Vol.96
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左から、毛呂直輝弁護士(67期)、立川 聡弁護士、宇都さくら弁護士(70期)。所属する弁護士は10名で4月から新たに2名が参画。米国に、提携外国弁護士もいる。また、弁護士だけでなく弁理士で医師の資格を持つメンバーも所属する

左から、毛呂直輝弁護士(67期)、立川 聡弁護士、宇都さくら弁護士(70期)。所属する弁護士は10名で4月から新たに2名が参画。米国に、提携外国弁護士もいる。また、弁護士だけでなく弁理士で医師の資格を持つメンバーも所属する

STYLE OF WORK

#202

TR & Associates法律事務所

顧客と弁護士を“時間的束縛”から解放し、真のリーガルサービスの在り方を提案

〝時間の拘束〟から弁護士自身も解放する

「新時代における新たなクライアントサービスの確立」をミッションとして、2024年10月に設立された、TR & Associates法律事務所。立川聡代表弁護士と共同創業弁護士の大熊一毅弁護士、ファウンディングパートナーの毛呂直輝弁護士、宇都さくら弁護士を中心に、12名の弁護士が所属する事務所だ(26年4月現在)。同事務所が巷間話題となったのは、企業法務系の法律事務所ながら「タイムチャージを完全廃止し、固定報酬制を導入」したことにある。立川弁護士に、そんなエッジが効いた事務所を設立した理由を聞いた。

「私は、M&Aやコーポレートなどに12年間携わるなかで、企業法務系の法律事務所におけるクライアントサービスの在り方について、様々な課題意識を持つようになりました。特に強く感じていたのは、タイムチャージに関する違和感。顧客にとって重要なのは、弁護士の働きによって〝どれだけの価値が得られたか〟であり、〝弁護士が費やした時間〟ではないはず。私自身、大手法律事務所に在籍していたときはタイムチャージで仕事をしていましたし、多くの企業法務系法律事務所が採用するタイムチャージは、優れた報酬モデルではありますが、他方で〝歪み〟を内在しているともいえます。『作業が非効率的に行われているのではないか』『必要以上にタイムを付けられているのではないか』『経験が浅い弁護士をむやみに関与させているのではないか』などの疑問が生じたとしても、お客さまは確かめようがありません。また、タイムチャージのもとでは、お客さまが依頼時に弁護士から受け取るのはあくまでも〝見積もり〟で、参考金額でしかありません。そのため、『総額が見えないので、予算が確保しづらい(依頼できない)』、あるいは予算が確保できたとしても、『プロジェクト中に予算を使い切ってしまい、継続依頼できない』という声も聞きます。お客さまにとって本当に必要なサービスを提供するならば、タイムチャージではなくほかの方法があるのではないか。この課題を解消したいと思い、ビジョンの中核に『Value and Value』――つまりタイムチャージを全面廃止し、報酬はすべてバリューの対価としていただくことを掲げ、事務所を設立しました」

設立の、もう一つの理由は、生成AIの進化だ。

「初めて生成AIを使った時、『弁護士のクライアントサービスの在り方に革命が起きる』と衝撃を受けました。特に企業法務では、リサーチや契約書のドラフティング・レビュー、ヒアリングといった業務に多くの時間を費やしますし、その〝時間〟が売上・収益の基礎にもなります。しかし生成AIの進化で、これらの業務の相当部分が効率化されるか、代替される可能性がある。つまり、生成AIとタイムチャージは相性が悪い。であるなら、生成AIによって業務の効率化を極限まで高めたうえで、タイムチャージではなく固定報酬にする。それがこれからの法律事務所の〝あるべき姿〟ではないかという仮説を数年前に立て、その検証と実証をしているのです」

立川弁護士は、「そもそも弁護士自身が、時間にとらわれて仕事をし過ぎているように思う」と語る。

「例えば、我々は『お客さまにとって価値がある』『我々にとってお客さまとの関係においてプラスになる』ならば、時間を気にせずやり遂げます。我々が目指すのは、お客さまと中長期で良い関係を築くこと。最低でも数年にわたってお付き合いさせていただき、一定程度の報酬がいただけて、お客さまに価値提供ができれば満足です。時間や目先の利益にとらわれずに仕事をすることが、結果的に売上や報酬にもつながっていくという、信念と実感を持っています。『〝時間で仕事をする〟のは弁護士としてつまらないことだと思いませんか?』という疑問が、事務所の根底にあります」

日々の仕事を通じてビジネススキルも磨く

同事務所の顧客層は、当初想定していた新規株式公開(IPO)準備段階の企業だけでなく、上場企業が多くを占める。タイムチャージに疑問を持つ顧客からは、「業界のゲームチェンジャーになり得る」といった評価も得ている。 

