石原弁護士は、ヤフー株式会社の法務部出身だ。エンジニアなど多くの同僚が独立・起業を果たすなか、自身も“いつかは独立・起業”という思いを持っていた。
「しかし、プロダクトそのものをつくるエンジニアではない自分は、どんなバリューの発揮の仕方があるのだろうと考えました。それで、やはり外部の法律事務所の視点も経験しておきたいと思い立ち、転職したのです。入所した外資系法律事務所は、ちょうどグローバルのローファームからマネジメントバイアウトのようなかたちで独立するタイミングでした。入所してすぐに事務所を一からつくるという経験をさせていただけたのは、非常にありがたかったです」
今後、どのように事務所を発展させていこうと考えているのか、石原弁護士に伺った。
「直截に言えば、クライアントのニーズに常に応え続けていきたいということです。そのニーズは時代と共に緩やかに変化していきながら、何年かおきに大きなトレンドが起きていると考えます。ゆえに、『次はこのトレンドがくるだろうから、こんなサービスをつくっておこう』『事務所の体制はこのように整えておこう』など、常に数歩先を見ながら、手を打っていきたい。やみくもに規模の拡大を追求するのではなく、事務所の理念などに共感してくれる仲間と一緒に、成長していける場にしたいという思いを強く持っています」
右ページのメンバー写真のとおり、仕事中の服装は自由、「百点でなくてもすぐに答えを出す」など、仕事の仕方もほかの法律事務所とは趣を異にする同事務所。事務所理念への共感は当然としても、どのようなタイプの弁護士であれば、この事務所にフィットするのか。石原弁護士は言う。
「私たちのクライアントが属する世界、ITを基軸とする事業環境は常に進化しています。ですから、そこに関与する弁護士は、知的好奇心旺盛なことが大前提。加えて、自分は5年後、10年後どうなっていたいかを言語化できる人が望ましい。あるいは、『どうなりたいか』と聞かれて、その瞬間は答えられなくても、感化されて、自問自答できる人ならOKです」
最後に、両弁護士に若手弁護士、弁護士を目指す人々へのメッセージをいただいた。
「弁護士というのは免許・資格の一種に過ぎず、なったからといって“偉くなった”わけではありません。ただし、その資格のおかげで、たとえ社会人経験がゼロでも、経営者はじめ、周りの方々に話を聞いてもらえる。例えば、ある会社の新入社員が顧客候補の経営者と商談をするために、多大な努力と多くの時間をかけたとしても、会えないことのほうが多い。つまり弁護士は、世の中から“ゲタを履かせてもらっている”わけです。それがいかにありがたいことかを噛みしめながら、いい意味で資格を有効活用し、自分の可能性を広げていく。そんな考えをもって活躍する弁護士が増えていくことを願っています」(岡本弁護士)
「“弁護士”という枠を超えて、どんな“自分”になりたいかというイメージを明確に持ち、かつ夢や目標の未来図が大きければ大きいほどいいと思っています。今の私の目標は、『スタートアップに特化した法律事務所でも、これだけ稼げる。これだけ面白い仕事ができる』という事実をしっかりと証明すること。そして、このマーケットが持続・拡大していくための環境整備に貢献し、多くの後輩弁護士の皆さんが憧れる分野として育てていきたい。これが今の夢です。私の夢に共感してくれ、熱く語り合える仲間が増えていけば、弁護士の仕事はもっともっと楽しくなるはずだと考えています」(石原弁護士)
※取材に際しては撮影時のみマスクを外していただきました。