“重点テーマ”の内容について、各担当者にうかがった。江尻紀之氏は、垂直規制を中心とした競争法を担当する。
「競争法に関するグループ全体のコンプライアンスプログラムの作成、展開を行っています。一つのプログラムをつくる過程で、国内外の事業部門の担当者へのヒアリングや導入に関する多くの議論が行われます。様々な立場の方の理解を得ていくことは大変ですが、やりがいのある仕事です」
即戦力で入社した矢吹直帆子氏の担当分野は、契約書管理だ。
「“グローバルに事業の拡大・発展を牽引する”という意識が浸透しつつあるなかで、従前から法務部が取り組むべき課題としていたのが契約書管理です。そこで、契約書を作成してから廃棄するまでの一連のプロセスを明確化しました。当社では、法務部が契約書を一元管理せず、契約にタッチする様々な部門が、部門最適で管理を行ってきた経緯があるため、遵法を前提として各組織の特徴・需要を踏まえて管理方法を統一していくことは、難しいと感じました。契約書管理については、海外のグループ会社も含めて“グループ全体の契約管理ガバナンス向上”を目的とした取り組みなので、法務部だけでなく、様々な部署やグループ会社と連携しながら進めています」
大須賀部長は言う。
「契約書は我々が全件管理するのではなく、活用する“事業側に置く”という考え方です。当社の文書管理はBCPでも業務効率化でもなく、リスク管理(情報管理)。経営会議での審議を繰り返し、その責任部門が法務部となってからは、『文書管理規定をつくる。最も重要な文書である契約書の管理をしっかりやる』と決めたわけです。契約書管理がきちんとできれば、その情報を活用して、効果的かつ多角的に予防法務のアプローチが検討できます。この長期スパンとなる計画のスタートからかかわってくれているのが、矢吹です」
同じく即戦力入社の宮原秀隆氏(64期)は、腐敗防止担当だ。
「私は、贈収賄防止コンプライアンスを担当しています。グローバルでのコンプライアンスプログラムを一からつくり、どのように浸透させ、どのようにリスク管理していくかという一連の流れすべてにかかわれる。業務遂行においては、裁量を持って、周りを巻き込みながら進捗できる点にやりがいを感じています」
同部ではこのように、一人ひとりが自分の担当分野において一定の自己裁量を持ち、プログラム作成などで規程の基盤整備を進めている。大須賀部長は、「一人ひとりのバックグラウンドやキャリアプランなども話し合いながら、担当分野ごとに適するメンバーをアサインしていきます。各自が担当業務を推進するうち、様々な気づきが出てくるはず。自身で課題を認識し、次のステップに進むための計画を立てていく――そんな能動的な組織として成長していくことを期待しています」と語る。