現在、同事務所の代表を務めるのは、3代目の西村学弁護士だ。
「創業者の谷弁護士がつくった“広めの運動場”に何を建てるか、どう使うかを、2代目平岡弁護士が引き継ぎ、私にバトンが手渡されました。交通事故事件の解決という強みを持ちつつも、サクセストラップにはまらないよう、新規分野への挑戦や支店のさらなる増強など、この世代で何を成すかについて試行錯誤しています。この“事務所をどう発展させていくか”については、月1回の会議で、全所属弁護士の意見を聞き、議論しながら方向性を探っています」
「サリュは30~40代の弁護士が主役になれる事務所。私は、社会で活躍する中心世代は30~40代であるべきで、50代以降は、その知見・経験を生かし、後見役として若い世代を盛り立てていくというのが、社会の正しいありようだと思っています。だから『君たちにすべて渡す。その代わり本気でやってほしい』と伝え、49歳で事務所の代表を下り、運営を彼らに任せています」(谷弁護士)
そんな事務所ゆえに、若手弁護士の成長も早い。
「当事務所は交通事故事件以外の家事事件、企業法務などを得意とする先輩弁護士も多数所属しています。新人は特定の弁護士につかないので、多様な案件で経験が積めます。また、リーガルスタッフも日常的に実務のいろはを教えてくれます。初めこそ先輩弁護士がサポートしますが、早ければ入所3カ月目くらいから主任として事件に関与します。ですから当事務所では、短期間で一人立ちできるうえ、パートナーへの昇格も早いのです」(西村弁護士)
現在、同事務所の陣容は総勢80名ほどだ。「家族構成もふくめて、その一人ひとりの顔と名前がわかることが、当事務所の強みです」と、西村弁護士。
「そのよさを生かしつつ、事務所を成長させていくことを第一に考えています。なおかつ“人生という旅をともに楽しめる面白い仲間を集めて、その仲間と一緒に何をしていくか考えていく”ことが理想。面白い仲間が入所してくれたら、その人が『やってみたい』と思うことを、できるだけ叶えてあげたい――そんなふうに考えています。当事務所の採用コンセプトは『所長を採用しよう!』。人とのかかわりを大切にしながら、一国一城の主として多様なかたちの挑戦を果敢にできる弁護士と働いていきたいですね」
谷弁護士に、若手弁護士へのメッセージをいただいた。
「事務所名はカタカナですが、私自身は極めて“昔ながらの弁護士”。机に張り付いて仕事するより、現場に出向いて人と会うことが好きですし、正しいと思ったことがなされていないと腹も立てる(笑)。そうして腹が立ったことを一つひとつ解決するために、この事務所があると思っています。最先端のビジネスにかかわりたい、たくさんのお金を手にしたいという弁護士もいるでしょう。しかし、弁護士になるなら『法律を使って人を助ける』という、子供が持つような素朴な職業観・志が一番大切ではないかと思います。弁護士は本来どうあるべきかという、弁護士の原点を忘れず、日々の仕事に打ち込んでほしいと思います」
※取材に際しては撮影時のみマスクを外していただきました。