Vol.83
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前列左から、宮本武明弁護士(69期)、道下剣志郎弁護士(70期)、佐々木龍太弁護士(49期)。後列左から、沼田真志氏(76期・司法修習中)、砂川祐基弁護士(73期)、鈴木孝弘弁護士(70期)、2人おいて、林 祐介弁護士(71期)、船戸久史弁護士(73期)と、事務スタッフの皆さん

前列左から、宮本武明弁護士(69期)、道下剣志郎弁護士(70期)、佐々木龍太弁護士(49期)。後列左から、沼田真志氏(76期・司法修習中)、砂川祐基弁護士(73期)、鈴木孝弘弁護士(70期)、2人おいて、林 祐介弁護士(71期)、船戸久史弁護士(73期)と、事務スタッフの皆さん

STYLE OF WORK

#169

SAKURA法律事務所

法律実務発展のリーダーとなる人材を輩出できるプラットフォームを目指す

職域拡大につなげる新プラクティス開拓

道下剣志郎弁護士と宮本武明弁護士の二人が、2020年1月に設立したSAKURA法律事務所。両弁護士はそれぞれ、四大法律事務所出身者だ。事務所設立の背景を、道下弁護士にうかがった。

「私は、出身事務所である西村あさひ法律事務所が大好きで、この国内最大手の法律事務所で一つずつステップを登っていくキャリア形成も非常に魅力的でしたが、日々の業務で多くのお客さまと接するうち、自分自身のお客さまを持ち、自ら案件や仕事を創出していきたいという思いが膨らんでいきました。同じ志を持っていたのが宮本弁護士(アンダーソン・毛利・友常法律事務所出身)。彼となら、一緒に挑戦していけると考え、不退転の覚悟で独立しました」

事務所設立時のクライアントは、ほぼゼロ。士業のつながりや友人の紹介などから、少しずつクライアントを増やしていった。

「私も宮本も出身法律事務所で厳しく鍛えていただいたおかげで、企業法務については、コーポレート、ファイナンス、M&A、争訟、危機管理、最先端法務など幅広い分野に関して、上場企業、ベンチャー・スタートアップ企業と規模を問わず、対応可能です。また、即戦力として入所してくれた信頼する弁護士のおかげで、さらに多様なナレッジが蓄積できたことも当事務所の強みとなっています。順調に拡大を続け、今年の前半には、少なくとも弁護士10名、ほか士業2名の体制となるので、企業法務のほとんどの分野・案件でメンバーアサインが可能になります」

そして同事務所は、“新たなプラクティスをつくる”ことに、真剣に取り組んでいる。その一例が、道下弁護士が注力するメタバース、Web3、NFT、DAOといった新法務分野である。道下弁護士は、KDDI、東急、みずほリサーチ&テクノロジーズ、渋谷未来デザインが組成する「バーチャルコンソーシアム」に参画し、経済産業省と連携を取りながら、「バーチャルシティガイドライン」を策定。メタバース関連の法整備を前進させるための一翼を担っている。

「メタバース関連法整備の土台、立法の礎になればという思いで取り組みました。私たちは設立当初から“新しいプラクティスをつくる”ことを使命として、まい進してきましたが、それは単に弁護士としての自分の興味からではなく弁護士の職域拡大と弁護士のための市場創出につなげたいという思いがあるからです。今はAIやブロックチェーンなどの技術革新、グローバル化の進展、高齢社会の到来など、時代の転換期です。私たち弁護士がしっかりとしたルールをつくり、うまく舵取りしていくことが大切だと思っています」

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    2023年中に、弁護士20名規模となる見込みだ。そのため、23年春にはオフィスの移転・大幅な拡大を行う。なお、始業時間はフレックスを導入し、リモートワークも推奨。“自分の時間”を大切にすることを勧めている
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伝統と創造のバランスを取る

道下弁護士は、「当事務所では、新しい挑戦を阻まず、積極的に勧める」と続ける。

「例えば、砂川祐基弁護士は、eスポーツを趣味としています。それを聞いた時、『ただのゲーマーで終わらずに、eスポーツを得意分野とする弁護士になれ』と。すぐ、記事執筆や講演会の開催を出版社などにかけ合いました。砂川弁護士にとってゲームはライフワークであり趣味の領域だったので、『本当に事務所の仕事にしていいんですか!』と驚いていましたね。講演会などはまだまだプロボノの一環ですが、それも『どんどんやってください』というスタンスです」

