Vol.72
HOME法務最前線株式会社モリサワ 管理部法務室
  • ご意見・ご感想はこちら
  • 無料 転職支援サービスに今すぐ申し込む
  • 無料メンバー登録 将来のために情報収集をスタート
  • 弁護士や法務の転職・求人情報なら弁護士転職.jp

同社管理部法務室のメンバー。左から、係長・藤井浩太氏(61期)、係長・中野文彦氏(65期)、課長・中村壽志氏。藤井氏は、主に一般民事を取り扱う法律事務所より、2016年に転職。中野氏は、13年に新卒で入社。ほか法務室には東京本社に2名所属

同社管理部法務室のメンバー。左から、係長・藤井浩太氏(61期)、係長・中野文彦氏(65期)、課長・中村壽志氏。藤井氏は、主に一般民事を取り扱う法律事務所より、2016年に転職。中野氏は、13年に新卒で入社。ほか法務室には東京本社に2名所属

THE LEGAL DEPARTMENT

#103

株式会社モリサワ 管理部 法務室

文字文化を書体で支える事業展開を、プロアクティブにサポートする法務

進化するビジネスの推進役として

株式会社モリサワ 管理部法務室
同ショールームには、文字の見やすさや美しさを追求し、一つひとつの文字に同社独自のクリエイティビティが注ぎ込まれていることを示した資料なども数多く展示されている

Webサイト、出版物、広告、電子書籍、ビジネス文書、標識などに使用される“文字(書体/デジタルフォント)”開発・販売のリーディングカンパニー、モリサワ。大正13年の創業以来、見やすく読みやすい“書体”づくりを追求し続け、パソコンの普及やデジタルメディアが台頭して以降はIT環境に適応した品質の“デジタルフォント”開発に取り組んできた。法務室課長の中村壽志氏に、同社事業についてうかがった。

「当社の事業は、大きく3つあります。1つ目はフォント事業です。自社単独はもちろん、時に外部デザイナーと協業しながら新しいフォントを開発し、また国内外のフォントメーカーとも契約して、1500種以上の多様なフォントを様々な形式で法人・個人に提供するほか、ゲームソフト、スマホアプリ、デジタル家電、医療、産業機器へのフォントの組み込みにも対応しています。2つ目はソフトウェア事業。電子書籍を含む様々なデジタルメディアを介し、多言語書体を用いて情報を配信するサービス、学習参考書や問題集などで求められる複雑な組版が可能なソフトウェアの提供です。3つ目はソリューション事業で、印刷物制作に使用するDTPシステム、CTPシステム、オンデマンド印刷機などの販売・サポートです」

多言語対応や、高齢者、障がい者など誰にとっても見やすいユニバーサルフォントの開発なども含め、“文字”をベースにしながら、時代に応じた社会環境の変化に呼応し、様々な新規事業にも乗り出している。しかし、そうした同社法務室の歴史は意外にも浅く、2011年の設置である。

「それまでは各部署の担当者が個々に顧問弁護士の監修を受けながら契約書の作成などを行っていましたが、それには時間と手間がかかるうえ、会社としてノウハウが蓄積されないといった問題がありました。契約業務に一元的に対応できる専門部署が求められ、また法令順守や知的財産保護の意識が高まり、新規事業や海外企業との業務提携が開始されたことなどを背景に、現場と共に、ビジネスに直結する法的な問題に迅速に対応し、さらにはビジネスの推進役となることを強く求められ、法務室が設置されました」(中村氏)

ビジネス現場との一体感が大切

法務室は、大阪と東京の2カ所に配置されている。業務分担は、大阪が全社的な契約書の作成・監修および法務相談、海外グループ企業の法務管理やグローバルWebサイトの規約作成といった全般業務を担当。海外グループ企業の法務管理とは、同社が設立した台湾、韓国、アメリカのグループ企業の法務的なマネジメントだ。各社に法務部門がないため、大阪の法務室が担当する必要がある。しかし韓国語、中国語に明るいメンバーは現状おらず、例えば当該国で公開するWebサイトの利用規約やプライバシーポリシーについては、外部の法律事務所に監修を依頼しているという。

東京はフォントOEMライセンスビジネスの案件審査、契約書作成・監修と知的財産保護の活動や違法コピー対策などに専任している。なお東京の法務室メンバーは各々の分野のプロであるため、例えば、フォントOEM事業の契約業務についてもほぼ担当者に一任しており、大阪では最終チェックのみを行っているそうだ。

