Vol.75
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法務監査室室長、草場亮典氏。2003年4月、株式会社リコー入社、システム専業の営業を4年経験したのち、本社法務部に異動。15年4月、同社退職後、翌月よりフューチャーアーキテクト株式会社リーガルグループ入社。16年7月、同社退職後、翌月よりネットイヤーグループ株式会社入社。法務機能を有するコンプライアンス室(現法務監査室)に配属。19年10月より室長に就任、現在に至る

法務監査室室長、草場亮典氏。2003年4月、株式会社リコー入社、システム専業の営業を4年経験したのち、本社法務部に異動。15年4月、同社退職後、翌月よりフューチャーアーキテクト株式会社リーガルグループ入社。16年7月、同社退職後、翌月よりネットイヤーグループ株式会社入社。法務機能を有するコンプライアンス室(現法務監査室)に配属。19年10月より室長に就任、現在に至る

THE LEGAL DEPARTMENT

#107

ネットイヤーグループ株式会社 法務監査室

“従来の枠組み”を超え、経営全体をサポートする法務スペシャリスト

GC的な立場で健全な経営を守る

今でこそ多くの企業が、デジタルマーケティングの恩恵を当たり前に享受している。ネットイヤーグループ株式会社は、CX(カスタマーエクスペリエンス)を起点としたマーケティングの重要性、オウンドメディアの効果性などに20年以上前から着目し、デジタル時代のマーケティング戦略やCXデザインなどのサービスを、日本を代表する多くのクライアントに提供してきた。2019年には、大手SIerのNTTデータと資本業務提携契約を締結。これにより、NTTデータの得意とする基幹システム領域の知見や経験を生かしてクライアントにとって新たな事業価値創出の根幹となる「守りと攻めのDX(デジタルトランスフォーメーション)サービス」の提供をより深化させている。

そうした業容拡大や事業再構築を法的視点で支えてきたのが、法務監査室室長の草場亮典氏。

「当室の所管業務は、コーポレート法務・事業法務・渉外法務、内部統制、内部監査、知的財産関連、М&A対応、株主総会関連、役員会議案審査・議事録作成および監査等委員会補助使用人(監査役室スタッフ)です」と、草場氏。

特徴的なのは「法務監査室」という名称に表れるとおり、法務と監査を兼ねた役割であること。この室名は、草場氏が室長に就任した際に、自ら改称したものだ。

「経営サイド(経営者や取締役会)からは、事業執行機能・本社機能、および各種役員の指揮命令とは独立して、社内の各機能を支援・牽制することを求められています。“一般的な法務業務”に加えて、上場企業におけるコーポレートガバナンス体制の中核となる部署として、本社機能・事業執行機能から完全に独立していること、各種の監査機能を有することを社内外に示すため、この名称にしました」

例えば売上計上処理を行う経理機能に対しても、牽制機能を持つ。

「一般的には、売上計上の問題は、経理や内部統制部門で判断することになりますが、当室は内部統制や監査の機能を有しているため、契約審査にあたり、法律上の有利・不利のみならず、会計上不適切な処理になっていないかといった視点も含めて審査します。その結果、当室が不適切と判断した契約は締結できないし、売上計上もできません。つまり、事業差止権を有しているわけです。また、監査等委員補助使用人として、監査権と内部監査権に基づく調査・監査・差止権も有しており、売上計上にかかわらない事案に対しても牽制する権限を持っていることが、当室の特徴です」

社内における草場氏は、いわばゼネラルカウンセル(GC)と同等の存在であるようだ。

「その肩書ではありませんが、実質は近い役割を担っていると思います。私がGCに近い権限をセットするにあたってモデルにしたのは、国連の常任理事国が持つような絶対的な“拒否権”です。それは、法務や監査という職制で決裁権限上の“承認ルート”に入っていくという考え方が、日本の企業風土には適さないだろうと考えたからです。私が実際に行ったこととしては、監査等委員補助使用人としての監査権・内部監査としての監査・調査権という既に法的根拠が認められた権限をベースに、その権限を決裁権限に関する規程に反映することで環境を整備し、実際に試行錯誤しながら行使していくことで、GCが行使できるような“拒否権”をルールメイクしたわけです」

しかしながら、たった一人ですべての事案について目配りすることは難しい。

「例えば、経理、総務、人事などが『これはマズイのでは』と気づいた時に、私のところに連絡をくれる。それを精査して、私が差止権を行使するというのが、日々の“拒否権”の行使状況です」

