Vol.84
HOME法務最前線パーク24株式会社
  • ▼弁護士のブランディング支援サービス

    Business Lawyer's Marketing Service
  • ▼弁護士向け求人検索サービス

    想いを仕事にかえていく 弁護士転職.JP
  • ▼弁護士のキャリア形成支援サービス

    弁護士キャリアコンシェルジュ
  • 当社サービス・ビジネス全般に関するお問い合わせ

グループ法務・知的財産部には13名が所属。第2新卒を含めて全員が中途入社者で、メーカーなど事業会社の法務部、法律事務所出身の弁護士も複数名在籍している

グループ法務・知的財産部には13名が所属。第2新卒を含めて全員が中途入社者で、メーカーなど事業会社の法務部、法律事務所出身の弁護士も複数名在籍している

THE LEGAL DEPARTMENT

#136

パーク24株式会社 経営管理本部 グループ法務・知的財産部

モビリティサービス業界の先駆者として、ビジネスの半歩先を照らす法務を目指す

現場と一体感をもって支援

2021年8月に、創立50周年を迎えたパーク24株式会社。無人管理の時間貸駐車場や、カーシェアリングサービスのフロンティアとして、業界をけん引し続けてきた。同社は持株会社として、国内外のグループ会社の統括、経営企画・管理を担う。社内に独立した部として、グループ法務部(現グループ法務・知的財産部)が設立されたのは約3年前。部長の佐藤雅樹氏に、設立背景をうかがった。

「当社はこの10年ほどで事業展開を拡大させてきました。顧客数自体の増加、海外進出など事業形態も多様化し、法的な課題対応が急務となったことで、法務体制が整えられました」

業務範囲は、コーポレートガバナンス体制の構築・運営、株主総会の事務局、知的財産、国内グループ会社の契約審査・法律相談、営業事案対応など。海外のグループ会社は台湾やオーストラリア、ニュージーランド、シンガポールマレーシア、英国にあり、重要係争案件の管理、レピュテーションリスクのある案件が生じた場合は、即連携して対応。日々の業務は、細かな担当分けをせず、契約、労務、個人情報保護、商事法務、海外法務、知財など幅広い分野に対して、所属メンバー13名が一丸となって臨む。そんな同部の特徴は、事業部門など現場との距離が近く、新規ビジネスの相談をはじめとして、アイデアレベルの相談も日常的に寄せられること。同部の島野友行氏に仕事内容をうかがった。

「例えば、ゲートやロック板を設置せず、出入り口に設置したカメラで車両ナンバーを記録して管理するカメラ式駐車場の導入、駐車料金支払い時のスマートフォンアプリを活用したキャッシュレス決済の対応など、DX化の進展もあり、新たなアプローチで顧客利便性が追求できるようになりました。事業部からは『こんなサービスできないか?』といった相談が頻繁にあります。漠然とした相談の時は、やってみたいことを一緒に洗い出し、整理して、法的な検討を行います。こうした業務の進め方は、現場との距離が近い、当社ならではのスタイルだと思います」

島野氏が例にあげたBtoC取引における新規事業には、法務として様々な検討課題が生じる。

「カメラ式駐車場の場合、撮影されるナンバープレート情報は個人情報にはあたらないけれど、プライバシーの観点ではどうか――といったことを考慮して、利用規約に落とし込みます。また、精算方法が多様化するなかで、その方法が資金決済法にあたるのか割賦販売法にあたるのか、その場合の当社のポジションはどこに置くのかなども検討課題となる。そうした法的問題点を、事業部など他部門のメンバーと議論し、解消していくプロセスが楽しいですね。企画・営業事案の初期段階からコミットできることが、仕事の大きなやりがいになっています」

ビジネスを現場とともに推進する法務としては、“現場を知る”ことが非常に重要だ。

「部長の発案で、私や当部のメンバー数名で、カーシェアリングサービス・レンタカーサービスの車両の保守管理業務、駐車場精算機の現金回収業務などを実際に体験・視察する現場実習もしました。そのようなかたちで、私たちからも現場とのコミュニケーション機会を増やしています」(島野氏)

パーク24株式会社
取材には第2グループ課長代理・島野友行氏も参加。撮影場所はフリーアドレス制を採用した執務フロア。吹き抜けのある開放的な空間で、打ち合わせやWeb会議ができるスペースもある

世のなかにない分野を開拓する醍醐味

フロンティアであるがゆえに、前例のない事案・企画に直面するケースも少なくない。弁護士として前職の法律事務所で一般民事などに関与してきた、グループマネージャー・永嶋真倫氏は、次のように語る。

