現在、同事務所の取扱分野は、訴訟、裁判外紛争解決、危機管理、コーポレートガバナンス、M&A、事業承継、事業再生など多岐にわたり、それぞれに専門性を有する弁護士が所属する。しかし、「法律事務所の本質的な強み、価値の源泉は、業務分野などではなく、やはり“人”です」と、大宅弁護士。
「法律事務所は、ものを作って売るわけではありませんから、やはり人で成り立つものだと考えます。人が成長すればアウトプットの質が向上し、それが組織の成長をさらに加速させると考えています」
同事務所は始動するにあたり、内部の構成員の“あり方”を示した8つの「ミッションステートメント(綱領)」と、依頼者に対してどのようにして価値を提供するかの“方法論”を示した8つの「Our Way(流儀)」を掲げた。大宅弁護士は、これらの策定にあたり、これまで出会ってきた尊敬する弁護士に通底するポリシーを想いながら、材料となるベースを作成。そこから所内の全員で練り上げて、ミッションステートメントと流儀をかたちにしていった。
「例えばミッションステートメントの一つとして掲げたのは、ありきたりかもしれませんが、『PASSION-情熱-』です。私たちは自らが弁護士という職業を選択し、日々の業務を選択して取り組んでいます。つまり、好きな仕事をしているのだ、と。だから、常に内発的な情熱を持って、最善を尽くすべきだと思っています」(大宅弁護士)。
「その“好き”を言い換えると、“恐れないこと”でもあると考えます。それこそが我々の強み。ほかの実務家が恐れるような困難を恐れない、世の中の多数の傾向に反することを恐れない――など、恐れには様々な種類がありますが、常にそうしたものを持たず、仕事に向き合える弁護士でありたいと思うし、自分たちはそのような弁護士であると信じたいのです」(大江・田中両弁護士)
最後に、大江弁護士と田中弁護士に、これから弁護士を目指す人や、若手弁護士へのメッセージをいただいた。
「目の前の仕事に全力であたるのは当然ですが、その際、心がけてほしいのは、法律的な問題点、面白いと思った点を見つけて、それらを継続的に研究・追求し続けるということ。長く続けるほどそれが自分の力になっていきます。事件処理だけで名が知られる実務家というのは案外少ないもの。小さなことですが、とても大切なことだと私は考えます」(大江弁護士)
「ありふれていますが、志を持ち続けること、それが最も大切。そして、二律背反に思えるかもしれませんが、ジェネラルなリベラルアーツと自分自身の専門分野の探求を日々心がけること。“社会に価値を残す”法律家になるには、その両方で自分をつくっていく必要があると思います」(田中弁護士)
※取材に際しては撮影時のみマスクを外していただきました。