同社は23年5月、三菱ふそうトラック・バス株式会社との経営統合に向けた基本合意に達し、現在その統合プロセスが進行中である(24年10月時点)。「経営統合プロジェクトの検討が進むにつれて法的な業務は増えていきます。法務部内のメンバーは全員、新しい未来をつくるために、主体的に取り組んでくれています」と、河野氏。そうした経営統合や新規ソリューション事業など大規模プロジェクトの支援が複数進行するなか、23年9月に即戦力で入社したのが保科佳希氏だ。保科氏に、法務部でのやりがいをうかがった。
「印象深いのは、24年6月の株主総会業務に携わったことです。以前は司法書士事務所に勤務する司法書士でしたので、中小企業の株主総会の議事録作成といった後方支援的業務は経験してきました。しかし、事業会社の一員として、法務部やコンプライアンス推進部のメンバーとチームを組んで“一からつくり上げていく”経験は初めて。招集通知や議事録の記載に法的問題がないか一言一句に気を配り、招集通知のデザインを検討するといった細かな部分まで全員でやりきれたことは、得難い経験となりました」
株主総会関連業務は、関連部署のメンバーとの協働も多い。
「総務部など他部署との連携、社長や取締役との頻繁な対話などで、事業会社の法務の醍醐味を実感しました。事務所時代はクライアントを“外側から支援する”といったサポート経験しかありませんでしたが、この業務を通じ、ビジネスの当事者として主体的にかかわる面白さを知りました。私自身の経験値が高まったことを、実感しています」(保科氏)
会社法の知見を有する保科氏。株主総会関連のほかに、今後は別の業務にも挑戦することになる。
「私たちは会社法をはじめ、独占禁止法、下請法、海外での契約関連など様々な法律・分野をカバーします。そのため、法務部内では一定期間で業務ローテーションを実施。チームのメンバーにも、会社法以外の法律・分野で多くの経験を積んでもらいたいと思っています」(河野氏)
「当部も同様で、人数が足りないという事情はあるものの、人財育成の観点からも、部内ローテーションや法務部との協働を行っています。コンプライアンス推進とは、突き詰めれば“人の行いや人そのもの”を見て、“人づくり”にかかわっていくこと。そのためには自らの視野を広げる必要がある。例えば当部なら“内部通報対応”だけを担当するのではなく、法務部で株主総会に向けた実務も学んでもらう。そのようにして双方の業務領域で経験を積み、各自スキルを高め、視野を広げていってほしいですね」(佐々木氏)
保科氏が転職して得たものはもう一つ、ワークライフバランスの充実だ。
「当社は、23年5月からオフィス勤務とリモート勤務を組み合わせたハイブリッドワークを導入し、場所にとらわれない柔軟な働き方を推奨しています。私には保育園に通う娘がいるので、共働きの妻と協力しながら育児をするなど、家族との時間を持てるようになりました。『みんなが働きやすい環境をつくっていこう』という風土で、管理職の方々が率先してリモート勤務を行うので、フレックス制度を含めて、働き方を選択しやすい。子育て世代の私にとっては、とてもありがたい環境です」(保科氏)