同事務所での仕事の進め方や働く環境について、宮﨑はるか弁護士と横山和之弁護士に聞いた。
「アソシエイトは、基本的に複数のパートナーと仕事をします。当事務所ではマイクロソフト社の予定表共有機能を用いており、アソシエイトが記入した作業予定をパートナーが確認し、仕事を依頼します。具体的な案件処理法としては、ファーストドラフトをアソシエイトが作成し、パートナーがチェックして外に出すかたちです」
なお宮﨑弁護士は子育て中でもあり、現在は在宅勤務を行うこともある。
「“週何時間まで勤務”という契約です。パートナーの皆さんは約束の時間を超過しないようにと配慮してくださっています。時間帯に縛られず、自分のペースで仕事ができる環境は、とてもありがたいです」(宮﨑弁護士)
「当事務所では、パートナーに“アソシエイトと仕事をする/しない”、いずれか選べるという契約のパターンを設けています。自分の仕事の仕方や売り上げ状況に応じて選択できるわけです。“仕事をする”という契約をしているパートナーは、1人のアソシエイトに集中しないよう、予定表を見ながら依頼する。アソシエイトからすると多くのパートナーから学ぶことができますし、経営側としては繁閑管理がしやすいという利点がありますね」(牧野弁護士)
キャリアの積み方にも独自の工夫があると、牧野弁護士は言う。
「以前はパートナーになる要件を、個人の能力×勤続年数で考えていました。しかしパートナーの定義自体をもっと柔軟に捉えてもいいのではないかと考え、“パートナーになるには”にも、選択肢をつくろうと決めました。売り上げの何割かを納めて自由に仕事をする従来どおりの“独立型パートナー”のほか、アソシエイトの教育や法人の案件も手伝いながら事務所経営に参加する“社員型パートナー”といった形態です。後者はアソシエイトからいきなり“個人事業主”的なパートナーになるのではなく、法人の案件を担当してベーシックサラリーを得ながら、管理職としての責務を担ってもらい、個人事件なども積極的にやる。そうしたパートナーに、私自身の顧問先を“のれん分け”的に任せていくことも考えています。各自が自分の志向や環境に応じて、働き方やキャリアの積み方を選択できるようにしていきたいと思うのです」
ユニークな取り組みを次々試みる牧野弁護士。最後に、事務所の展望について聞いた。
「一緒に働く弁護士と事務局が、仕事や働き方に満足してくれ、辞めないでいてくれることが一番大切。私にとっては仲間が減ることのほうが、依頼が減る以上にショックが大きい(笑)。ですから、継続性が重要なキーワード。上層部が利益を搾取するのではなく、各弁護士、事務局がもれなく幸せになれるシステムやキャリアプランをこれからも模索していきたい。また業務については、多様性と新規性を維持しながら、そのなかで経済的に収益性が高いと思われる案件についてはしかるべき投資(経済および人的投資)を積極的に行っていく。例えば、東京事務所の開設もその一つ。また、私たちの仕事は基本オーダーメードですが、一方で『子どものみかた』という養育費不払い請求代行サービスも始めています。そのようにある程度“ひな型化(専門特化)”できるサービスも検討して、増やしていきたい。各弁護士には、そうして広がっていくフィールドのなかから自分が得意とする分野を見いだし、弁護士としての力を伸ばしていってほしいと思います」
※取材に際しては撮影時のみマスクを外していただきました。