米国での留学や研修の経験を生かすため、2010年には外資系法律事務所に移籍し、さらに国内企業と海外企業とのライセンスや、ヘルスケアベンチャーへの出資といった取引に携わる機会が増加しました。私個人に声をかけてくださるクライアントが増えてきたのもその頃からです。そのうちの一社が、再生医療を扱う企業でした。
当時、医療・医薬品・医療機器のいずれにも明確に分類されない再生医療は、法律上の位置付けが明確ではなく、どのような規制が適用されるかも明らかではありませんでした。また、ヘルスケア分野に詳しい弁護士がほとんどいなかったこともあって、「これは自分で調べて考えるしかない」と覚悟を決め、業界の法規制や商慣習について本格的な勉強を開始しました。留学を終えて帰国した頃から、自分の専門性や将来のキャリアについて考えていたので、この再生医療を扱う企業との出合いや、未知なる分野への知的好奇心が、弁護士としての“次のステージ”へ進むための貴重な足がかりとなったのです。
現在、私はM&Aやヘルスケア・ライフサイエンス分野の取引を多く取り扱っています。特にヘルスケア・ライフサイエンス分野は変化の激しい領域ですので、「自分で調べて自分で考える」ことが好きな私にとって恰好の領域です。たまたま導かれたかたちではありましたが、結果として私の弁護士としての専門性を構成する重要な要素となっていますから、人生は面白いものだと思います。
ヘルスケア・ライフサイエンス分野は、医学、薬学、法学に加えて、最新のテクノロジーや倫理が交錯する分野。“一つの分野の専門家”では完結できません。また、COVID-19によって、国や人種や年代に関係なく、誰にとっても身近かつ重要な普遍的価値をもたらす分野であることが再認識されました。自分も法律家としてその問題解決や価値創造の一端を担えること、クライアントやその先にいる人々が喜んでくれるであろうことが、大きなやりがいとなっています。