Vol.93
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左から、船井厳弁護士(77期)、山岸哲平弁護士(63期)、平島有希弁護士(66期)、増田啓佑弁護士(72期)、増田英次弁護士(42期)、瓜生 容弁護士(64期)、加藤祐大弁護士(65期)、植木悠介弁護士(66期)

左から、船井厳弁護士(77期)、山岸哲平弁護士(63期)、平島有希弁護士(66期)、増田啓佑弁護士(72期)、増田英次弁護士(42期)、瓜生 容弁護士(64期)、加藤祐大弁護士(65期)、植木悠介弁護士(66期)

STYLE OF WORK

#195

増田パートナーズ法律事務所

依頼者と深い信頼関係を築ける“人間力”の高い弁護士を育成する

〝伴走者〟として長く頼られる存在に

企業法務を中心に、企業間訴訟、M&A、知的財産権、国際案件などを取り扱う増田パートナーズ法律事務所。設立15周年を迎えた2023年に所員全員で話し合い、元々あったビジョンを「尊敬し合える関係のもと、一つ一つの課題に向き合い、新たな未来を創造する伴走者となる」へとブラッシュアップした。〝尊敬し合える〟という言葉に込めた思いを、代表の増田英次弁護士は、こう語る。

「M&Aや紛争の局面において、当事者――特に経営者層は、法的リスクだけでなく、孤独感や精神的負担を抱えることが少なくありません。未知の領域に踏み込む挑戦、社内外の人間関係、決断に伴う責任といった重圧は、法的な正解だけでは拭えません。そのような状況下で、我々弁護士に求められるのは、法的助言のみならず、依頼者の心に寄り添い、『この人がいてくれてよかった』と満足してもらえる存在であること。私は米国で、コンサルティング、コーチングなどの技術を駆使して依頼者を支えることで、〝一流〟と呼ばれる弁護士を数多く見てきました。我々も彼らのように、依頼者と深い信頼関係を築き、〝人として尊敬してもらえる弁護士〟であり続けたいと思います」

実際、上場企業の経営者をはじめとする多様な依頼者から、経営と現場の両方に寄り添う〝ビジネスの伴走者(パートナー)〟として、長く頼られている。

増田パートナーズ法律事務所
パートナーはアソシエイトに目配りし、業務分野に偏りがないよう配慮する。「仕事から逃げない。人任せにしない」の“誠実さ”を重視して採用した仲間を大切に育てる

〝唯一無二〟の仕事で存在感を示す

同事務所の特徴は、少数精鋭かつ高い競争力を有していることだ。

「基本的に、我々が取り扱うのは、企業法務系の法律事務所の多くが手がける、いわばレッドオーシャンと言われる業務分野です。しかし、少人数で集中して質の高いサービスの提供に取り組み、〝適正なコスト・スピード・正確性〟を維持することで、十分な競争力を確保しています。また、当事務所の弁護士は全員、『〇〇弁護士に頼むと何かが違う。頼んでよかった』と依頼者に言っていただける〝人的魅力〟を備えていると自負しており、それも競争力を高めている大きなポイントになっていると思います」(増田弁護士)

もう一つの特徴は、その〝レッドオーシャン〟から、〝ブルーオーシャン〟を見いだしている点にある。増田弁護士は、「エモーショナルコンプライアンス」と名付けた独自概念・理論の実践者として知られる。誰もが手がけるコンプライアンスという分野において、増田弁護士にしかできないアプローチで、名だたる企業の研修や制度設計を支えているのだ。

「試行錯誤を繰り返し、約20年かけて確立した私なりのコンプライアンスの概念です。ここ5、6年で大手企業の導入が増え、多くの方に知っていただけるようになりました。こうした独自性の強い分野を事務所の弁護士全員が持てるよう、『自分にしかできない分野を見つけ、磨き、専門性を高めていこう』と、日々伝え続けています」(増田弁護士)

とはいえ、同事務所のパートナーは、すでに各自が得意分野を有している。例えば、加藤祐大弁護士はM&A、小林康恵弁護士は知財・エンターテインメント、平島有希弁護士は労働関連法だ。事務所のホットトピックを、加藤弁護士に伺った。

「私の得意分野のM&A領域でいうと、事務所全体としても私個人としても〝同意なき買収〟が、昨今注力しているテーマです。いわゆる買収指針公表以降、〝敵対的買収〟と呼ばれていたものが再定義され、実務の流れが大きく変わり、企業の経営陣が検討すべき論点も量・質ともに増えています」

