現在、同事務所のクライアントは、上場・非上場、IPOを目指すベンチャーなど、様々な企業だ。
「例えば、プロキシーファイトやM&A案件で利害対立が生じた場合、全体を俯瞰しつつ特定部分にも目を配り、依頼者にとって最適な落としどころを考えるというケースはよくあります。フットワークよく動き、出された質問・疑問はその場で即答、解決するのがモットーです」
大手事務所のプラクティスを熟知し、細かな〝部分〞で動ける弁護士が求められる案件が、実は多いという。しかし、松本弁護士の現在関与する案件は、それだけでは完結しないことがほとんどだ。
「小規模なM&A、経営紛争などにも多く関与しますが、特にそうした事案では当事者が慣れていないこともあり、予期せぬトラブルが起こりがち。全体を誰かが統括しないと事態が収拾しないことも多いのです。私は、全体を調整しながら、そうした事態を仕切っていくことに面白みを感じています。私がかかわることで、バラバラのピースがぴたっと収まるところに収まり、かかわる全員をハッピーにする、それが一番のやりがいです」
松本弁護士は「〝カウンター5席程度の、知る人ぞ知る鮨店〞のような事務所でありたい」と言う。少人数を、手厚いサービスでもてなし、その評判が評判を呼び、客が増えていくような事務所だ。そんな〝隠れ家的名店〞を目指す松本弁護士に、若手へのメッセージをいただいた。
「鮨店にたとえれば、技術を磨いて〝うまい鮨〞を出す店は山ほどある。その中でお客さまに選ばれるには、お客さまのことをよく観察して、何をどのような順番で食べたいか想像する力、感じ取る力がなくてはいけません。弁護士もサービス業ですから、クライアントが求めるソリューションを提供できる人だけが残っていく。それがまた次の仕事を呼び、自分自身も成長していける。『このドキュメントだけ作成していればいい』『この手続きだけ調べていればいい』というスタイルの仕事は、いずれ人工知能(AI)に代替されてしまうでしょう。ですから、安易に最適解を探そうとせずに、回り道をすることになっても、自分が提供できる最高の顧客サービスのかたちを探してほしいと思います」