトもあります。民法改正などのタイミングでメンバーを固定し、1年がかりで研究を実施。その成果を冊子にまとめて発表するというものです。これまで仲裁やM&A手続、ライセンス契約などのテーマで、立派な冊子を作成しました」
法務1部責任者の鈴木利直氏に、同社でのやりがいをうかがった。
「私は中途採用で入社しました。結論からいえば、やはり『京セラフィロソフィ』にある〝人間として何が正しいか〞を物事の判断基準に置くことがすべての根幹にあり、全員が共通してそれに向かえるということでしょうか。当社に入社して間もなかった頃、欧州で訴訟を担当したことがありました。当社が事業撤退したために製品供給が止まり、欧州の代理店から多額の損害賠償請求訴訟を起こされたのです。1審、2審と勝訴し、訴訟費用も代理店が負担という判決となりました。しかし、その時点で相手方から和解の申し入れが届き、『最高裁まで持ち込まない代わりに訴訟費用は京セラで持ってほしい』というのです。私としては当然、和解はせず最高裁までと考えましたが、上司に相談したところ、『和解を受けろ』と。『そもそもの原因は当社が製品供給を止めたことであり、理不尽な訴訟ではあったが、代理店に迷惑をかけたことには違いない。相手が和解を申し入れているのに、さらに叩くのは京セラの精神ではない』ということでした。リーガル的に見れば当然の判断も、京セラはそうした姿勢をとるのかと衝撃を受けました。その考え方は素晴らしいし、好きだと感じました。振り返ると、その時の経験により、さらに仕事に誇りが持てるように。この会社で働けて、よかったと思える仕事でした」
同社では、「2020年度の連結売上高2兆円。その先に3兆円」という目標を掲げている。
「その目標に向かう中で、M&Aも活発化していますし、戦略法務的な動きの比率も増しています。これに対応していくには、法務部の陣容拡大は必至。向こう5年以内に現在の37名から60名体制にしていきたいと考えています。しかし、ただ人員を増やすのではなく、メンバー一人ひとりが人として成長していくための場を用意すること、そこに一人ひとりが積極的にコミットしていこうという意欲が持てること、を大事にしていきたい。法務の行きつくところは〝人〞です。すなわち個々の成長が、組織の成長となるので、一人ひとりを大事に成長させられる組織、組織力の強化を目指していきたいと考えます」(廣田氏)