主な取り扱い分野は、コーポレート・M&Aと、広い意味での紛争解決。なかでも、国際的な要素が含まれる案件に強みがある。
「クロスボーダーのM&Aについては、特に日本企業をクライアントとする海外企業の買収案件(アウトバウンド)を中心に多数の取り扱いがあります。これは10~20年前から外国人弁護士の採用、語学教育、留学・海外研修・出向の推進、海外の法律事務所とのネットワーク構築などを積極的に推進してきた結果。近時、増加傾向なのはクロスボーダーや上場企業のM&Aのほか、不正調査・コンプライアンス分野、競争法分野、個人情報・データ保護分野などです」
クライアントは上場企業、未上場の中堅中小企業、成長ステージでは老舗企業からベンチャー企業までと幅広い。東京事務所の弁護士に、それぞれの得意分野をうかがった。まずは、酒井大輔弁護士。
「私はクロスボーダーのM&Aです。これまで、日本企業の海外進出案件や買収案件などを多数手がけてきました。対象国は、インド、フランス、イスラエル、インドネシア、米国など多岐にわたります」
本誌14~15ページで先述したとおり、北浜法律事務所には若手弁護士の意欲・要望を応援する風土がある。「インドで学びたい」と手を上げ、アソシエイト時代にデリーの監査法人で研修を経験した所内初の人物が、酒井弁護士だ。
「インドに注目する弁護士がほぼいなかった当時、ほかの弁護士と違う能力を身につけたい、何かチャンスをつかみとりたいと思い、学生時代に旅行したインドに目をつけて研修先を探しました。当事務所の“本人の意思を尊重する”という気風のおかげで実現した海外研修です。帰国後はインドの案件を相当数依頼いただいており、所内でインドと周辺国のプラクティス・チームも立ち上げました」
また、江鳩孝二弁護士も同様にM&Aが得意分野である。
「なかでも上場企業のM&Aや非上場化の手続き(MBO)に強みがあります。19年に経済産業省が公表したいわゆる“新M&A指針”では、MBOに加えて新たに上場子会社を完全子会社化するような従属会社の買収案件(親子上場解消案件)を行う際にも同指針に基づく対応を求めています。その際に、どのような経営課題を抱え、それを解消するためになぜ非上場化が必要かということを突っ込んで聞きます。ビジネスの実態に照らして、どのように手続きを進めていくか、いかにして実効的なアドバイスをクライアントに行うかなどは、弁護士としての腕の見せ所。“紙の上で勉強してきたこと”が、リアルな世界に深くリンクしていくことの面白さを体感できる、やりがいのある分野です」