半年間のインターンを終えた後、日本に戻って再びミネルバ法律事務所で弁護士として働きました。英語を使った仕事も増えましたが、せっかく国際人権法を学んできたのだから、もう少しグローバルに男女の雇用平等の課題などに取り組みたいと考え、様々な方法で国連への採用募集にトライしましたが、なかなか門戸が開かず。そこで外務省に相談したところ、JPO(ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー)に応募することを勧められました。結果、幸運にもJPOとして採用され、10年9月からILOの国際労働基準局の職員として、ジュネーブで働くことになったのです。
ILOでは雇用平等に関する条約を担当していました。加盟185カ国の政労使の代表が集う国際労働総会では、189の条約が採択されていますが、条約を批准した国の政府は、条文を遵守しているという報告書を定期的にILOに提出しなければなりません。それを審査するのが私たちの仕事でした。英語で書かれた報告書を精読、チェックし、また英語で毎日ドラフトし続けることによって、国際労働基準の知識や英語で仕事をする力が急速に高まっていったと思っています。
また、ILOのような国際機関では様々な国の職員が働いているのですが、言葉も文化も常識も全く違う人たちと一緒に物事を進めようとしても自分の思うようには全然動かないんです。赴任当初は大きな戸惑いとストレスを感じていたのですが、違うのは当たり前なのだからお互いの文化を尊重し合い、いろいろな違いを個性として許し合いながら一緒に働いていかなければならないと徐々に思えるようになりました。これも大きな収穫でしたね。
勤務期間は当初の予定では2年間でしたが、1年延長して3年間働いた後、帰国。アテナ法律事務所に所属すると同時に日弁連からオファーを受けて国際室でも勤務を始めています。今は、この国際室での仕事の比重が大きいです。
国際室とは、海外の弁護士会、国際法曹団体や国連など世界中の様々な機関から、日々多くの情報を収集したり、逆に日本の人権状況や法制度、日弁連などに関する情報を海外に発信している部署です。また、国際業務に従事したい日本の弁護士と仕事を、人材育成などを通じて結びつける橋渡し的な役目も担っています。
今年の1月からは室長を務めており、弁護士、研究員含めて9名のメンバーのマネジメントをしています。初めての経験ですが一人ではとてもできない大きな仕事に取り組めるのが楽しいし、意思決定できる立場にあって、大きなやりがいがあります。
室長としては仕事を円滑に進めるため、メンバー一人ひとりの個性を把握し、メンバー同士のスキルの組み合わせを考えたうえで仕事を割り振ったりする必要がありますが、このような時にILOで学んだ組織の意思決定のあり方や組織マネジメントの手法がとても役立っています。