Vol.76-77
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法務メンバーは全世界で約100名所属。日本の法務・コンプライアンス部(法務チーム、知財チーム、コンプライアンスチーム)は33名(法務チームは20名)。なお有資格者は日本法弁護士9名(うち数名が海外弁護士資格も有する)、海外弁護士資格者2名、および弁理士2名が所属

法務メンバーは全世界で約100名所属。日本の法務・コンプライアンス部(法務チーム、知財チーム、コンプライアンスチーム)は33名(法務チームは20名)。なお有資格者は日本法弁護士9名(うち数名が海外弁護士資格も有する)、海外弁護士資格者2名、および弁理士2名が所属

THE LEGAL DEPARTMENT

#109

株式会社ファーストリテイリング 法務・コンプライアンス部

グローバルビジネスの課題解決、経営判断に寄与できる法務

グローバルで先進的な事業展開

ユニクロやジーユーなどの人気ブランドを擁し、アパレル企業世界第3位の売上規模を誇る株式会社ファーストリテイリング。中核事業のユニクロだけを見ても、25の国と地域に約2300店舗を出店、直近の売上高は1兆6500億円である。法務・コンプライアンス部部長の渡部大輔氏に、同部の構成を聞いた。

「現在、日本を含めて世界18の国・地域に約100名の法務メンバーが所属しています。ここ数年で、主要海外拠点のほぼすべてに法務組織の設置が完了。また、海外拠点の法務組織のほとんどに現地法の弁護士が配属されています。私たちは、グローバルヘッドクォーター(GHQ)として、それら全拠点と連携し、業務を遂行しています」

人員が拡大してきた要因を、渡部氏は次のように語る。

「当社が“情報製造小売業”へと業態を変革させてきたことが大きいと考えます。現在その流れから、AIによって膨大な情報を分析し、その結果を用いて新商品開発や商品改善を行い、需要予測につなげることで“無駄なものをつくらない、運ばない、売らない”ことを目指す『有明プロジェクト』を全社一丸で進めています。これにより世界中の生産工場、倉庫、店舗がシームレスに連動するサプライチェーンの仕組みの構築を目指していますが、そうした経営的な動きに伴い、様々な側面からスピーディな法的対応が必要となります。海外の出店数も急増しており、当然、そこには各国の法律がかかわります。今は現地法に詳しいメンバーが各拠点に在籍しているものの、数年前まで日本から法務機能を見ていた国・地域もありました。展開国・地域が増え、グローバル統一の商品制作が強化されるにつれ、全展開国・地域の関連法の情報を収集・分析する業務が増加。自ずと人員拡大となりました」

例えば、海外拠点とどのようなやりとりが発生しているのか、法務チーム・リーダーの村澤恵子氏が説明してくれた。

「一つの商品の製造段階から、その国でクリアするべき規制を調べ、販促物に記載するための表示規制などを調べ……さらに直接海外のメンバーと連絡を取り合い、現地法に照らして教えてもらい、取りまとめるといった業務が頻繁にあります。あるいはローカルからのインプットを参考にしながら、GHQとしてのポリシーをつくるといった仕事もしています」

海外展開に絡め、同社ならではのダイナミックな仕事について、渡部氏が教えてくれた。

「新規国に進出する計画が持ち上がった場合、各部署から担当者が数名ずつ集まり、プロジェクトチームを編成します。法務が管理系部署の中核的存在になるケースが非常に多く、法務の重要性は高いと捉えられています。進出の仕方にもよりますが、どの国でも共通するのは、外資規制の問題です。特に繊維産業を地場産業として保護しているような国では進出自体の難易度が上がりますから、それをどうやって解決するかで法務の手腕が試されます。また、国によっては他社パートナーとの合弁で進出するというケースもあり、その合弁契約書の締結なども重要な仕事です。それらをクリアしなければそもそもビジネスが始められませんから、我々法務は海外進出スタートのカギを握る重要な役割を担っていると思っています」

  • 株式会社ファーストリテイリング
    ユニクロのグローバル旗艦店である上海店
  • 株式会社ファーストリテイリング
    同じくパリ オペラ店。海外の各拠点と日本のグローバルヘッドクォーターの連携は密接だ

本質的な課題解決、経営判断に貢献

そのような海外進出の際の法的対応に加え、法務チームの業務にはどのようなものがあるのか、法務チーム・リーダーの飯田拓己氏、村澤氏に聞いた。

「法務チームでは3名のリーダーが数名ずつメンバーを持ち、業務領域を緩やかに分けて担当しています。私のチームは、Eコマース、IT、データセキュリティ、物流関連、コーポレートガバナンス関連、ブランドでいえばジーユーといった具合です」(飯田氏)

