同社独自のグローバルコンプライアンス基準(YGCC)の策定という大プロジェクトを担当した大神氏に、やりがいをうかがった。
「YGCCの原案は、部長の湯本がノートに手書きしたアイデアメモ。それを全世界に展開するため、国・地域ごとの法令、文化慣習などに対応させる必要がありました。当社には、創業者の田忠雄が海外赴任する社員に伝えた『土地っ子になれ』という言葉があります。それは相手の文化・習慣を尊重してコミュニティの一員になること、“現地のことは現地に任せる”という精神を示した言葉。その言葉と思想を持って海外20カ国以上を回り、各事業会社の担当者と情報収集・意見交換しつつプログラム設計をしていきました。ですからグローバルコンプライアンス基準も一律ではなく、各事業会社の規模・状況などに合わせて、ある程度“自由判断”の部分も持たせています。様々な現地法人のトップや担当者と協働しながら、そのような難しいプログラム設計、体制整備や運用にかかわれたことも、この仕事の醍醐味です」
また、法務グループ長の古槇俊之氏(61期)は、海外赴任時に担当した仕事について次のように話す。
「私が初めて海外に赴任したのは、入社3年目のこと。ある日、上司から『アメリカの事業会社に行ってほしい。ついては、その前にブラジルの事業会社で研修を』と。しかし研修中、ブラジルでの仕事が面白くなり、アメリカへは行かず、結局7年駐在しました。ブラジルは労働法や税制が難解で、その対応にやりがいを感じたのです。一方で、土地の売買や工場の閉鎖対応など、法務の枠を超えた業務に携わる機会も多く、多様な経験が積めたことが私にとっての財産です。そのように本人の希望を尊重し、チャレンジさせてくれるのが、当社の魅力といえるでしょう」
原田氏は05年頃、先述のEU競争法違反の疑いなどに対応するために組織された部署に、特命で法務から配属。事実関係の調査や反論書面の作成および裁判所対応、経営への報告、レピュテーションリスクの回避などに尽力した。
「法務的な対応に加えて、メディア対応・社員へのメッセージ発信のための文書作成、一部関係者に対する懲戒手続き、所管官庁への報告など、広報・渉外・人事などの幅広い業務に携われたことが面白かったです。また、19~21年までは経済産業省の模倣品対策室に出向しています。模倣品の撲滅に向けた政策の企画立案が主業務で、私自身は中国政府との交渉や模倣品対策に取り組む他社との連携など、民間企業では味わえない得がたい経験をさせてもらいました」
そのように海外経験のみならず、同部では、国内における業務であっても、多様なキャリアパスを描ける可能性が広がる。
「『こんな面白い仕事ができそうだ』というヒントが当社にはたくさん転がっています。そのヒントを拾う意欲があることが大切。大神の欧州や米国の赴任経験、古槇のブラジル赴任経験、原田の経済産業省出向経験――おそらく本人も入社時は想定していなかったキャリアでしょう。しかし、最高に面白い経験をしたいと意欲的に仕事に向き合える人なら、そのヒントをきっと見つけて、自分の成長の糧にできると思います」(湯本氏)