「不動産の賃貸借を中心とした民法、消費者契約法、景品表示法に関わる法務相談など、一般民事も含めた法律事務所勤務時代の経験を生かせるのが、当社事業の特性です。加えて、これまでにはない視点が得られる醍醐味もあります。例えば当社のカーシェアリングサービスは、事業部の担当者がコツコツと切り拓いてきたビジネスです。その運用にあたっては、車両運送法、車庫法、道路運送法など管轄の異なる法令を複合的に見て、法的分析を行う必要があります。法律事務所勤務時代には扱ったことのない法令だったので、当該事業に長年携わってきた担当者に話を聞き、勉強させてもらいました。運輸支局の通達の解釈・運用なども含めて、『その観点で法律を読んだことはなかった!』と、視野が広がるような、新鮮なおどろきがあったことが記憶に残ります」

「前例がないということは、誰も答えを持っていないということ」と、佐藤氏。

「事業始動後、『違法だったので撤退』というわけにはいきません。自分たちで法令や判例、書籍などを調べ、限界まで考え抜いたうえで『この理屈、解釈で適法にできるだろう』と判断してGOサインを出す。これが当部の仕事の醍醐味だと思っています。当社は、誰も着手していないサービスに挑戦することを掲げている会社ですから『誰も考えたことのない法律問題について、自ら新たな答えを導き出し、つくり出す』という、クリエイティブな法務業務に携われるチャンスがいくらでもあります」

そうした業務を進めるためには、多様な能力が求められる。

「法律の知識はもちろんですが、自社のビジネスを知り、社会を知ることが大切です。法律上は問題がなくても、消費者目線で見た時に違和感があるとか、社会に受け入れられないサービスでは、社会に快適さを提供するというグループ理念に合致していませんから。『常に世の中の動きをきちんととらえ、考えること』と、部長からよくアドバイスをもらっています」(島野氏)

「『違法じゃないから大丈夫』という返答は、当社の法務パーソンとしては失格です。『違法ではないが、このままではユーザーに受け入れられないから再度練り直しましょう』とまで言えること、世の中の模範となる結論を出せることを期待しています」(佐藤氏)

先回りして提案できる法務に

同部では、メンバー全員でディスカッションを行い、同部のミッションを作成した。佐藤氏に、その内容をうかがった。

「『我々の行動原則』として、①合法性の先にある“正しさ”を追求する、②ビジネスの結果に説明責任を負う、③法を知り、ビジネスを知り、社会を知るという3原則を掲げました。島野が話した“社会を知る”は、この3原則に依ります。我々はこれらの指針と、そこから導き出される各々の役割を意識して業務に励んでいます」

同部は即戦力入社者の割合が高く、多様なバックグラウンドのメンバーが揃う。「みんな議論好きで、議論することで知的好奇心を満たし合っている感じです。互いの知見を共有し合い、カジュアルにコミュニケーションが取れる、アットホームな風土です」と、永嶋氏。

働き方は、コアタイムなしのフレックスタイム制で、2週間に一度の出社当番日以外は在宅勤務もできる。「私も含め、時短勤務や、病児保育・ベビーシッター支援制度を活用しながら、仕事と育児の両立を叶えている社員も多数」と、永嶋氏が教えてくれた。

未知な分野に挑戦し続ける同部において、今後取り組んでいきたいことを佐藤氏にうかがった。

「部として独立してからの歴史が浅く、組織としてはいまだ発展途上ですが、部ができて3年強の間に当部が取り扱う業務範囲は拡大し、質的にも向上してきました。もっとも、海外法務、個人情報保護、知的財産など、部としても社としても、強化の余地がある分野が多々あります。個人情報保護でいうと、カーシェアリング事業だけでも当社は200万名分の免許証情報を保有しています。その自覚を促し、しっかり情報を守り、そのうえで顧客利益に資するサービスを創出するための情報活用を促していきたい。それができる社内体制構築の必要性を、経営層に向けて具申しています。また、知財でいうと、例えば、カメラ式駐車場では会員情報とスマホアプリが紐付いているので、それらの情報を活用した新たなサービスの立ち上げを検討しています。そうした時、サービス運用に必要なソフトウエアだったり、アプリのインターフェースなどの特許取得も必要となるでしょう。そのように、常にビジネスの半歩先を予想して、経営と一体となって動いていけるチームでありたいと思います」

※取材に際しては撮影時のみマスクを外していただきました。

パーク24株式会社
2019年4月、創業の地・西五反田に新設されたパーク24グループ本社ビル。写真は最上階のラウンジ。業務の合間のリフレッシュやランチ、集中して仕事をしたい時などに利用されている