PMIは加熱式たばこ「IQОS」のグローバル展開に向けて、2014年11月に、世界に先駆けて日本で先行販売を開始。16年4月には日本で全国販売開始、以来、紙巻たばこから〝煙の出ない(スモークフリー)製品〞への切り替えによる加熱式たばこ市場の拡大をけん引してきたのがPMJだ。当時の様子について、法務部カウンセルの神内健次氏にうかがった。
「加熱式たばこという新しい製品を日本に輸入し、流通させる算段や、その際国内法は何が適用され、それらの運用実務はどうなっているのかなど、まったくわからない状態からのスタートでした。まず、外部の弁護士の協力を得ながら関連する法律を徹底的に調べる一方で、ユーザーガイド作成のために参考となるものを求めて家電量販店に駆け込んだという話も聞いています。当社の加熱式たばこシステムは、①たばこを加熱する電化製品であるデバイスと、②加熱により消費されるたばこ製品であるコンシューマブル(消費財)の2つの製品を組み合わせて使用するものになっていますが、日本での販売開始からしばらくの間、コンシューマブルは、たばこ事業法上「パイプたばこ」として整理されていました。一方、デバイスについては基本的に、同法の適用のない電化製品として整理されています。その後、当社の関係部門による関係各所への働きかけや対話を重ねた末、今般たばこ事業法施行規則が改正され、『加熱式たばこ』というカテゴリーが法令の中に組み込まれました。そのように、〝VUCAな世界〞に切り込み、開拓していく面白さが、今の当社にはあると思います」
神内氏は、LINEとの業務提携に法務部の主担当として関与。
「同プロジェクトはLINEの企業向けアプリを活用し、〝IQОSオーナー〞向けの新サービスを展開するもの。これも外部の弁護士の協力を得ながら、LINEと提携することでどんなサービスが展開できるのか、どんなビジネスチャンスが生まれるのかなどを当社のビジネス部門をはじめ、LINEのプロジェクトチームとも議論し、協働してかたちにしました。ビジネスと密に連携して、様々なアイデアを契約文書に落とし込んでいく作業はとても楽しかったですね。一方で非常にタイムセンシティブな案件だったので、〝突き詰めていく面白さ〞と、スピード感とのバランスに苦心しました」
そのように、現在の法務部の業務は、昔ながらの契約書レビューや社内の法的相談にとどまらない。
「当社では今、急速なビジネスの変革に合わせ、〝プロジェクトベースの組織〞に変わろうとしています。各プロジェクトに各部署から人員がノミネートされてチームで動く形式です。法務メンバーもそれに組み込まれるわけですが、一方で従前のルーティン作業もあります。そちらにかける時間をなるべく短縮できるように契約書のテンプレートを完備するなどして、よりプロジェクトにシフトできるよう工夫しています」(神内氏)