Vol.92
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法務室には現在12名が所属する。内訳は小田法務室長のほか、HR Tech法務グループに5名、Incubation法務グループに4名、知的財産グループに2名という配置。また、弁護士は4名で、全員60・70期台。札幌、大阪の法律事務所出身者も

法務室には現在12名が所属する。内訳は小田法務室長のほか、HR Tech法務グループに5名、Incubation法務グループに4名、知的財産グループに2名という配置。また、弁護士は4名で、全員60・70期台。札幌、大阪の法律事務所出身者も

THE LEGAL DEPARTMENT

#162

ビジョナル株式会社 法務室

“事業のための法務”を追求する過程で自分自身の成長を実感できるチーム

〝人づくり〟への思いで組織を運営

即戦力人材と企業をつなぐ転職サイト『ビズリーチ』や、人財活用プラットフォーム『HRMOS(ハーモス)』をはじめとするHRTech、物流、M&A、サイバーセキュリティなど多様な領域で事業を展開するVisional。「新しい可能性を、次々と。」というミッションを掲げ、インターネットの力で様々な社会の課題を〝新たな可能性〟に変えていくことを目指す。その大胆な事業展開を支える法務室室長の小田将司氏に、法務室の構成をうかがった。

「当室は、株式会社ビズリーチの各事業を担当するHR Tech法務グループ、インキュベーションの各事業を担当するIncubation法務グループ、知的財産グループで構成しています。知的財産以外は、担当事業ごとに、コンプライアンスや商事法務を併せて見ていくかたちです。この体制は、2024年8月から始動しています。以前は効率性を重視し、事業、コーポレートと大きく2つのグループに分けて〝分業〟していましたが、それでは直接的に事業に携われないメンバーが出てきます。

私たちは〝事業のための法務〟をモットーとしているので、その価値観の浸透を確実に図っていくため、全メンバーが事業を経験し、理解することを目標に、組織体制の変更を行いました。また、そのように事業に携わりつつ、多様な法務領域の業務を担当することによって、法務パーソンとしての〝個人の成長〟も促していきたいという思いもあります」

小田氏が〝事業のための法務〟という価値観の浸透と、個人の成長を掲げて新たな組織づくりに注力する背景には、自身のキャリアをめぐる思いもある。

「以前勤務していた法律事務所で、3年ほど経った頃から、『外部アドバイザーという立ち位置が自分の性に合わない』と感じ、キャリアについて猛烈に悩みました。とはいえ、弁護士にとって事業会社への転職は〝遠い存在〟だと思っていたので、決断したのは数年後。

遠回りしたとは思いませんが、学生時代などもっと早いタイミングで自分自身のキャリアを真剣に考えるべきだったと振り返ることもあります。そのように、私自身が仕事で悩んだことが契機となり、『人の一生にかかわる仕事に就きたい。そこに人生を懸けてみたい』と思い、今の会社に転職しました。そういった自分の転職理由もあり、〝個人の成長〟や〝個人の幸せなキャリア選択〟に目が向くようになったと思います」

ビジョナル株式会社
小田氏(左)と、HR Tech法務グループ・マネージャーの中山悠氏(右)、Incubation法務グループ・マネージャーの松本慎太郎氏(中央)

事業を育てる喜びを一人ひとりが体現

実際に、法務室ではどのような業務に携わるのかをうかがった。

「例えばHR Tech法務グループが担当するHRのマーケットでは、人的資本への投資や生産性の向上の重要性が叫ばれるなかで、法規制の内容自体が時代の流れに合わせてダイナミックに変化している過程にあり、必ずしもルールが明確ではない状況で事業を推進しなければならない場面に多く直面します。そのようななかでは、官公庁とのやりとりを含めて、表面的な法規制の文言だけではなく、その背後にある法の趣旨を正しく理解し、事業が実現したいことを適切に位置づけるといったプロセスを常に行い続ける必要がある。どの教科書にもガイドラインにも書いていない論点にぶつかることも多く、法の趣旨や社会からの期待を思考しながら自分たちなりに法律を解釈し、独自に進めていく必要もあります。これは苦労も多い一方で、大きなやりがいがあります。外部の専門家の力を借りることも必須で、自分たちにない部分を補っていただいているのですが、専門家の先生方でも経験したことのない領域に直面することもありますし、社内で議論した内容が間違っていなさそうだと感じられることも多く、『自分たちは最先端のビジネスに携わりながら、専門的な面においても着実に成長できている』と、実感して嬉しい気持ちになります」

