染谷弁護士は「池田は学者肌で、私が景品表示法の相談をすると『理屈的にはこうなるはず』と、嬉しそうにアドバイスをしてくれます」と笑う。池田弁護士も「困難な時も前向きに物事を進め、行動力・実行力が高い」と、染谷弁護士を評する。そんな両弁護士に加えて、検事、消費者庁、FinTech企業法務部経験者など、多様な経歴、個性の弁護士が3名所属している。〝事務所の看板を共有するのみで、それぞれの弁護士は独立独歩〞という共同事務所も多い中、同事務所ではチームの一体性を重視し、互いに妬まず、チームの成功を喜べるようにと、報酬配分を含めて事務所の仕組みを急ピッチで整備しているところだ。
「独禁法と消費者法に特化した弁護士5名が全員、多種多様なクライアント、様々なパターンの案件に関与してきたエキスパートです。専門性を求める中堅規模や小規模の他事務所から案件をご紹介いただき、協働する機会も増えています」と、池田弁護士。
今後、弁護士10名体制にするのが一つの目標だ。「やみくもに規模を大きくするつもりはありません。私たちが面白いと思う経歴、経験を持つ弁護士に出会いたいですね」と染谷弁護士。
そのうえで、同事務所は独禁法と消費者法の分野でナンバーワン・オンリーワンの事務所になることを目指しているという。この分野への特化はいわばブルーオーシャンを創造する試みだ。染谷弁護士は言う。
「消費者法を例にとると、消費者契約法、特定商取引法、景品表示法など消費者庁所管の法律のみを思い浮かべるかもしれません。しかし消費者法は『消費者が絡むものはおよそ消費者法である』というのが私の考えです。例えば特定商取引法は経済産業省との共管、割賦販売法は経済産業省所管、資金決済法は金融庁所管、住宅宿泊事業法(民泊新法)は国土交通省・厚生労働省・観光庁が所管しています。消費者庁所管法令という視点ではなく、BtoCビジネスの視点で法制度を見ると、消費者関連法の対象はとても広いものであることに気づきます。そこに思い至るかどうか、気づけるかどうかが、市場でブルーオーシャンを創造できるかどうかの分水嶺でしょう」
そして、どうしたら〝のめり込める分野〞と出会い、エキスパートになっていけるのか、池田弁護士にうかがった。
「私は自分自身の〝弁護士としての厚み〞を出したくて、公取委で任期付き公務員になりました。そこで主として扱ったのが独禁法です。独禁法は『競争し合い、切磋琢磨して、技術力を上げ、新しいものを生み出し、日本の競争力を高めていこう』という、この国にとって非常に大事な法律。そこにかかわっていると、最先端の技術を有する企業で最先端のリーガルイシューに携われる。私はいわば、独禁法マニア(笑)。ただ、『やっていて楽しいと思うことを突き詰めてきた』からこそ、今があると思っています」