私が得意とする仕事は大きく2つ。一つは、海外法務全般。取扱案件の7割が国際案件で、そのうちの7割が日本企業からの依頼です。また、その7割がアジア太平洋地域への進出案件です。これまでに培ってきた世界の法曹人脈をフル活用し、スピーディに「この案件で、この予算で、この国なら、この弁護士と組む」などの総合戦略を固めます。そして、クライアントのオーダーに応じて細かくカスタマイズしながら、ワンストップで安価なサービスを提供できる体制が強みです。
もう一つは、インテグリティのエバンジェリスト(伝道師)としての活動です。インテグリティとは、難しいコンプライアンスを、「アンラーン」(Unlearn、学び直して解きほぐす)して明るく発展させたもので、「8割のコンプライアンスに2割のリーダーシップを加えた」イメージです。なお、日本企業の時価総額ランキング20位中、6割の12社がホームページでインテグリティを語っています。
なぜ私が、インテグリティに着目するのか? 理由は次の通りです。シンガポールから帰国した2011年以降、海外労務、海外贈賄防止、海外競争法などのセミナーを数多く行ってきました。そこで受講企業の方々から、「いかにしてコンプライアンスを“自分ごと”として現場に捉えてもらうかに苦労している」という悩みを多く聞き、日本企業のコンプライアンスの限界を感じてきました。また、企業の方々と会食をすると、50代の役員や部長が85%話し、40代の課長が10%話し、30代の主任はお酒を注ぐばかりで5%も話さない(話せない)……という場面をたくさん見てきました。そこに「日本企業の閉塞感」を強く感じました。この閉塞感に風穴を開けるのがインテグリティです。
そもそも、コンプライアンスとインテグリティの違いは何でしょうか? コンプライアンスは「消極的なマネジメント」です。不正防止のみを目的とし、西洋医学(外科手術)的に、厳しく「北風」のようにMustを押し付けるのがコンプライアンスです。「ある行為が法律や規程(ハードロー)に反するか」を監視し、違反という結果を出さない=Do things right(ちゃんとやる)に重点を置きます。
一方、インテグリティは「積極的なリーダーシップ」です。コンプライアンスのみならず、広く会社理念の実現という企業目標に立ち返り、東洋医学(漢方薬)的に、暖かく「太陽」のようにBetterを考えるのがインテグリティです。「会社理念を実現するためにあるべき姿(ソフトロー)は何か」を考え、将来の理想へ歩む過程=Do the right thing(正しいことを行う)に重点を置きます。