Vol.84
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田島朝美氏(左)は、Jリーグでパートナーや事業担当、商品化など多様な経験を積み、2023年1月に法務部配属。法務の枠にとらわれず仕事をできるのがJリーグのやりがいと語る吉川光敏氏(右/69期)は2020年入社。現在は、法務部と事業部兼務で八面六臂の活躍中だ

田島朝美氏(左)は、Jリーグでパートナーや事業担当、商品化など多様な経験を積み、2023年1月に法務部配属。法務の枠にとらわれず仕事をできるのがJリーグのやりがいと語る吉川光敏氏(右/69期)は2020年入社。現在は、法務部と事業部兼務で八面六臂の活躍中だ

THE LEGAL DEPARTMENT

#134

公益社団法人 日本プロサッカーリーグ(Jリーグ) 経営基盤本部 法務部

サッカーを通じて競技的、事業的、社会的ミッションの遂行をサポート

ルールメイキングと運用を担う

今年2023年、開幕30周年を迎えたJリーグ。当初10クラブでスタートし、現在は全国41都道府県に60クラブを置くまでに。このJリーグに加盟する各Jクラブの管理・運営などを担う組織が、公益社団法人 日本プロサッカーリーグである。

部長の助川卓矢氏に、法務部の仕事についてうかがった。

「契約審査や各種法律相談、労務系や事業系のリーガルサポート、法務リテラシー向上のための組織内研修の企画・実施などについては、一般的な企業法務部と同様です。独特の業務としては、サッカーのプロ興行運営のための、ルールメイキングと運用、興行の公平性、適切な運営の検証および条文化といった立法のような作業があげられます。現在30種以上のJリーグ規約・規程があり、その改定作業や適用部分の確認などを毎年必ず実施。それらの規約・規程に基づいて、試合・興行が行われています」

30年前の“Jリーグ創世記”に欧州サッカーの運営ルールを取り入れ、日本に馴染むよう整えた規約・規程が受け継がれている。

「Jリーグの運営に関するルールは毎年変更があるので、法務はその動向を踏まえて規約・規程に反映させていかなければなりません。ちなみに前回改定した条文は100以上でした。また、FIFAを頂点とするサッカー協会が定めるサッカーに関連するルールとのバランスも考慮して仕事に臨むことも重要です」

契約案件だけを切りとっても、試合の放映権販売にかかわる国内外事業者、パートナー企業のほか、年間1000以上の試合映像制作を担う映像制作会社、数百名に上る実況、コメンタリー、ピッチレポーターとの取引など、かなりの数の契約提携業務を担う。

「プロ興行をいかに活性化させるかが、当法人の大切な使命の一つ。そのためのマーケティング施策にかかわる契約も多く、法務は企画段階から関与しています。また、スポーツビジネスは最先端技術を有する企業にとって、自社の技術力を示す格好の舞台でもあります。例えば、ここ数年目にする機会が増えたVAR(ビデオアシスタントレフェリー/主審の判定をサポートする機能)の導入と適切な運用もハードルが非常に高い事案で、契約の初期段階から我々も入り、関係企業と内容を詰めました。そうした新たな契約事案に関与する業務も年々増加しています」

組織の“足腰”を強化していく

チェアマンや執行役員、理事との距離の近さも経営基盤本部に属する法務部の特徴だ。

「社員総会、理事会、経営会議には必ず法務も出席します。役員層・管理職層からは会議の場で、あらゆる議案において様々な角度から質問を受けるので、その対応も重要な任務となっています」

助川氏は、当初は10年間だった放映権契約を一部変更し、2年の契約期間延長となったDAZNとの契約締結にも関与している。

「前チェアマンを中心とした少人数の交渉チームに法務も入り、秘密裡に交渉を進めました。そうした、組織運営の根幹にかかわる事案に関与していけることも大きなやりがいです」

そのように、組織運営の要となる事案に対応する法務部だが、同法人内に、独立した部門として設立されたのは18年のこと。まだ、若い組織といえる。「ようやく、管理職層を含めた各部門の担当者が、様々なアクションが必要となった際、『これって法的にどうだっけ?』と意識して問い合わせてくれるように。法務と現場との垣根が低くなってきた」と、助川氏。