問題が起きれば〝必ず止める〟

草場氏が“拒否権”を重視するのは、「法務監査室はコーポレートガバナンス体制の中核部署」という背景もあるが、そもそもは転職してきた約4年前、同社の業績が不振だったことにも起因する。

「私が入社した当時、システム開発の大型プロジェクト(PJ)が複数同時に失敗し、当社の経営に大きなダメージを与えるという事態が起きており、失敗PJの被害を最小化するということが経営の最重要課題でした。そこで課題の解決策として、『PJの先行きがあやしい時には即撤退の決定を下し、被害を最小限に食い止めるという流れを、契約で抑える』という施策を進めました。従来、当社はシステム開発でよく用いられる“一括請負”を採用していましたが、ふたを開けてみたら、受注額の倍以上のコストがかかる失敗PJになってしまった、といったようなことが多々あったわけです。せめて多段階契約にしておけば、工程ごとに個別契約を行い、前工程の結果をもとに次工程の費用・作業期間を新たに決めることもできたでしょう。そこで契約のスキームをすべて見直し、今後は“一括請負”による受注は一切禁止する、という施策を強行しました」

草場氏は、前職でシステム営業に4年間従事しており、その実務経験もここで役立っている。

「契約書だけでなく、PJ計画書のレビューも行えるので、“あやしい点”は片端からつぶし、万一問題が発生した場合は、プロジェクトマネジャーのような立場で現場に入っていくということを繰り返しました。私自身、システム営業時代に、“失敗PJ”を起こしてしまった経験があります。そうした現場での実務経験があるからこそ、PJや契約の問題点などに早期に気づけるのかもしれません」

その甲斐あって、この2年ほどは大きな“失敗PJ”は発生していない。「それを実現してこられたのは、“社長直轄”として経営の信任を得たうえで動けたことや、各部門長との信頼関係が築けているから」と語る。

「初めから、皆さんから全幅の信頼があったわけではありません。従来のやり方・ルールを変えるには、反発もたくさんありました。しかし、一つひとつの案件に真摯に対応し、問題から逃げない姿勢と会社の利益を第一に考える姿勢を示し続けることの積み重ねによって、『問題が起きたら法務監査室が絶対に介入し、止めてくれる』という安心感を、今は持ってもらえていると感じています。同時に、介入することで私の仕事が苦しくなるという事情も理解してもらえていると思います(笑)」

機動的かつ適確に動ける組織を目指す

現場を支援する「法務」、現場を監督する「監査」、会社の仕組みを構築する「内部統制」と、3役を兼任する法務監査室。それを一人で切り盛りする草場氏の役割は、一般に想像し得る“法務”の範疇を超えている。

「時期を選ばずコンスタントに発生する契約・法務相談業務と、監査や総会業務など複数の業務が重複する場合は、どうしても業務をトリアージ(優先順位をつける)しながら対処しなければなりません。〝今、当社にとってプライオリティの低い業務〟を選択しなければならない場面では、現場の顔も浮かぶので特に苦心しますね」

また、3役兼任という前提での業務遂行上、「自分がどの立場でアプローチしているかは、常に自覚と自戒をしながら行っている」と、日頃の苦労も語る。

現状、経営サイドへのアドバイスができる環境は構築されている。「しかし、まだ戦略法務の域には達していない」と、草場氏。これから、中長期的な視点で法務監査室をどのように運営していこうとしているのか伺った。

「民法改正、働き方改革と新型コロナウイルス感染症拡大による新しい働き方、4月から始まる『収益認識に関する会計基準』の変更、AIによる技術革新など、外部環境が劇的に変化する昨今、従来のやり方は通用せず、先例や判例がない中で、いかに機動的かつ適確に会社組織や制度変更を行い、経営体制を新たな環境に順応させていくことができるか――ということを、経営からも現場からも当室に対して強く求められています。その期待に応えるために、現業の業務効率を最大化して時間に余裕を生みだし、法務領域に限らず、次に待ち受ける変化を予測し、変化に順応するために必要な知識を深めておくことで、機動的にプロアクティブに提案していける法務監査室の体制を整えることを目指していきたいと思います」

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    社員が打ち合わせやオンライン会議、ランチなどで利用している広々としたラウンジフロア(テレワークが定着した今は利用者が少なめ)。
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    マッサージチェアや仮眠用の折りたたみコットが複数台設置されていて、コロナ禍明け後は社員でにぎわう様子が想像できる
ネットイヤーグループ株式会社
「当社のテレワーク率は、現場で9割前後、スタッフ5割前後と想定以上の浸透度で、制度設計した私としてはうれしい限りです」と、草場氏