2021年4月より、「10年後にめざす姿」の実現に向けて3カ年プログラム「My Mutual Way Ⅰ期」に取り組む、明治安田生命保険相互会社。営業・サービス、基幹機能・事務、資産運用、相互会社経営運営における制度やインフラの見直しを、DX戦略と融合させつつ、意欲的に進めている。保険会社は保険業法上の免許に基づき事業を行うため、当該法律の遵守が必要となるが、加えて、各種ステークホルダーから、社会規範を踏まえた経営判断や業務運営を求められる。社会規範とは、社会生活を営むうえで守るべき倫理・常識・慣習であり、時に“法律の行間”を読んで判断しなくてはならない。コンプライアンスは、そうした社会規範にしたがった経営判断の要といえる。そこで、コンプライアンス統括部長・片山圭子氏に、現在のコンプライアンス態勢や、取り組みなどについてうかがった。
「当社のコンプライアンス統括部は総勢100名強の組織です。21年4月、既存のコンプライアンス統括、コンプライアンス推進、金融犯罪対策、募集資料審査という各グループと業務品質調査担当に加えて、全国の支社や営業所などの内部統制状況を調査(聴取)する業務検査室が統合されて現体制となりました。当部の業務は法・規制を確認のうえ実務検証を行うことが頻繁にあるので、法務知識や法務経験は非常に有用です。また当部に所属していた職員には、法務部や海外事業部門をはじめ、様々な部署で、その知識・経験を生かしてキャリアを積んでいる方が数多くいます」
コンプライアンス統括部が、企画部から独立して創設されたのは05年。不適切な保険金等の不払いによる行政処分を受けた年だ。
「生命保険事業の使命を今一度自覚し、ガバナンスの抜本的な改革を行い、新たな出直しを図るべく創設されました。私たちはご契約者さまに信頼いただけるよう、従業員一人ひとりが高い倫理観を持った行動をしなければなりません。そのために、グループコンプライアンス態勢をしっかりと構築・整備・推進する。そして、そのプロセスと結果を経営に報告・提言することが私たちの役目です」
具体的に、コンプライアンス統括部はどのような態勢構築、整備、推進を行っているのか。
「本社各部や1000を超える国内営業拠点に法令遵守責任者を設置しています。法令遵守責任者は、コンプライアンス統括部との連携を図り、所属内におけるコンプライアンス意識の高揚に努めるとともにコンプライアンスを推進しています。グループ会社に対しては、当部は、担当執行役員兼CCO(チーフ・コンプライアンス・オフィサー)の指示のもと、各社へのモニタリングを行っています」
特に経営戦略上重要と位置付ける子会社である米国スタンコープ社と明治安田損害保険株式会社については、年2回、グループコンプライアンス会議を開催し、相互コミュニケーションを深める。
「当部はいわゆる“2線”の役割を担っており、内部通報、お客さまの声(苦情情報)、本社各部からの報告など、様々な切り口でコンプライアンスに関する情報を収集しています。そのうえで、モニタリングチェックのフレームワークやコンプライアンス教育を当部が管轄していますが、実態としては、各事業の現場と“一緒に取り組む”というケースも多いですね。集まってくる情報量は膨大。様々な情報をキャッチ次第、業務品質調査担当が調査の必要性の有無を判断するなど、スピーディかつ正確な判断を心がけています」