同部のミッションについて、豊泉氏にうかがった。
「当社の事業展開領域は、国内、アジア、中国、米州、欧州と全世界にわたっており、海底に数百キロメートルの電力ケーブルを敷く大規模事業から、ミクロレベルの機器・製品の製造・販売まで多種多様。これにかかる法的リスクも国や地域、製品分野によって様々です。そうした事業環境を踏まえた、事業推進上のリーガルリスクの予防・低減が重要なミッションです。また、会社経営や事業推進においては、適切な企業統治とステークホルダーからの支持・信頼が必要不可欠なため、これをしっかりと支えるCG体制を充実・強化させています」
法務課課長の本多永正氏は、「攻めと守りの法務の両方を行い、経営層・事業部門から信頼されるパートナーでありたい」と、力を込める。その際のコミュニケーションの大切さについて話すのは、文書課課長の逆瀬川美佳氏。
「CGを担う私たちの重要な役割は、役員が適切に経営判断するための環境整備です。社会動向、法令、他社状況などを鳥瞰し、社内関係者への説明では『法律としてはこうです』『役員がこう言っているからです』ではなく、事業の前進を前提に取り組みます。本部スタッフとして事業推進メンバーの一員の意識をもち、業務に取り組むことを心掛けています」
同部が関与した印象に残る案件を、本多氏が教えてくれた。
「米国通信機器関連大手のルーセント・テクノロジー社から光ファイバー事業を2000億円超で買収しました。ルーセント社は世界の光ファイバーメーカーの二大巨頭の一社で、日本のメーカーはその後塵を拝していたというのが当時の構図で、グローバル市場でのシェア獲得を目指したプロジェクトでした。私は当時アメリカに長期出張していたのですが、その最中に『9・11』の発生、金融環境の悪化など想定外の困難も多々あって日程が延期に……。しかし多くの弁護士と協働し、クロージングにこぎつけることができました」
全社的プロジェクトにもかかわらず「若いうちから大きな仕事を任せてくれる環境」だとわかる。
続いて、逆瀬川氏は、同部の大きな成果の例として、CGコード導入後の取締役会における実効性評価を挙げる。
「毎年、取締役会を構成する全取締役・監査役にアンケートを行い、アンケート回答のより深い理解のため、取締役会議長による全取締役・監査役への個別インタビューも実施します。これらをもとに、取締役会で実効性の評価・分析や改善施策を議論、策定し、評価結果の概要を開示する。これが当社の実効性評価の進め方です。CGコード導入当初、実効性評価を実施する企業はまだ少なかったため、試行錯誤しながら取り組みました。その評価方法や実行内容、開示内容が仔細かつ先進的であるとメディアでも取り上げられ、高く評価いただきました。法務部員としての創造力を十分に発揮できた仕事だと思います」
「多くの企業から注目され、同評価実施が普及・浸透していくうえでベンチマーク的な役割を果たせたのだと思います」(豊泉氏)