「国内外の事業者への放映権の販売、新たなデジタル技術の導入など、Jリーグが“外の世界”とつながるビジネスを活発化し始めたことや、コンプライアンスに対する意識の高まりが、我々のプレゼンスを向上させた理由といえます。リーガルリスクへの意識を継続的に高めていくことで、組織全体の“足腰”が強くなり、リスクも未然に表出しやすくなります。『法務部に相談すると最適解が見つかる』『新しいアイデアが見つかる』といった声を増やし、組織内の情報が最も集まる部として、他部門同士の橋渡しのような役割も果たしていきたい。今後も部のプレゼンスをさらに高めつつ、組織全体でリーガルリスクの低減・排除を実現するべく尽力していきます」

助川氏はさらに、組織内コミュニケーションの円滑化に向けて、様々な施策を企画・実施している。例えば、学校の“ホームルーム”にかけて、Web会議ツール上に「ほうむ(法務)ルーム」を設置。

「手元の案件がない時、急ぎの相談がない時でも、法務部メンバーと気軽に話をして、身近に感じてもらうことが狙いです。ほかにも『Jリーガルランチ』と称した、“堅苦しくない法務研修”も企画。著作権の基礎、選手契約の基礎などテーマを幅広く設定し、業務上必要となる法律が、より“身につきやすい研修”を目指しています。これらの取り組みがきっかけとなって、案件の話に発展したり、リスクの芽に気がつくこともあり、実施効果は高いと自負しています」

公益社団法人 日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)
「長年、パートナーや事業担当をするなか、『立ち戻る先は契約書だ』と感じ、契約に詳しくなりたくて法務部を希望。念願が叶いました」(田島氏)

一人ひとりの能力を引き出し、組織力を強化

法務部は現在、助川氏、吉川光敏氏(69期)、田島朝美氏の3名体制だ。

吉川氏は「スポーツにかかわる仕事がしたい」とJリーグの総合職として中途入社、当初は事業部に配属されたのちに法務部に異動した。一方、田島氏は事業部で長年経験を積み、事業理解も深いスタッフである。

「当法人の採用は100パーセント即戦力採用で、当部もマーケティングもITも、どの部門もプロフェッショナルの集まりです。しかし、プロ集団ゆえの“縦割り組織”に陥る恐れもある。それをいかに打破していくか、多様性を確保できるかが喫緊の課題となっています。吉川が入社したきっかけとなった若手総合職採用は、次代のリーダーとなり得る人材の確保を目的として実施したものです。こうした背景もあって、事業部を経験した吉川と田島が、法務部にジョインすることになりました」

同法人は、今年から新たに「60クラブがそれぞれの地域で輝く」という目標を掲げている。これを受けて、吉川氏はクラブサポート本部を兼務、助川氏など部長職も例外なく、他部門を兼務するようになった。

「当法人は、従前以上に各クラブと寄り添い仕事をしていくという方針です。地方の担当クラブを回り、クラブの事業サポートを法務部と兼務で行っています。ちなみに入社したての頃は、いわゆるサッカーの育成年代を支援していく部門に所属していました。今はフットボール、社会連携、toC、事業強化、経営基盤という5つの経営領域の各事業運営について、バックオフィス、現場の両面から携われることに、やりがいを感じています」(吉川氏)

あらためて、助川氏にJリーグでの仕事の魅力をうかがった。

「Jリーグは皆さんの日常の延長線上にあります。毎週どこかで行われるサッカーの試合を観戦し、一喜一憂しながら“明日への活力”を蓄えていただける事業だと思います。ワールドカップの記憶も新しいですが、サッカーは、夢があり、世界中の人々がシンプルに楽しめるコンテンツです。ここに法務という立場でかかわれることは、貴重な経験ですし、魅力的です。サッカーを愛し、サッカーを支えてくれるステークホルダーとともに、Jリーグの『百年構想』を担っていけるよう、メンバーたちとまい進していきます」

※取材に際しては撮影時のみマスクを外していただきました。

公益社団法人 日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)
法務部が関与した「Jリーグ公式試合における写真・動画のインターネット上での使用ガイドライン(一部)」。観戦者のSNSへの写真・動画投稿にあたり、契約相手先の権利侵害にならない許諾ラインと、表現方法を練った。「例えば、ミスプレーをネガティブな表現で発信すると誹謗中傷になりますが、サポーターを萎縮させる書き方もしたくなかったので、『愛のない投稿はやめてね!』と表現。サポーターの皆さんからは『しっくりくる』と、喜んでもらえているようです」(助川氏)