“従来の考え方、やり方を突破する”を掲げる同社の仕事の一例を、沖田亜希子氏にうかがった。
「以前は事業部に駐在していましたが、現在は本社部門で主に国内事業再編やM&A、出資案件などに携わっています。いわば“成長の種”を育てるフロンティア分野の新事業支援で、近年携わったのは、医療データをベースとしたビッグデータ分析を行う新規事業立ち上げサポートです。18年の次世代医療基盤法(通称)施行に伴い、ヘルスケア事業の立ち上げが企画された際、医療情報の収集・加工・提供等を行う企業と資本業務提携を行い、電子カルテデータの匿名加工・データベース構築を共同で推進しました。当該企業に対しては段階的に出資比率を引き上げ、23年1月に連結子会社化しています。当社では過去に医療データを扱ったことがなく、当時は規制法に基づく認定事業者もまだ存在していないなかでの挑戦です。どのような要件なら認定が取れるか、その可能性がある企業はどこか、どの企業と組めば事業展開できるかといった検討を、外部法律事務所の弁護士も交えて事業部門のメンバーと議論しながら進めていきました。立ち上げから医療データ分析・提供サービスのリリースに至るまで、規制法の確認や業務提携先の検証、出資やM&Aの検討など、“総合的な法務の力”を発揮でき、やりがいの大きな案件となりました」
同グループが注力するのは、そのようなDX、SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)分野など新規事業分野への挑戦と、もう一つが事業のさらなるグローバル化だ。この10年でグローバル案件が急激に増え、今ではグループの海外売上高比率は約3割、海外拠点数は150以上。シンガポール支社への駐在経験がある浦野慎一郎氏は、仕事の醍醐味をこう語る。
「グローバルセキュアとグローバルパッケージの2つが、現在の当社のグローバル重点事業です。前者を例にとると、中核子会社のTOPPANネクストを軸に、18年頃から積極的に買収や出資を行い、事業拡大しています。同社にはチーフリーガルオフィサー(CLO)がいるので、密接なコミュニケーションを取りつつ、様々な買収案件のデューデリジェンスから契約までをサポート。買収案件はアフリカ、南米、UAEなど世界にまたがり、今でも年間で5~10件程度の買収案件が上がってきます。日々条件が変更され、交渉が続くなかでも、しっかり状況を把握するため、関連企業のCLO、法務担当、現地弁護士などとのコミュニケーションは欠かせないものとなります。グローバル展開をしている子会社は意思決定スピードが非常に早く、的確かつ正確に戦略をキャッチアップするのは大変ですが、その分、鍛えられていると感じます。また、私のチームは全世界をカバーしてグローバル案件に対応しますので、各国の担当者と対話できることもモチベーションの一つといえますね」
沖田氏と浦野氏の例は本社部門の仕事。事業部法務部門の仕事について、大野郁英氏にうかがった。
「私は24年3月まで、パッケージなどを扱う生活・産業事業本部の事業法務部門を担当していて、北米、欧州、インドなど海外企業の大型買収案件に関与しました。出資案件や工場建設などの支援も、本社部門・海外チームの浦野と協力しながら行いました。多くの案件に関与して得た知見を元に、PMIを含めた買収の流れ・ノウハウをパッケージ化(データベース化とノウハウの共有)。社内に有益な知見を蓄積できたことも成果だと思っています」
事業部法務部門は“前例がないグローバル案件”にも携わる。
「ビジネスの最前線にいるのが事業部法務部門といえます。スピードを意識し、アウトプット・インプットの方法を工夫しながら、事業本部長など事業部トップに伴走できることにやりがいを感じています」(大野氏)
大野氏は現在、コンプライアンス部を統括する立場にある。
「これまで業務を通じて、各国の法制度・商習慣・文化の違いなどを学んできました。その経験を踏まえつつ、急速に広がる海外子会社・拠点などと連携を深め、法務本部としてグローバルのコンプライアンス体制整備をしっかり行っていくことが喫緊の課題であると考えます」(大野氏)