同社では近年、生成AIを活用した新規ビジネスや施策が、事業側から次々と提案されている。

「生成AIの活用は当社の重点課題であり、関連特許の出願件数は国内トップクラスを誇ります。私たちは、例えば個人情報の規制トレンドを注視しながら、データ利活用の可能性を模索し、専門書などに示されていない課題についても徹底的に議論を重ねます。生成AIにおいてもまた、適切にリスクを取りつつ、新たなビジネスを軌道に乗せるべく、事業部とともに推進しています。このように、私たちの業務では、常に社会に責任ある立場として適切な対応を維持しながらも、事業が実現したい未来に向かえるように、〝できる理由〟を考え抜くことが求められているのです」

同室の3グループが担当する事業は10以上。「しかも各事業で新規ビジネスが立ち上がり、ものすごい勢いで新しい可能性が検討されているので、キャッチアップだけでも大変です」と、小田氏。そのため昨年から、新たな取り組みに挑戦し始めた。

「マネージャーではない法務室の有志が中心メンバーとなって、かつて定めていた『十戒』という行動指針をリニューアルするかたちで、『法務室Value』を新たに定めました。私たちがモットーとする〝事業のための法務〟を『事業の価値を最大化し、社会課題を解決することであり、法務はそのための一つのファンクションである。事業に携わる仲間とともに、事業が描く未来にコミットしよう』と、改めて定義しました。その実現のための行動指針等をいくつか定めています。なかでも重視しているのが〝Dive(好奇心をもって事業に飛び込む)〟です。日常から事業に入り込み、〝法務に詳しい事業の人〟になることが理想であるとしています。例えば、週1回事業部に席を置いて仕事をしたり、商談に同行したり、定例会議に出席して、そこで議論された内容を法務室に持ち帰って共有したり。法務室のメンバー自身が、事業へのDiveの仕方を各自で発案し、楽しみながら仕事に臨んでいます。そのような行動・考え方――〝価値観の浸透〟が一歩ずつ進んできているのが、とても喜ばしいです」

  • ビジョナル株式会社
    多様な働き方を推進する同社。(写真は、2024年に開業したばかりの「渋谷アクシュ」に新設された、オフィスエントランス)
  • ビジョナル株式会社
    リモートワークやフレックスタイム制により、自身のライフスタイルに合わせた生産性の高い働き方が選択できる。一定の条件を満たせば、副業および弁護士の個人事件の受任も可能

代が替わっても残るカルチャーを育む

同社では、M&A、物流DX、サイバーセキュリティなどの新規事業領域が拡大しているため、特にIncubation法務グループの強化が急務だ。その局面で、専門性の高い弁護士の力も求められている。

「私自身、事業会社に転職するにあたって不安だったのは、多種多様なクライアントと案件に囲まれる法律事務所の環境と比べると、一つの会社の法務部に入ってしまうと、法律家としての成長の機会が狭まってしまうのではないかということでした。しかし当社は、多様かつ新しい事業領域の法務に携わることができます。また、アーリーフェーズの事業もあれば、『ビズリーチ』のように、ある程度成長している事業もある。一社のなかで、事業会社の法務として相当に幅広い経験が積めるという特徴を持った会社です」

法務室内の業務ローテーションや他部署への異動など、同社ではキャリア形成していくための機会が十分にある。その際に小田氏が重視するのは、自発性だ。「その人のなかにある意志と、それを実現するためのコミットメントを引き出すことに心をくだいていきたいと思う」と、〝働く人が主体〟の環境づくりに力を注いでいる。

そんな小田氏に、法務室の展望をうかがった。

「私は〝事業のための法務〟の究極形は〝事業に溶け込んでいる法務〟だと考えます。言い換えれば、法務室のメンバー一人ひとりが事業CLOのようなかたちで、各事業のトップから『困った時にはこの人に』と、頼られる存在になることが理想。そこに至るまでの〝途中の目標〟として、メンバーには『事業に詳しい法務の人ではなく、法務に詳しい事業の人になってほしい』と、伝えているわけです。そんなふうに、高い専門性を身につけながら事業に飛び込んでいけるチームであり続けたいですし、そうした風土がしっかり根付いて長く続いていくよう、〝カルチャービルディング〟に注力していきたいと思っています。カルチャーというのは、『当たり前の水準』と言い換えてもいいかもしれません。例えば、学生スポーツの伝統強豪校は、面白いことに代替わりしてチームメンバーが入れ替わっても、多少の波こそあれ、やはり強いということが多い。継承され続けている当たり前の水準が高いから、人が替わっても勝ち続けられるのだと思っています。それと同じように、どれだけ年数を経てメンバーが入れ替わっても、『ビジョナルの法務はどこよりも〝事業のための法務〟を体現する組織』と形容されるような、素晴らしいカルチャーを育んでいきたいと思います」