そうしたなかで加藤弁護士は、どのように依頼者と接するのか。

「今は過渡期であり、プラクティスの蓄積がまだ十分ではありません。だからこそ、経営陣がどのような視点で何をどう議論すべきかなど、〝具体性のあるアドバイス〟が求められていると感じています。そのうえで私自身が重視するのは、『一度、法律論から距離を置いてみること』。例えば、上場企業に対する同意なき買収において『公開買付価格が高いから、(ただその一事をもって)賛成すべきだ』という考え方は、間違ってはいないかもしれない。しかし、実際の意思決定には、それだけでは割り切れない複雑な要素が存在します。そんな時、私はクライアントの組織の一員になったつもりで、リスクを取ってでも『どのように動くべきか』という具体的な道筋を示すことを意識したアドバイスをしています。〝頭でっかちな法律家〟が苦手とする実務の最前線に、あえて踏み込むようにすることが重要だと思っています」

続いて増田弁護士に、〝前例のない取り組み〟となる注目すべきトピックについて伺った。

「我々は現在、シンガポールの法律事務所Drew & Napier LLCと連携し、日本およびアジアの投資家の代表の立場で、スイスの金融機関クレディ・スイスが発行したAT1(Additional Tier1)債の無価値化に対しての国際仲裁申立てを準備しています。この申立ては、スイス政府・日本間の投資保護協定に基づき、『スイス政府の措置が投資家の権利を侵害した』と主張するものです。日本では当事務所が初めて着手する、〝外国政府を訴える〟という前例のない方法を考えついたのは、シンガポールなど海外の弁護士・法律事務所とのネットワークがあったから。早い段階で情報を得て動くことができました。国際紛争もいわゆる〝レッドオーシャン〟の分野ですが、このように目のつけどころを変えるだけで、まだまだできることはあります。小規模な事務所だからこそ、機動力を持って新たな分野に挑戦できる――その特徴がよく表れた案件です」

増田パートナーズ法律事務所
増田弁護士は、プロ写真家の顔も持つ。「“エモーショナルコンプライアンス”のアイデアも、撮影時に思いつくことが多い」(増田弁護士)。本業以外の“引き出し”を多数持ち、“人として信頼される魅力的な弁護士”を体現している

真に優秀な弁護士が有する能力とは

同事務所では案件単位でチームを組成するため、若手弁護士は全パートナーと協働できる。案件の内容・規模によるが、パートナーと若手弁護士2名で対応するケースが多い。加藤弁護士は言う。

「パートナーのスキルやスタイルを吸収することも大切ですが、ビジネス交流会や趣味の集まりで〝人と合う〟〝本を読む〟など何でもよいので、『〝新たな場〟に触れて、インプットする時間をつくりなさい』と若手弁護士に伝えています。私も増田弁護士も長時間労働をよしとしませんし、自分で自分の時間をつくれるよう、〝効率よく、生産性高く〟という働き方を推奨しています」

「『仕事以外のこともたくさんやれ』―― これは、私が若手弁護士に繰り返し伝えているメッセージです。法律実務とは一見無関係に見える活動でも、そこで得られる経験が、実務上の〝引き出し〟を確実に増やしてくれます。完璧な法理論を提示できたが、〝依頼者の本質的な課題〟は解決できなかった……これでは『手術は成功したが患者は亡くなりました』と同じ。それを防ぐのは人としての引き出しの多さ、つまり〝人間力〟以外ありません。他業種・他分野の人々とのかかわりを通じて、多様な価値観に触れる経験が非常に重要だと、私は思います」(増田弁護士)

同様の発想で、積極的に留学も勧める。「『小さな日本にとどまるな』『世界に出ること』をキャリアプランに組み込めと言い続けています」と、増田弁護士。

最後に、事務所の今後について、増田弁護士に伺った。

「弁護士20名規模を目安にしています。今は生成AIの能力が向上しているので、〝人海戦術〟のための弁護士は必要ないですし、全20名のレベルを上げていくことを、まずは目指します。弁護士1年目でも、依頼者から『頼りになる』と言ってもらえる人を育てていくことに注力したい。私がかつて米国留学時に知った、Wachtell,Lipton, Rosen & Katzという法律事務所がお手本です。陣容は、欧米の大手法律事務所の約16分の1ですが、顧客から高いリスペクトを得ていて、パートナーの平均年収は米国ナンバーワン。そのような、〝小さくてもクライアントから尊敬される専門家集団〟になっていきたいと思います」

Editor's Focus!

「Best Lawyers in Japan」「The Legal 500 AsiaPacific」「IFLR1000」などの選出歴が多数ある、増田弁護士。大手法律事務所出身で、メリルリンチ日本証券(現BofA証券)株式会社の法務部長・執行役員も務めた。弁護士キャリアの継続に悩んだ時期もあったが、「やりたいことだけやる」と決めて独立。国内外で高い評価を受けるトップクラスの“実務家”である。

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