NYUでは2年でMBAを取得し、10年に帰国。すぐに本畑弘人とともに、当社の共同最高責任者としての活動を始めました。同時に、法律事務所も併設し、今は私を含め3人の陣容で運営しています。本畑とは法律事務所勤務時代に顧客を介して知り合い、「留学から帰ったら一緒に事業をやりましょう」という約束を交わしていました。
当社の事業には、「投資ファンド」と経営コンサルタント的な「ファミリーオフィス」の2つの柱があります。後者は、経営者個人の資産運用をしつつ、長期的な視点で事業価値の成長を見据え、例えばM&A、人材確保など経営面でのアドバイス、サービスをワンストップで提供するものです。
ファンドのほうは、日本にはほかにないコンセプトだと自負しています。預金のように顧客がお金を引き出したい時にいつでも応えられること、リスクを最少に抑さえながら着実な利益を提供できること。うちの特徴をごく簡単に言えば、以上の2つになるでしょう。
富裕層の多くは「20%、30%の利益を出せ」ではなく、資産を保全したうえで確実に勝っていくことを望んでいるんですね。その場合、従来はいろんなファンドに分散投資したり、国債を多く買ったりすることでリスクを抑制しようという発想がほとんどでした。しかし、複雑なデリバティブの技術を駆使することで、一つのファンドでも投資家のニーズに合ったリターンをつくり出すことは可能なはずなのです。
論より証拠、例えば12年のリターンは8・35%と、厳しい市場環境の中、高い実績を上げることができました。リスクに対してどれだけの収益を上げているのかを計るのに、シャープレシオという指標があります。〝1〞を超えて数字の大きいほうが〝成功〞したファンド。こちらはおよそ1・3という結果でした。この〝1〞を超えているファンドって、世界中に1割程度しかないんですよ。
〝日本発〞であることがわかるように、ファンドには「fujiyama(フジヤマ)」と命名しました。その名に恥じない実績を上げて、世界で通用するファンドマネジャーになるのが、今の目標ですね。投資がみんなの役に立ち、社会の活性化にもつながる。そのことが示せたら、「投資家」の胡散臭いイメージも、少しは払拭できるんじゃないかな(笑)。
気がつけば、おそらく世界で唯一の、弁護士出身の独立系ヘッジファンドマネジャーになっていました。金融商品取引法だけでなく金融商品そのものを理解しているから、今の弁護士事務所でも、その手の裁判では敵なしですよ(笑)。
不合理なものも含めて、マーケットは参加者の行動ですべてが決まる〝超民主主義的〞な世界。そして、様々な専門知識、ノウハウを要する〝総合格闘技〞のようなもの。自己責任の厳しさはもちろんありますけど、その何倍ものやりがいを感じています。
私の場合は弁護士×金融工学でしたけど、イノベーションの芽を秘めた「異分野」って、無数にある。弁護士としての実績を積んだら、別の〝何か〞に挑戦してみるのもいいんじゃないかな。〝オンリーワン〞になる道は、誰にでも用意されている。私はそう思います。