ここに、主に一般民事を扱う法律事務所から転職してきたのが藤井浩太氏。同社での仕事のやりがいと難しさを教えてくれた。

「私は、電子書籍や組版などのソフトウェア開発事業に関する法務を担当することが多く、担当した製品が実際にリリースされると、嬉しく思います。また、当社は新規事業の立ち上げにも積極的ですが、事業展開に必要な規約などの契約書類の策定を任せてもらえることについても、やりがいを感じます。もちろん、難しさを感じることもあります。特に悩むのが、法的な厳格さと円滑なビジネス推進とのバランスです。例えば規約や契約書の監修に際して、リスクヘッジの観点を強調しすぎると、時として事業スピードを減殺することにもなりかねません。この点は試行錯誤しつつ、適切なバランスを追求していくよりほかなく、永遠の課題と捉えています」

また、新卒で入社し、“法務室の土台づくり”の一端を担ってきた中野文彦氏が、こんな話を聞かせてくれた。

「法務室の業務に直結するものではありませんが、情報セキュリティに関するインシデント事故が起きた場合に対策を講じる“M-CSIRT(エムシーサート)”という社内プロジェクトチームに参画しました。チームメンバーは部門の垣根を越えた混合編成です。チームの目標として、事故対応だけでなく、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の構築を掲げていたため、知識を増やす目的で情報セキュリティマネジメント試験を受けて資格を取得。M-CSIRTメンバーと共に、わかりやすく、業務効率を損なわず、かつ情報セキュリティ上のリスクを回避できるバランスを考えながら、社内規定・ガイドラインなどを作成しました。そのように新たな会社の体制の構築に最初から携われたこと、社内の他部署のメンバーと協働できたことは、貴重かつ有意義な経験でした」

同社法務室が業務遂行するにあたり勘案する法律は幅広い。著作権法、下請法、特定商取引法、景品表示法、M&Aに絡む会社法、個人情報保護法、情報セキュリティに関連する法律などだ。

中村氏は、「確かにそうした法律知識は当然必要ですが、それ以上に大事なのは、社内外とのコミュニケーション力、すなわち相手の要望・意図を正確に聴取し、納得してもらえるよう丁寧に説明する力、またリスクジャッジに留まらず、次善策などを積極的に提案する力、そして自社のビジネスの最前線に携わっているという当事者意識を持ち続けることでしょう」と語る。

株式会社モリサワ 管理部法務室
本社内にある、最新製品・機器、文字や書物の歴史紹介・コレクションを展示したショールーム(モリサワスクエア)

経営や営業現場へ提案する法務室に!

同社事業のグローバル化に伴い、法務室では英文による契約書が増加傾向だ。英語で行われる打ち合わせに同行する機会も増えてきた。

「海外の法律事務所や顧客とコミュニケーションをとる際、特に英会話の重要性を感じています」と、中野氏。同社ではそうした社員のために、英会話レッスンの費用補助がある。英語だけでなく、各種ビジネススキルを高めるためのe-ラーニング受講も推奨している。

「法律関連の外部セミナーや勉強会への参加も法務室として推奨しており、そのための時間の確保、業務配分にも配慮しています。法務室のメンバーには、あらゆる方面にアンテナを張って知識・情報を常にアップデートし、自身のスキル向上を図り、業務に役立てていってくれることを願っています」(中村氏)

実際に藤井氏も、そうした教育研修制度を利用してスキルアップを図りながら、前職経験も生かし、業務に取り組んでいる。

「私はいわゆる“町弁”出身で、企業法務に関与した経験は多くありませんでした。そういうこともあり、入社当初は『やれるかな?』と不安に思ったことも。しかし、業務に就いて感じたのは、前職で培った法的思考力や起案力などは企業法務でも十分通用するということ。またここでは、課長をはじめとする法務室のメンバーと話し合い、相談し合いながら業務を進めることができています。前職では一人で仕事をすることが多かったので、それは心強い。さらに、現在会社補助のもとオンライン英会話を受講していますが、こうした教育研修制度の充実も、当社でポジティブに働けるモチベーションとなっています」(藤井氏)

最後に、法務室の展望について、中村・中野両氏にうかがった。

「法務として日々の業務を通じ、“不文律的なものを明確化したい”という思いがあります。例えば新規ビジネスを遂行する場合、誰の判断で何をどこまで行うことができるのか――といった職務分掌、職務権限の規程など、詳細・明確に文書で規定されていないものがまだまだあります。社会環境の変化に伴い、私たちの事業・組織も変容していくのは間違いなく、その時に基本となる規定類を整えておくことが、ミッションとして法務室に課せられていると考えます。法的な見地を踏まえ、経営や現場に対してビジネスを広げ、推し進めるための提案が行える、プロアクティブな法務室を目指していきたいと思います」

株式会社モリサワ 管理部法務室
中野氏は、社内の登山部とフットサル部に所属。社内のサークル活動に参加することで、他部署のメンバーとの交流機会が増え、オン・オフの充実が図れるという