「今後も高いクオリティと信頼を維持していく」と、後藤弁護士。「私たちがサポートするベンチャー企業のほとんどは、IPOやM&Aを検討します。当然、IPOなら証券会社や証券取引所が審査で各書類をチェックします。契約書もビジネスモデルも審査でNOと言われないよう、私たちが十分に把握しておくことが大切です。幸い、証券会社にも証券取引所にも『AZXが大丈夫ならOKだろう』と言ってもらえています。今後も高めた品質と信頼を維持していくのが責務です」
そのため、教育方法は徹底的だ。
「例えば『アソシエイトカルテ』というものを運用しています。アソシエイトに、これまでの業務経験、これから何をしていきたいか、などを書いてもらい、月1回ずつ更新し、パートナーが会議で共有。アソシエイトの希望に沿うよう案件を差配する目的と、3年目くらいまでに幅広い分野を経験させ、最低限のスキルを身につけてもらうという教育目的があります。ベンチャービジネス・サポートは“一点突破”ではなく、ジェネラルな企業法務の経験も必須。裁判になったら? 差し押さえがきたら?と、クライアントから多様な質問がくるわけです。それに答えるだけの力量を養ってもらうべく、このカルテを活用してパートナーが目配りをします」(菅原弁護士)
ほか、月1回、知識共有のための「リーガルテスト」を全員が受ける。各弁護士が日々の業務で気づいたこと、知らせておきたいことをパートナー弁護士がテスト形式にまとめたものだ。これまでの総問数は200ほどだそう。菅原弁護士は、「みんなが引っ掛かりそうな細かい点を設問にします。『これはテストに出た事案だね。ちゃんと調べた?』というように、所内コミュニケーションとしても使います。でも、短答式の勉強が永遠に続いているような気持ちですね」と、笑う。
「ベンチャービジネス・サポートは、ある意味“主治医”のような仕事です。全般の経験を積めば、『これは脳外科。これは特殊だからあの病院に』と、最適な解決策の在り処に自ずと気づけるようになる。そうなるのに5年くらい。そうして5~10年でパートナー弁護士を目指し、得意分野や専門性を打ち出しながらセルフブランディングを行い、自分が獲得したクライアントを正しく導ける力を身につけてほしいのです。また今後は、各業界・業種に詳しいパートナー弁護士を増やし、法律以外の業界の流れやビジネスモデルの変化などを先回りしてキャッチし、仲間に共有しながらクライアントをサポートできる、“業界専門チーム”をつくりたいと思います」(後藤弁護士)
後藤弁護士が思うベンチャービジネス・サポートの醍醐味とは?
「ベンチャービジネスを興す起業家は、人生をかけて、夢と情熱を持って、世の中をよくしていきたいと願う人々です。彼らと一緒に仕事をしていくこと、一緒に成長していけることが大きなやりがい。最先端の分野に誰よりも先にかかわり、社会の新たな潮流に触れ、そこで生まれたベンチャー・スタートアップをサポートする――私自身と同じようにこのフィールドを楽しんでくれる弁護士と、その醍醐味を味わい続けたいです」
※取材に際しては撮影時のみマスクを外していただきました。