同社では、2021年から24年までの中期経営計画で「持続的成長を実現する体質への転換」を掲げる。そのなかで、成長ドライバーとしているのが”海外市場”だ。ビジネス法務チームの井上健治氏に、関与した案件をうかがった。
「当社は15年頃から、米国や欧州で世界戦略商品である『キユーピーマヨネーズ』『深煎りごまドレッシング』の販売に注力しており、”KEWPIEブランド”の浸透を図ってきました。現在、米国、欧州、アジア、オセアニアといった海外市場でのブランド人気が非常に高まっています。これを受けて”サラダ調味料市場で世界最大”である米国での体制強化を狙って、子会社の改組、加えて工場の新設を進めています。一方、オーストラリアでは、オセアニア地域初の現地法人を設立。こうした積極的な海外事業展開に伴い、海外案件比率が増えてきたため、国内外の弁護士の協力を得ながら、法務が調整・サポートを担います。また、部長の神田は海外本部の担当部長も兼務しており、海外案件の動向をかなり早い段階からキャッチし、実効的なアドバイスができていると自負しています」
国内市場については、「原価高騰などの社会的要因も相まって、食品業界全体で価格交渉・価格転嫁について公正取引委員会の調査活動などが強化されているので、誠実に対応していかねばならない」と、井上氏。
「独占禁止法(独禁法)や下請法上、疑義や”抜け漏れ”が生じないよう、社内教育を徹底しながら、ビジネス現場をサポートしています」(井上氏)
「食品を扱う企業ですから、お客さまの安全・安心を守るための食品法令の遵守は絶対です。加えて、マヨネーズというトップシェア商品を持っているので、独禁法・下請法も非常に重要。『知らずに行ってしまった』というミスを起こさないために、社内教育に力を入れていますが、これについてはビジネス法務チームの若手メンバーに、あえて任せています。彼らは、『下請法に関する担当者を各社において勉強会を開催しよう』『チェックリストを作成しよう』など、様々なアイデアを出し、かたちにしてくれています。おかげでこの2~3年は、独禁法・下請法に抵触していないかのチェックをグループ各社が自主的に行う流れができています。若手メンバーのやる気も向上しており、任せることの大切さを実感していますね」(神田氏)
川村氏に、コーポレート法務チームの業務についてうかがった。
「取締役会やガバナンスというと、定型的な業務が多いイメージかもしれません。取締役会は、経営に貢献し、実効性のある会議体であることを社会から強く求められていますから、その実効性を高める施策を私たちなりに試行錯誤しています。例えば、取締役会で議論すべき経営上のテーマを年間で決めて、事務局から提案し、議事に組み込む。議論できる状況を、経営企画など他部署のメンバーと協働で組み立てていくといったことを、コツコツと行っています。加えて、グループ会社の取締役会の実効性向上も目標としており、本社からグループ会社に派遣される役員やグループ会社社長に対してガバナンスに関する勉強会を行っています。そうした地道な活動の積み重ねのおかげもあり、『取締役会の中で積極的に経営課題を話し合える雰囲気をつくってくれて助かっている。有効な話し合いができるようになった』といった評価もいただきました。試行錯誤が実を結んだことの喜びや、やりがいをチームメンバー全員で実感しています」