同社では新卒入社後、10年間で3部署を経験するジョブローテーション制度を導入している。コンプライアンスチームの磯貝征志氏は法人営業部門、法務チームの薛佳軒氏は国際事業本部からの異動者だ。
「私は教育・啓発の企画・立案・推進、ほか3年に一度実施されるモニタリングなどに携わっています。このモニタリングは、当社全体のコンプライアンス浸透度を評点化するもので、数値で明確な向上が示された時は、自分の仕事の手応えが実感できて嬉しいですね。営業部にいた頃は“法務室は守り”というイメージが強く、杓子定規な対応にもどかしさを感じたこともありました。しかし、自分自身が法務担当になってみると、“守り”の必要性・重要性がよくわかる。そこをかみ砕いて現場に伝えつつ、“攻め”の部分でもビジネスの役に立てる法務にしていくことが、営業の現場を経験してきた私の役目だと思っています」(磯貝氏)
一方の薛氏は、異動から半年ほど(23年10月時点)で、「まだ勉強しながら仕事に取り組んでいる段階です」と語る。
「私の主な業務は、契約書審査と法務相談です。法務室に来て感じたのは、国際事業本部にいた時とは比較にならないほど、ヤクルトグループの各社・各部門とやり取りがあるということ。それぞれの仕事内容を深く理解し、より適切なアドバイスができるよう成長していきたいです」(薛氏)
法務室では、各チームの取り組みの発信、社内研修などを、「みんなの法務ルーム」というポータルサイト上で行っている。“プロアクティブな法務”をグループ内に示す、一つの手段でもある。
「法務・コンプライアンスは受け身であってはならないと感じています。そのため、自社だけでなくグループの全社員がアクセスできるWebサイトを作成しました。コンテンツ企画・発信は法務室が行いますので、私たちにとってもよい学びの機会になっています。法務チームでは、恒常的に質問を受ける下請法や景品表示法等に関して理解を深めることを目的としたコンテンツを配信しています。また、コンプライアンスチームでは、ハラスメントの防止など、職場に深く関わるコンプライアンスについての情報を定期的に発信しています。そうしたテーマについて対面形式の研修はもちろんですが、ポータルサイト上でのウェビナー開催、Q&Aを掲載するなどして、必要情報の周知を図っています」(磯貝氏)
薛氏は、法務室を「風通しの良い風土です」と言う。
「困ったことがあれば、すぐに相談できる環境ですし、周りの先輩たちも常に目配りしてくれています。とはいえ、そうした環境に甘えることなく、早く“独り立ち”できるようになりたいです」(薛氏)
「自己研鑽に熱心なメンバーが揃っていると思います。例えば、法務室に配属されたメンバーは、比較的早い段階で『ビジネス実務法務検定』を受検するという慣例があります。誰かに強制されているわけではなく、当たり前のように皆、受けるんですね。私も異動して3カ月目の頃、2級を受検しました。そのために自学自習しますから、法務に関する知識をずいぶんとためることができました。すると今度は、実務に照らして知りたいことが次々出てきますので、そこを先輩たちに確認するといった機会が、異動した年は多かったですね」(磯貝氏)
同社は、20年に子育てサポート企業として厚生労働省の「プラチナくるみん」の認定を取得している。また、23年には6年連続で経済産業省の「健康経営優良法人~ホワイト500」にも認定。年次有給休暇の取得推進、不要不急な時間外労働の削減、育児・介護休暇を取得しやすくする環境整備などに積極的に取り組む。ちなみに、法務室の男性育児休業取得率は100%。在宅勤務は、週1回をめどに各自の実施を推奨する。働きやすい環境があるから、自発的に学び、仕事にまい進できる――それが同社法務室の風土のベースになっている。