弁護士会の取組み:バックナンバー

弁護士会の取組み

アトーニーズマガジン 弁護士会の取組み

地域司法計画を策定・推進する各地の弁護士会。地域に密着し、よりよいリーガルサービスの推進・向上のために活動を続ける各地の弁護士会の取り組みについて 、各弁護士会の会長よりお話を伺いました 。

青森県弁護士会

青森県弁護士会 会長 沼田 徹氏

修習生や着任者を法曹3者で歓迎し、弁護士会へ県外からの入会が急増中

ひまわり基金法律事務所と法テラス法律事務所誘致で規模を拡大

「リンゴ」「ニンニク」の名産地である青森県は、「大間のマグロ」「ヒラメ」などブランド海産品でも有名だ。白神山地・八甲田山・十和田湖など名勝の地が多いこともよく知られるところ。豊かな恵みをもたらす広大な県土に人口は約143万人(※1)と少なく、長らく弁護士の過疎県でもあった。過疎解消に取り組んできた青森県弁護士会の現況を沼田徹会長に取材した。 青森県弁護士会は過疎解消に向けて、ひまわり基金法律事務所と法テラス法律事務所の誘致を積極的に進めてきました。その結果、ひまわり基金法律事務所は十和田・五所川原・むつ・三沢の4市に置かれており、法テラス法律事務所は青森と八戸の2カ所にあります。会員数も急増し2010年現在で84名(女性6名)。日本一の弁護士過疎県といわれたのはかつての話で、東北地区3番目の規模まで拡大しました。それでも、むつ市や十和田市などは、まだ人口当たりの人数が少なく、さらに弁護士が必要だととらえています。 会員構成は10期台までが11名・20期台7名・30期台9名・40期台4名・50期台23名・60期台30名となっており、60期以降の比率が全体の約36%に達しています。若手会員が増えたことで委員会活動も活性化し、当会の花形委員会である消費者問題や私が委員長をやっている高齢者・障害者問題の会は60期以降が多数参加。また休眠状態だった委員会も活動を再開しました。 当弁護士会の特徴として「分散型」組織であることが挙げられます。県面積が広いこともあって弁護士が青森・弘前・八戸の3エリアに分散しているのです。これは数十年続いている傾向で、分布状況では本庁管内の青森(むつ下北地区含む)が36名、弘前支部(五所川原地区含む)21名、八戸支部(十和田・三沢地区含む)27名となっています。そのため委員会活動においては3地区から偏りなく委員を選出し各地区の意見が反映できるように配慮し、さらに支部メンバーに本庁までの交通費を支給して、活動参加を促進しています。各支部の発言力が高く3弁護士会連合会のようだといわれた時期もありましたが、徐々に弁護士会の一体性は高まっています。 そんな青森県で弁護士が扱う事件はほとんどが民事。内容では「過払い問題」が圧倒的に多く、地裁の訴訟事件10件のうち8件が過払いです。そのほかでは離婚、遺産分割、債務整理、また行政への住民訴訟などがあります。県内の上場企業は数えるほどしかないため企業法務は多くありません。扱う事案のほとんどが民事というなか裁判員裁判は多く、東北の他県に比べて4倍から5倍の件数になっています。 少し意外に思えるところでは「弁護士一人当たりの訴訟事件が全国一多い」というデータがあります。2008年4月時点における「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書(最高裁判所事務総局)」によれば、青森県では弁護士一人当たり37・3件の事件を扱い全国1位。東京3・5件の10倍以上です(※2)。データ集計時の弁護士が64名であるため、数値は若干下がっていると思いますが需要があることは間違いのないところ。また弁護士一人がカバーする面積が全国で5番目に広いというデータもあり、弁護士活動は自動車が中心になっています。本庁管内からでは八戸方面は特急による列車移動のほうが便利ですが、そのほかの弘前・五所川原・十和田方面へはクルマのほうが断然早く移動できます。しかし冬場の降雪時は1・5倍ほど時間を要します。一方、東京へは意外と出やすくなっており、青森空港へのアクセスが良いため空路なら2時間ほど。12月に東北新幹線「新青森駅」が開業することで陸路の移動もよりスムーズになると思われます。

外から来る人を歓迎する風土。弁護士の半分以上は他県出身者

在籍会員84名の出身を調べたところ、青森県出身者は半数に満たないことがわかりました。修習で青森に来て定着するケースが多く、そういうメンバーに何が魅力かを尋ねると「自然がいい・人もいい・食べ物がおいしい」という答えが返ってきます。私見ですが、住宅家賃が安く職住近接ができることも大きいと思います。また長らく過疎であったため、弁護士を全員で歓迎する風土があることも魅力ではないでしょうか。他県ではあまり見られない交流だと思いますが、「裁判所・検察・弁護士会」の法曹3者が、合同で修習生や着任者の歓迎会を行っています。送別会も同様です。法曹3者の交流は当県では伝統的に行われていること。裁判の場で手加減するというようなことは絶対にありませんが、基本的な部分で人間関係ができていることで、事件解決の早期化や和解の促進にもつながっているのではないでしょうか。

若手をサポートする環境の整備と各支部の強化が当面の目標

弁護士会内部でも懇親会などの親睦(しんぼく)は盛んに行われています。また中堅以上に当たる弁護士の「面倒見が良い」こともうれしい特徴で、宴席・飲み会にとどまらず、日常的に後輩に声を掛け、さまざまなアドバイスを行っています。そういう個別サポートに加えて、会としても若手支援に熱心に取り組んでおり、その中心を務めているのが総務委員です。困ったときに相談できることが「顔の見える弁護士会」の長所なので、総務委員が日々の相談事にきめこまかに対応しています。そのほか中小企業センターの研修会などスキルアップの支援も行っています。振り返ってみると2003年からの7年間で会員42名から84名へと倍増。ここ2年は20名増というハイペースです。都心部の就職難などを背景に今後も会員が増えることが予想されるなか、当弁護士会としては前述のようなサポートをさらに充実させていくつもりです。また市民により良い法的サービスを提供するため支部強化も図ります。この7月と8月に八戸と弘前の支部会館が相次いでオープン。これにより各種相談に対応する機能の充実が期待されます。 脚注 ※1/人口143万6657人は全国28位(2005年10月現在)、県の総面積9,644.21平方キロメートルは全国8位(2009年10月現在)。ともに青森県ホームページより。 ※2/各地裁管内別の弁護士一人当たりの新受事件数(民事第一審訴訟事件)。

■プロフィール

  • ● 所在地
  • 〒030-0861 青森県青森市長島1-3-1 日赤ビル5F
  • http://www.ao-ben.jp/
  • ●会員数:84名 (2010年7月末現在)
  • 青森本庁………36名
  • 弘前支部………21名
  • 八戸支部………27名