「M&A、金融規制・ファンド、労働法務、LPO、内部統制の立ち上げ、不祥事対応・不正調査、顧問契約といったサービスごとに月額報酬の金額を設定し、本契約の前にお客さまと綿密に認識のすり合わせを行ったのち、『何をどこまで依頼すべきか。してよいか』といった業務範囲を記載した提案書や契約書を提示します。ただ、いずれのお客さまにも最初に必ず、当事務所のビジョンをご説明し、これに共感と納得をいただいたうえでお付き合いを始めます。ですから、我々にとってサプライズとなる追加やイレギュラーのご相談は、まずありません。ただし、先ほども話したとおり、ビジョンに共感いただいているお客さまと中長期的な関係性を築いていくためであれば、スコープや契約書に明示していなかったご相談も、すべて受け止めます。そういった我々の姿勢、スタンスを多くのお客さまから支持していただき、仕事のリピートやさらなる新規案件の獲得につながっているようです」

固定報酬は、顧客と弁護士との信頼関係があって成立する仕組みだ。「ビジョンに共感してくれた顧客のみとの付き合いであるためストレスがない」と、立川弁護士は言う。具体的にどのような案件が増えているのか。

「法務機能の一部をリプレイスするインハウスサービス(LPOサービス)のご依頼が増えています。我々の場合、法律相談対応や契約書のレビューなど典型的なサービスは当然提供するとして、プラスアルファで、どの企業に対しても『我々が関与することにより〝法務機能の強化につながる施策〟を必ず提案しよう』という姿勢を徹底しています。法務部が機能している会社であっても、例えば事業部から受ける法律相談や契約書(レビュー)の導線・伝達方法についてヒアリングしていくと、何らかの課題が見つかるものです。その課題解消に向けて、〝法務部員のストレスにならない改善方法〟を検討し、マニュアル化を提案したり、ICTツール活用の助言を行ったりします。スタートアップ・上場企業にかかわらず、〝法務機能の強化〟を目指して提案を行う点が、我々のインハウスサービスの強みです」

ある大手商社は、同事務所のインハウスサービスを継続的に活用している。この対応は、立川弁護士を含む3名体制で臨んでいる。

「事業部ごとに法務担当がいるのが商社特有ですが、我々に『その法務担当と同様のサポートをしてほしい』というご要望でした。担当事業部からの法務相談は全て担当者が一気通貫で行うため、我々自身が〝ジェネラリスト〟であることが求められます。また、基本的にクロスボーダー対応ゆえ、英語力は必須。加えて、取引先は世界各国となり、現地法やリーガルの論点の調査、現地法律事務所との協働作業など、非定型的な対応も必要となります。様々な関係者を巻き込みながらプロジェクトを前に進めていくことは、単純なリーガルスキルだけではなく、ビジネスパーソンとしてのスキルセットが求められる、非常にチャレンジングでやりがいのある仕事です」

地に足をつけ、骨太な組織を目指す

ビジョンに共感して集った弁護士の専門分野は、実に様々だ。

「M&A・コーポレート、訴訟、労務、金融レギュレーション、IT、IPなど、取り扱い分野は多様。米国の弁護士資格を持つ者もいるので、企業法務に関するご相談は現在、ほぼ一気通貫で対応できています。創業時から、様々な得意分野を持つ弁護士が集まってくれたおかげです。今後、データ保護・プライバシー規制や不動産関連に詳しい弁護士が参画してくれると、さらに地盤が強固になると考えています」

掲げたビジョンは4つ。立川弁護士が話した「Value and Value」(タイムチャージを全面廃止し、報酬はすべてバリューの対価としていただく)と、「Speed is King」(企業・経営者の意思決定に求められるスピードに我々も伴走する)、「Ownership」(企業・経営者の意思決定までのラストワンマイルを提供する)、「Character Ethic」(人格主義)だ。「これらのビジョンに共感し、〝腹落ち〟できる人を集め、〝強く骨太な組織〟に育てていきたい」と、立川弁護士。

「我々はスタートアップ企業ではないし、リーガルマーケットを根底から覆そうという野心もない。ただ、お客さまが求めるものを突き詰めた結果が、今なのです。これからもしっかりと地に足をつけて、事務所の仲間もお客さまも、ビジョンに共感してくれる方とつながり、堅実な事務所運営を継続していきたいと思います」

Editor's Focus!

事業会社と兼務している弁護士も複数名いるため、「案件協働の際には、リモートで進めることが多い」と立川弁護士。「リモート・対面、進め方は何であれ、“仕事を通じてお互いを理解し合うこと”が一番大切だと思っています。とはいえ、年に数回は食事会や家族を交えた懇親会を開き、全員が顔を合わせるようにしています」