「私のチームの担当は、R&D、マーケティング、出店開発、広報、人事労務、サステナビリティ関連など。ブランドもいくつか担当しています」(村澤氏)

とはいえ、明確に業務の切り分けはできないと飯田氏。

「例えばEコマースといっても、システムや物流がかかわりますし、EC商品の店舗受け取りなどの施策では店舗のオペレーションも重要。結局、すべての領域が混じり合って進行しているのが実状です」

「実質、業務領域の明確な線引きはできません。一つの案件に“End to End”でかかわり、なおかつ必要と思われる部署の担当者とそのつど連携しながら“アメーバ的”に対処していくことがほとんどです」(村澤氏)

そんな法務のミッションは、「あらゆる部署と連携し、本質的な課題を見つけ出し、解決していくこと」と、渡部氏。

「日常的な法律問題の対処は当然しなくてはならないことですが、あくまでもそれはルーティンで、いかにして事業に付加価値を生み出すかが重要。そのためには、開かれた法務として他部署とどんどん連携し、組織的な課題・本質的な課題を見つけ出して解決していく必要があります。そうして組織全体、会社全体の価値向上、ビジネスの進化に寄与していくことが、法務の使命といえるでしょう」

株式会社ファーストリテイリング
年2回、海外拠点の要職者が来日して日本で開催していたグローバルリーガルカンファレンス。現在はオンラインで開催し、全メンバーの参加が実現

部分ではなく全体を見られるやりがい

同部法務チームのメンバーのほとんどが、即戦力入社者だ。

「様々なリーガル分野で多様な経験を積んできたメンバーがおり、互いを尊重しながらも自律的に仕事を進めています。当社ではその場での判断や即応を求められることが頻繁にあるため、どうしても判断できない場合は持ち帰るものの、逐一リーダーの承認を取っていられないこともあります。その分、判断力、思考力、推進力が問われます」と、渡部氏。

ところで、渡部氏、飯田氏、村澤氏は、法律事務所出身だ。3氏ともにインハウスローヤーの仕事は、法律事務所とは異なるやりがいがあると語る。

「部分だけではなく全体にかかわれる点が醍醐味ですね。当事者として最初から最後まで関与すると、法律以外のことを考えながら判断することも多く、緊張の連続ですが、そこが面白さでもあります」(渡部氏)

「法律事務所に勤務していた頃、このアドバイスが本当にお客さまの役に立つ情報だったのか、お客さまのためになる仕事だったのかと、振り返って反省する場面もありました。今はビジネスの当事者という立場で、法務チームの発言・アドバイスがストレートに結果として現れます。この判断やアドバイスはビジネスに照らして役に立つものか?と考える習慣も身につきました。また、社長の柳井の考えをじかに聞ける機会が多く、経営サイドが法務に期待していることを腹に落とし込みながら仕事に向き合えるのも、大きなやりがいです」(飯田氏)

「法務が経営サイドから頼られ、判断を求められていることを日々実感します。法律論を踏まえることはもちろんですが、会社の“良識”を担うことが求められています。法律論の先で、会社としてどのような判断・行動をすべきかを問われることも多いですね。さらに、当社では、『常識を超えろ、常識を疑え』ということがよく言われます。これが、常識という部分を重んじて仕事をしてきた法律家にとっては、なかなか大変(笑)。自らの常識を疑いながら良識は持って……という、そのバランスのとり方に苦労しながら仕事をしています。でも、そこに悩むこともまた、当社での仕事の醍醐味だと思います」(村澤氏)

最後に、渡部氏に今後の同部の展望を聞いた。

「当部のメンバーには、真に付加価値の高い仕事をし続けてもらいたいと願っています。リーガルテックなどの発達で、定型的な作業はメンバーがこなさなくてもよくなっていくでしょう。その分、組織課題を解決できる柔軟な対応力・思考力を備え、バックグラウンドも多様な集合体であり続けたい。法的な素養と専門性を有し、かつビジネスの課題解決や経営判断に貢献できる人材を育てていきたいですし、また、そうした人材と一緒に働いていきたいですね」

※取材に際しては撮影時のみマスクを外していただきました。

  • 株式会社ファーストリテイリング
    中核事業のユニクロ商品例(プレミアムリネンシャツ)。素材調達・企画・生産・販売を一貫して行い、品質や機能にこだわった独自商品を展開
  • 株式会社ファーストリテイリング
    中核事業のユニクロ商品例(感動パンツ)