商社などの企業法務部で約20年勤務した後、環境法科目1位で司法試験に合格した船戸久史弁護士も、同事務所に入所した一人だ。

「船戸弁護士には、所内で環境法に関する勉強会をやってほしいと伝えました。私の最先端法務、砂川弁護士のeスポーツ法務、脱炭素や排ガス規制問題など船戸弁護士の環境法関連、少なくともこの3分野については、常に最新かつ一歩先を行く知見を所内勉強会で共有できています。意見交換も活発で、新たに入所した弁護士も各自、“新たなプラクティス”に自発的に取り組み始めています。好奇心旺盛な弁護士が集っているのだと思います」

本人がやりたいと思ったことは、リスクを取って挑戦させる。「頭のなかで終わらせるな」が、道下弁護士のポリシーだ。

「とはいえ、先人が築いてきた弁護士業界の伝統を疎かにするつもりはまったくありません。先人の偉大な先生方に尊敬の念を持って、伝統を重んじながら新しいことに挑戦する。そんな伝統と創造のバランス感を、当事務所では大切にし、仕事に臨んでいます」

グレーゾーンもある新分野への挑戦が多いなか、道下弁護士が心がけていることをうかがった。

「従来のルール(適用される法律)の“外縁”をしっかり捉えつつ、クライアントのビジネス成功のために『ここまでならやっていいです』と、背中を押してあげられる弁護士でありたいですね。『ルールが見えない(わからない)からやめておいたほうがいい』ではなく、従来の法律に鑑み、野球に例えれば“ど真ん中でなく、ストライクが取れる外縁”を示し、クライアントがその範囲内に安心して球を投げ込めるようサポートする――常に挑戦を心がけていますし、挑戦こそが新分野での仕事の醍醐味だと思うのです」

SAKURA法律事務所
Web3など最先端法務やeスポーツ法務、企業法務、税務関係、訴訟対応、クロスボーダー案件、事業再生・倒産処理などのほか離婚・相続など個人事件、刑事事件にも関与する

優れた人材の輩出を目指す

同事務所では今のところ、道下弁護士が、全クライアントの案件に目を通し、全弁護士の契約書などをレビューするという。

「入所した弁護士が必ず言うのは、『こんなに丁寧に指導してもらえるとは思わなかった』という、嬉しい一言です。兄姉弁をつけたうえで、どんなに忙しくとも最後は私が必ずレビューを行います。私自身、西村あさひ法律事務所で同じような指導を受けたこともあって、優れた点は当事務所でもすべて踏襲しています。契約書や社内規定といったリーガルチェック以前に、クライアントに送るメールの文章の書き方なども徹底して指導します。例えば、公用語辞典を1人1冊支給して、ケアレスミスや誤った言葉の使い方がないよう見直しさせるなど。3期目に入所した弁護士がしっかり育ち、当事務所の核となってきたので、教育指導も今後は彼らに任せていこうと思っています。クオリティの高い仕事の進め方を基礎から学べ、身につけられる事務所でありたいですね」

さらに、道下弁護士は言う。

「そのように“SAKURAイズム”“SAKURAブランド”を身につけた弁護士が当事務所を卒業した時、『SAKURAで学んだ弁護士はさすがだ』と評価され、活躍してくれるなら本望です。私たちは『法律実務発展のリーダーとなる人材を社会に供給するプラットフォームとしての役割を果たすこと』を使命の一つに掲げています。当事務所からそうした優れた人材を輩出し続けられれば、結果的に法曹面から社会的インフラを支えることに寄与できるでしょう。また、そのように人を育てることが、私自身の前事務所への恩返しにもなると考えています」

最後に、道下弁護士にどのような弁護士と働きたいかうかがった。

「まずは好奇心旺盛であること。世の中の様々な事象にアンテナを張り、自らの仕事に役立てられる人と働きたい。そういう方は、弁護士として信頼できるうえに、きっと人間としてもユニークな視点を持った存在であるはず。そんな仲間とともに、伝統的な分野にも、新しい分野にも、真摯かつ果敢に挑戦し続けたいと思います」

※取材に際しては撮影時のみマスクを外していただきました。

Editor's Focus!

ロゴに舞う桜の花びらは「希望と挑戦、透明性への責任を具現化したもの」だという。また、このロゴには「伝統と創造のバランスを取り、堅苦しいロジカルローヤーでもなく、攻撃的なアグレッシブローヤーでもなく、ジェントルなローヤーでありたい」といった思いも込められている

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